さて、肝心のサウンドはいかがなものだろう。
価格同様、一聴して驚いた。ストレスなく広がる空間表現。そして、キメが細かく、ニュアンス表現が繊細で、それでいて抑揚感の高い、ダイナミックなサウンド。いい意味でカナル型イヤフォンの常識を覆している、すばらしい音楽表現だ。しかもサウンドの趣向は、まさに同社Kシリーズや、Q701そのもの。これはうれしい。さすがにステージの広がり感は一歩劣るものの、そもそもヘッドフォンとは思えない自然なサウンドフィールドを持つKシリーズと比較することがナンセンスかもしれない。逆に音の密度感に関しては、K3003の方が幾分優位な印象を持った。
高解像度で再生周波数帯域が幅広く、周波数特性もなかなかに優秀。ダイナミックレンジもすばらしく、それでいて階調表現は細やか。さらには空間的な広がりも良好。K3003の音を聴くと、さまざまな“優等生的”ほめ言葉が浮かぶが、この製品にとっての最大の魅力はそんなところではない。とにかく、ヴォーカルがこれでもかというくらいに力強く熱唱してくれるのだ。とくにすばらしいのが女性ヴォーカル。オペラを聴いてもロックを聴いても、感情表現の伝わり方が尋常じゃなく、どのアルバムもまるで“一世一代の名演奏”に思えてくる。ライブアルバムではさらに“熱気度”が増し、まるで会場の最前列にいるかのようだ。
冷静に見れば、この音はダイナミック型ならではのメリハリやグループ感のよさに、バランスド・アーマチュアならではの解像度感の高さや抑揚表現の細やかさをうまく重ねることで、濃密なサウンドが作り上げることができた、ということなのだろう。その証拠に、出音が細やかな分、録音の良し悪しが顕著に現れる傾向も持っている。しかし、そんなささいなことを考える間もなく、音楽に没頭してひたすら演奏を楽しみたい、そんな気にさせてくれる魅力にあふれているのは確かだ。もともとAKGの製品は、単なるスタジオモニターと割り切るにはもったいない、歌声や演奏の持つ魅力を巧みに表現してくれる傾向を持ちあわせているが、K3003はその方向性をより色濃く感じる製品だ。
短時間の試聴ながら、K3003のサウンドからは「AKGは自社内のフラッグシップにとどまらずカナル型イヤフォンの最高峰を作り上げたい」という製作意図は伝わってきた。しかし、K3003の本当の魅力は、ひたすら音楽に没頭したくなるような気持ちよいサウンドを持ち合わせていることだと思う。魅力的な製品が世に誕生したことを、大いに歓迎したい。
音質評価 | |
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解像度感 | (粗い−−−−○きめ細かい) |
空間表現 | (ナロー−−−−○ワイド) |
帯域バランス | (低域強調−−−○−フラット) |
音色傾向 | (迫力重視−−−○−質感重視) |
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