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時代は変わってもノウハウは生きる、マランツ「NA-11S1」で聴くハイレゾ音源の“静寂”山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)

» 2013年03月21日 21時17分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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いちばん感心したのはUSB入力

 各社高級AVセンターのネットワークオーディオ再生機能の音質向上が著しい現在、値段の安さで勝負といった感じの中途半端な専用ネットワークプレーヤーなんて要らないと個人的には考えるが(いっぽうでAVセンターは"トゥーマッチ・ファンクション"と思う方もいらっしゃるのだろう)、本機のクオリティー・レベルならば、専用プレーヤーとしての存在意義が十分にあると思う。どうせ買うならこのクラスの製品をぜひお勧めしたい。

 同社が本機のために用意した操作アプリは「Marantz Remote App」。階層構造が複雑で、リンDSの純正アプリ「Kinsky」などに比べれば使い勝手がよいとはいえないが、以前の同社製ネットワークプレーヤー「NA7004」用の「Wizz App」に比べると、動作の俊敏さは圧倒的に改善されている。加えて空白のできないギャップレス再生が可能になり、ライブアルバムを聴く際の違和感がなくなった。これらはリンDSではデビュー時から実現できていたフィーチャーだが、これまでの国産ネットワークプレーヤーの純正アプリでは不可能だったのである。

付属のリモコン(左)のほかにアプリ「Marantz Remote App」を導入したスマートフォンでも操作できる

 では、本機のもう1つの顔であるUSB DAC機能について話を移そう。じつは、NA-11S1を使ってみて、いちばん感心したのはこの部分。PCと本機のUSB B端子をつないで聴いた音がすばらしくよかったのである。このUSB B端子入力は、192kHz/24bitまでのWAV、FLACファイルなどに加えて、昨今話題にのぼることが多いDSDファイルのネイティブ再生にもDoP(DSD over PCM)方式で対応している。

 DoP方式というのは、PCM信号のデータ配列を利用して1bitのDSD信号を伝送するもので、SACDと同じ2.8MHz/1bitのDSDファイルの場合は、176.4kHz/24bitのPCMデータ配列を利用することになる。

背面端子

 ネットワーク再生時同様、USB入力時も低域から中低域が充実したピラミッド状の帯域バランスを訴求する音調だ。これまでの経験でいうと、DSDの音の特長は絹の肌触りを思わせる滑らかさにあり、PCMのそれは小気味よいキレのよさにあると思うが、再生機器の筐体(きょうたい)設計や電源回路が貧弱な場合、DSDの音の魅力は隠れてしまい、力感に乏しい地味な音という印象をもたれがちになる。それだけに本機の正統派の本格サウンドは、DSDファイルを聴くうえでも実に好ましいと思う。

 また、音場感の豊かさやPCオーディオがこれまで苦手としてきた静寂の気韻やかそけき気配の再現がきわめて精妙な点にも感心した。本機のUSBインタフェースレシーバー部には、8素子18回路の本格的なデジタル・アイソレーターが搭載されているが、それがこのダイナミックレンジの広大な音に大きく貢献しているのだろう。

 また本機には、同社製オリジナル・アルゴリズムによるオーバーサンプリング・デジタルフィルターが2種類用意されている。フィルター1は音楽をイキイキと聴かせるキレのよさが、フィルター2はナチュラルで滑らかな音調がその持味と聞いた。音楽ジャンルや好みで使い分けたい。


 パッケージソフトからハイレゾ配信へ。この時代のすう勢は、リスニングルームでじっくり音楽と向き合いたいオーディオファンも無視することはできなくなったのは、もう間違いのない事実。本格ネットワークプレーヤー&USB DACという2つの顔を持つ本機は、そんな方たちにとってかけがえのない魅力を秘めた製品といっていいだろう。

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