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4Kテレビ、ホントのところ(2) これからの注目ポイント本田雅一のTV Style

» 2014年01月06日 17時29分 公開
[本田雅一,ITmedia]

 ”4K”に関して考える前に、テレビで楽しむ映像は多様で、目的次第で求められる要素が異なることは改めて意識しておく必要がある。ここを誤ってしまうと、「4Kなんて必要ない」という議論になりがちだ。しかし、エンターテインメントとはそういうものではない。必要なのか、必要ではないのかではなく、高精細な表示が行えるテレビを「欲しい」と思うか、それとも思わないかに尽きる。

「International CES 2014」でメーカー各社のプレスカンファレンスが行われる「Mandalay Bay Hotel」

 前回はそうした話を書いたが、まもなく米国ラスベガスで開催される「International CES 2014」を控えての注目点について話を進めよう。

 以前にも本連載の中で紹介したことがあるが、液晶パネルを4K化すること自身は、それほど難しいことではない。もちろん、さまざまな開発作業は必要になるが、フルHD液晶パネルを作れているなら、同じサイズの4K液晶パネルも作れると考えていい。実際、4K液晶パネルの生産そのものは、すでに中国大陸が生産拠点として主流になっている。

 むしろ約800万画素もの映像をハンドリングする方に、コストや技術力が求められている。単純に画素が4倍になるためともいえるが、当面は放送、パッケージソフト、ネット配信、いずれもフルHDが映像品位としては標準的なものになると考えれば、これを超解像で高精細映像にする技術などにも、ノウハウの差が出やすいからだ。

 また、4K映像は単に画素数を増やすだけでは、その良さを100%生かせない。より高精細なパネルと映像ソースを使うのなら、動画解像度もより高いものにならなければならない。このため(映画は別として)4K映像はフレームレートも上げる必要が出てくる。高フレームレートの映像ソースでないならば、間のフレームをクリエーション(=フレーム補完)する必要も出てくる。

 4Kに関しては、単に表示を行う側のテレビ(ディスプレイ)に、まだまだやらねばならないテーマがあり、そこにメーカーの工夫の余地も出てくる。International CESにおいては、まずテレビメーカー各社が「必然的にコストが安くなり、ミドルクラスにも広がってくるだろう4Kテレビ」に対して、どのようにその価値を引き出せる創意工夫を施すか? が1つのテーマになると思う。

4K HEVCのデコーダー

 もう1つの切り口として「H.265」、つまりHEVC(High Efficiency Video Coding)への対応をどのように進めていくかについても、いくつかの提案が見られるはずだ。すでにLGエレクトロニクスは自社の4Kテレビ「LA9700シリーズ」に4K HEVCデコーダーを搭載しているが、これは電波による“放送”に対応したものではない(LANおよびUSBをサポート)。

LGエレクトロニクスの「LA9700シリーズ」(左)と昨年秋の発表会で示された内蔵HEVCデコーダーの資料。LANおよびUSBからの入力に対応する(右)

 また上記の通り、4K解像度を生かすには高フレームレートへの対応が必要になってくるので、毎秒60フレームの4K HEVCデコーダーは内蔵してほしいところだ。1月にお披露目される新製品に搭載されるかどうかは分からないが、いくつかのソリューションは業界向けに展示があると思う。

 ただし、テレビ向けのHEVCデコーダーを提供するタイミングとしては、今は微妙な時期でもある。次世代のテレビ放送規格では、インターネットサービスと融合も視野に入れる必要がある。HTML5ベースのコンテンツと映像コンテンツを融合させる……と書くのは簡単だが、どのような枠組みでクロスメディア/マルチメディア化を行うかは、統一された規格や意志が現時点で存在するわけではない。

昨年末、次世代放送推進フォーラム(NexTV-F)の中間報告で示された資料とデモの様子。HEVC復号化(デコード)後の映像は4K 60p(YCbCr 4:2:0)になる見通しだが、その放送フォーマットも確定するのは春の予定だ

 例えば、4K HEVCをデコードしながら、そこに4K解像度でHTML5コンテンツを実行/重ねて表示するといった場合、HEVCは規格できちんと定まっていても、データ構造やどのようなアプリケーションのフォーマットになるかがはっきりしておらず、機能も後からの追加という可能性が残されている。つまり、新規のLSIとして起こすには時期尚早の面もあるのだ。

 それに対して、映像処理LSIのベンダーがどのような提案を製品に盛り込むか?という視点が1つある。しかし、実は今回のInternational CESでは、日本のターボシステムズが、PC用のパワフルなプラットフォームを使って、より柔軟なソフトウェアによるHEVC対応ソリューションを提供するという情報が入ってきた。さっそく取材に出かけたところ、昨年10月の「CEATEC JAPAN 2013」の時点では毎秒30フレームしかサポートしていなかったが、その後の開発が進んだことで、毎秒60フレーム再生をIntel Core i3(Haswell世代)でもこなせるところまで来ているという。HEVCの4Kデコードだけならば、BayTrail世代のATOMプロセッサーでも処理可能だが、さらにRGBビットマップのHTML5コンテンツを重ね、処理するところまで、すべてソフトウェアで実現しているという。

 Blu-ray Discの4K対応や4K放送の開始(来年から日本でも始まる予定)といった話題もあるが、当面は4K映像の配信経路としてインターネットが使われることが多いと考えられる。まだ規格が”柔らかい”状況の中では、上記例のようにソフトウェアによる実装の方がリスクは少ない。

 最終的にはHEVCデコード機能は、スマートフォン/タブレット向けを含め、何らかの形でプロセッサの中に入り込んでいくだろうが、その前段階としての技術展示が“見どころ”としてあると思う。この点は後日、改めて取り上げたい。

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