ITmedia NEWS >
連載
» 2012年10月18日 18時34分 公開

麻倉怜士の「デジタル閻魔帳」:フルデジタルスピーカーに見た“日本のモノづくり”――「CEATEC JAPAN 2012」総括(後編) (2/2)

[芹澤隆徳,ITmedia]
前のページへ 1|2       

――オーディオ関連では、クラリオンのフルデジタルスピーカーが注目を集めました

 クラリオンの「01DRIVEシリーズ」はユニークですね。アンプなど信号処理の部分はデジタル化が進んでいますが、一方のスピーカーは未だにマグネットとボイスコイルで振動板を動かしており、そのためにはアナログ信号を供給しなければなりません。しかし、クラリオンの新製品では、スピーカーの部分までデジタル信号のままで動かします。帯域を分割し、それぞれに専用のコイルを与え、それが振動する仕組みです。

クラリオンのデジタルスピーカー「01DRIVEシリーズ」。アナログ方式の1/8の消費電力で駆動する超低消費電力、5ボルト以下で駆動する超低電圧、フルデジタル伝送/直接駆動で劣化のない「ピュアフルデジタル高音質再生」、256倍オーバーサンプリング+11MHz駆動による「究極の原音再生」といった特長がある

 この技術は、法政大学の先生が発明したもので、Trigence Semiconductor(以下、トライジェンス)というベンチャー企業を立ち上げ、「Dnote」と名付けて家電メーカーにライセンス供与しています。最初にクラリオンが手を上げ、カーオーディオ用の高品位スピーカーとして開発してきたのですが、今回はカーオーディオの枠を超えてオーディオ用として商品化しました。Bluetoothのワイヤレス卓上スピーカーと、天井の照明用引っ掛けシーリングに取り付けられる天井スピーカーです。

シーリングフルデジタルスピーカー

 私はトライジェンスは昔から知っており、以前から音は聴いていたのですが、正直“良い音だ”と思ったことはありませんでした。クラリオンとの協業が決まったときも、「果たしてどうなることか」と心配したのですが、この1年ですごく改善されていて驚きました。課題だった低域の解像感、中域も出ており、これなら十分に商品化できると思いました。

 クラリオンは、これまで音質にこだわるような会社ではなく、この1年間はかなり苦労したようですね。しかし、世界初のものをきちんと作り込み、新しい提案したいという意気込みを感じました。担当者は、今後ホーム用のHi-Fiスピーカーなどに横展開したいと話していましたが、実にCEATECらしくていい。新しいことに挑戦して、しかもユーザーに夢を与える製品を作っています。クラリオンのように光った会社には注目していきたいと思います。

ホシデンも同じく「Dnote」採用のフルデジタルのポータブルスピーカーとヘッドフォンを参考展示。最大96kHz/24bitのハイレゾ音源を直接スピーカーまで転送できるほか、USBバスパワー(500mA)や乾電池(単三形乾電池2〜4本)で駆動できる省エネ性も特長。来年2月にサンプル出荷を開始する

――最後に今年のCEATEC JAPANを振り返って総括をお願いします

 今回は、国内メーカーの展示を中心に紹介しましたが、一方で有機ELテレビが見られなかったのは残念でした。周知の通り、大画面の有機ELテレビは韓国のサムスンとLGが開発を進めていますが、彼らはCEATECに出展していません。サムスンの場合は、日本で本格的なビジネスをしていないのでまだ理解できますが、テレビも販売しているLGが出展しない理由ははよく分かりませんね。また家電の将来を見るという視点からも、この2社の不在はCEATECの問題といえるでしょう。

 このことは実は、CEATECのポジションを示しています。9月に行われる「IFA」は、数年前までローカルな「ベルリンショー」でしたが、今はインターナショナルショーのイメージを強め、海外からの来場者も増えています。またクリスマス商戦前という時期もあり、バイヤーの来場も多い。一方、CEATECはあくまで国内ショーです。技術や展望を見せることがメインでしたが、国内メーカーも直前のIFAで多くの新製品を見せてしまっているため、ポジショニングが不安定になっています。そのような状況の中、主催者側の希望だと思いますが、自動車関連の展示が増えました。

 空きスペースを何とかしたいのは分かりますし、車の技術を紹介するのは悪いことではありません。しかし、メインはあくまでもAVや家電を中心とするエレクトロニクスであるべきで、節操も必要です。また電機メーカーのほうも、これに関してはあまり夢を語ってはいませんでした。

 語るべきはハードウェアだけではありません。ハードの上にソフトがあり、サービスがあります。もともとCEATECはハードウェアのショーという色合いが強い展示会ですが、そこにソフトウェアやサービスを付加して、再び熱き夢を語る場に戻ってほしいと思います。

前のページへ 1|2       

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.