ITmedia NEWS >

好調の「クアトロン プロ」――シャープが展開するランクアップ作戦とは?

» 2014年03月26日 17時40分 公開
[芹澤隆徳,ITmedia]

 シャープは3月26日、“AQUOSクアトロン プロ”「XL10シリーズ」の好調さと、その販売戦略を報道関係者に説明した。登壇したのは、国内のテレビ営業部門を統括するデジタル情報家電事業本部の居石勘資氏。緩やかな回復基調にある国内のテレビ市場で“買い替え”と“置きかえ”を進めており、実際に効果を上げているという。

シャープ、デジタル情報家電事業本部国内AV営業統括の居石勘資氏と“AQUOSクアトロン プロ”「XL10シリーズ」

 国内のテレビ市場は、2011年のアナログ停波とそれに先立つエコポイント特需による需要の先食いが影響し、長らく低迷している。居石氏は、1984年度から2014年度までの出荷台数(出典はJEITA)グラフを示し、国内のテレビ基本需要は900万台前後であると指摘。アナログ停波後の2012年度以降は、ようやく500万台を超えるレベルの低空飛行が続いていたが、2013年5月は実に2年と2カ月ぶりに前年同月の数字を上回り、2014年2月には前年同月比で145.2%を記録するなど、「基本需要である900万台に向け、緩やかな回復基調にある」という。

 同社が注目しているのは、「買い替え需要」と「置き替え需要」の2つだ。まず買い替え需要は、薄型テレビの平均寿命とされる7.9年(内閣府調査)から、2005年前後にテレビを購入した人たちの買い替えが今後増えてくると予測。2004年から2006年に販売された約2700万台がターゲットになる。また、この時期はブラウン管から薄型テレビへの移行期。薄型テレビも3年間で約1470万が販売されていることから、「今後は、薄型テレビから薄型テレビへの買い替えも本格化する」と予測する。

薄型テレビから薄型テレビへの買い替えも本格化すると予測

「買い替え需要」と「置き替え需要」

 一方の「置き替え需要」は、アナログ停波前後の混乱の中、否応なくテレビを買い替えなければならなかったケースだ。居石氏は、「2009年からの3年間では、(当時としても小型の)32V型が約2100万台も売れた。潜在的には違うタイプがいいと思っているかもしれない」と指摘。同社では、この2つの需要を柱として、900万台市場の復活を目指し、さまざまなアプローチを展開している。

「2倍の法則」に「サイズアップ」「ランクアップ」

 まず店頭でシャープが提案しているのは、画面の面積が「2倍以上」となる“サイズアップ”だ。「画面面積が2倍になると感動は2倍以上。例えば2005年に発売されたフルHDパネル搭載機『37GE2』は37V型だが、買い替えには60V型を提案する」。さらに「サイズアップを検討するなら、映像の細かさを合わせて提案して見やすさも向上させる」というように、段階を踏んで上位モデルへの“ランクアップ”も提案する2段構えの戦略になっている。

店頭展示で上位モデルを並べ、ランクアップを提案する。「みちがえり展示」と名付けている

 同社が昨年末に投入した“AQUOSクアトロンプロ”の「XL10シリーズ」は、“4K相当”をうたう精細感が特長。またネイチャーテクノロジーを活用して映り込みを抑える「モスアイパネル」、2.1chフロントサラウンドといった特長もあり、「使用中のテレビからの“進化”をしっかりと伝えられるモデルだ」という。

 「とくに奥様方には映り込みの少ないモスアイパネルが人気だ。精細感だけでは購入に至らなくても、音や映り込み防止など、製品に納得する部分がいくつもあると購入に踏み切る」(居石氏)。

 事実、従来機にあたる「XL9シリーズ」発売時と比べると、同じ期間での累計販売台数は約2倍、直近1カ月(3月1日〜23日)では約2.2倍の販売台数を記録した。もちろん4月の消費増税を前にした駆け込み需要という面も大きいが、46V型から80V型までの5サイズのうち、一番の売れ筋は60V型で、次が52V型と“サイズアップ”が着実に進んでいることがうかがえる。

XL10シリーズの販売台数

 さらに、45インチ以上の大型テレビに限ると、XL10シリーズ(4K相当)と4Kモデルをあわせた「高精細モデル」の台数構成比は15.8%まで拡大し、金額構成比では42.2%を占めた。これも目論見通りの“ランクアップ”に成功している証拠だ。なお、より大きな70V型になると4Kモデルを選ぶ傾向が強く、店頭での指名買いでは精細感の高い46V型が人気だという。どちらのサイズも昨年末に比べて2倍以上の販売台数を記録している。

45V型以上に占める高精細モデル構成比

 「今後も60V型をメインに訴求していく。(消費増税の)駆け込み需要の反動も予想されるマーケットだが、満足度の高い商品を届けることで反動減を吹き飛ばしていきたい。この春は、年間900万台マーケット回復に向けた試金石だと考えている」(居石氏)。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.