資料を見ると、iBasso Audio(アイバッソオーディオ)は、ヘッドフォンアンプやDACの開発メーカーで、2006年に中国で設立されている。いわゆる新進メーカーだが、実力の高さはすでに広く知られており、ヘッドフォンアンプに関しては日本でも正規輸入が始まる以前から人気を集めていた。
近年、ヒビノインターサウンドによって正規輸入がスタートし、現在は3タイプの製品が展開されている。そのなかから今回は、コンパクトサイズのヘッドフォンアンプ「T3 Hj」を紹介しよう。
シリーズのなかでもエントリーモデルといえるT3 Hjだが、37(幅)×64.5(奥行き)×10(厚さ)ミリというコンパクトなボディーサイズながら、優れた出力性能、低歪性能を実現した本格モデルだ。いっぽうで省電力性も兼ね備え、2.5時間の充分で38時間もの連続使用を可能としている。
ボディーは、メインシャーシとして錆びにくい陽極酸化ステンレスを採用、耐久性を高めると同時に、表面のヘアライン仕上げやロゴデザインによって上質感もうまく演出されている。ボディカラーはダークグラファイトのほか、限定モデルとしてホワイト×シルバーも追加されている。
マッチ箱サイズ(といってもいまではかえって分かりづらいかもしれないが)のコンパクトさで、携帯性はかなり優秀だ。シャツの胸ポケットなどに入れても大したふくらみにはならない。iPod nano(第4世代)と比べても小さいため、このあたりと組み合わせるのが収まり的にはよさそうだ。
操作系は電源スイッチと2つあるゲイン切り替えがスライド式、ボリュームがダイヤル式で、両サイドに配置されている。操作感は良くも悪くもない。さすがにポケットに入れたまま、手探りで操作するには多少の慣れが必要だが、携帯性を考えると突起物のなさはありがたい限りだ。
電源のオンオフは、ブルーのLEDランプが点灯することからひと目で判別できる。ちなみにこのLEDのランプによって、実はボディー背面に半透明パーツを採用していることに気がついた。この演出はなかなかオシャレだ。
一聴して驚いた。コンパクトなボディサイズからは想像できないくらい、躍動感あふれる音楽が聴こえてきたのだ。細かく聴くと、解像度感とキレの良さ、ダイナミックレンジのすべてが向上していることが分かるが、やはり最大の魅力はダイナミックレンジの良さだろう。音楽のメリハリが一番とはっきりとして、これにキレの良さが手伝うことで音楽の躍動感が格段に良くなる。平たくいえば、ノリの良い音になるのだ。
音色に関しては、プレーヤーの特長をそのままストレートに表現するイメージ。「iPod nano」では中域重視のバランスだったが、ウォークマン「A855」に替えると、もともと優良だった高域方向への伸びやかさ余裕が生まれている。中域も一段厚みがました印象だ。
ヘッドフォンに関しては、フィリップス「SHE9900」の場合でも2つあるゲインのうち「GAIN2」をオンにするだけでも事足りる出力の余裕っぷりはありがたい。シュア「SE535」はゲインをあげなくても充分だが、迫力を重視したい人はこの「GAIN2」をオンにしてもよいだろう。逆にソニー「MDR-Z1000」のようなオーバーヘッド型の場合は、ボリュームアップレベルの高い「GAIN1」を使いたいところだが、こちらをオンにするとかえって音のひずみが気になってしまうため迷うところだ。「GAIN1」はAKG 「Q701」など、ヨーロッパ製オーバーヘッド型ヘッドホン用のセッティングなのかもしれない。
どちらにしろ、このサイズでここまで力強いサウンドを堪能させてくれるのは嬉しいかぎり。特にiPod nanoユーザーには、ベストマッチなチョイスといえる。
音質評価 | |
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解像度感 | (粗い−−○−−きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−○−−ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−○−−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−○−−−質感重視) |
製品名 | T3 Hj |
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SN比 | 98dB |
適応インピーダンス | 8〜300オーム推奨 |
ひずみ率 | データなし |
出力 | 76ミリワット+76ミリワット(16オーム) |
電源 | 充電式リチウムポリマーバッテリー |
本体サイズ | 37(幅)×10(高さ)×64.5(奥行き)ミリ |
重量 | 28グラム |
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