横浜・みなとみらいにある「パシフィコ横浜」でフラットパネルの総合技術展「FPD International 2011」が開催されている。今年はLEDや有機ELといった次世代照明技術を展示する「LEDソリューション2011」や電力の効率利用を目指す「電力マネジメント2011」「Smart City Week 2011」という4つの展示会を併催しており、合計274社が出展した。
毎年この時期に開催される同展示会だが、今年はアナログ停波後のテレビ需要低迷を反映してか、国内パネルメーカーの展示スペースがさらに減った印象を受ける。大型テレビ用のパネルを展示しているのは台湾や韓国のパネルメーカーばかりで、国内メーカーはスマートフォンやタブレットをターゲットにした中小型液晶がメイン。むしろ製造機器や部材メーカーのほうが元気のようだ。
テレビ用パネルに限って見ると、今年は“3D”と“狭額”(ナローベゼル)の2つがテーマだ。多くのブースで「Super Narrow Bezel」という表記が見られたほか、多彩な3Dテレビが展示されている。ただし、3Dについては現在主流の液晶シャッター方式より、偏光メガネや裸眼立体視が多く、より手軽な方向へとシフトしているようにも感じられた。
台湾AOUの「Scanning Retarder 3D」は、軽い偏光メガネを使いながら、フルハイビジョン解像度の3Dを実現する技術だ。液晶パネルの上に“Switch Cell”と呼ばれる液晶層を設け、液晶パネルが左右の画像を交互に表示するのと同期して、右偏光と左偏光を切り替える。「いわば、画面側に液晶シャッターをつけたようなもの。Pattern Retarder方式に比べると3D効果(立体感)は落ちるが、精細な3D映像になる」(同社)。今年のInternational CESで話題になったサムスンのActive Retarder方式と同種の技術といえるが、こちらは120Hz駆動で3D表示が可能になっていた。
小型パネルの3D化は、専用メガネを使わない裸眼立体視対応が中心になっている。
日立ディスプレイズの「LCL 3D IPS液晶」は、IPS液晶パネルの上に“液晶レンズ”を設けるというもの。液晶配向による光の屈折率分布でレンズ効果を作り出し、左右の目に入る光を分ける。従来の視差バリア方式は、光を分けるためのバリアが一部の光を遮り、3D表示を暗くしてしまうが、液晶レンズ方式では2Dモードよりもむしろ明るくなるという。
一方、東芝モバイルディスプレイでは、OCB液晶を利用した「時分割裸眼方式3D」の試作機を展示していた。こちらはLEDバックライトの光で左右の映像を分ける手法だ。液晶パネルの上ではなく、背面側にレンズシートを設けており、右目用と左目用に分けたバックライトを120Hzで交互に明滅させる。左目用のLEDが点灯したタイミングで液晶パネルが左目用の映像を表示し、右目用のLEDが点灯するのに合わせて右目用の映像を表示する。液晶パネルは常時フルに利用できるため、3D時表示でも画面解像度が下がらない。OCB液晶の高速応答性を利用してクロストークも最低限に抑えた。
これらの裸眼立体視技術に共通するのは、視聴時の適正距離が決まっていて、視野角も狭いこと。例えば東芝のOCB液晶は、画面の正面40センチ程度が最適視聴距離で、視野角は「目の幅程度」という。このためテレビなどよりスマートフォンやタブレットといったパーソナルデバイスへの採用を想定している。
「FPD International 2011」の会期は10月28日(金)まで。入場料は2000円だが、Webで事前登録を行えば無料になる。
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