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6年ぶりの本格ユニバーサルプレイヤーを速攻レビュー、パイオニア「BDP-LX88」山本浩司の「アレを観るならぜひコレで!」(2/2 ページ)

» 2014年09月24日 09時23分 公開
[山本浩司,ITmedia]
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ダウンサンプリングされても見事な音質

 本機は12センチHi-Fi系ディスクがほとんどすべて再生できるが、この日はまだDVDオーディオ・ディスクは再生しないでほしいということだったので、CDとSACDをまず再生する。電源投入直後は音がまだ硬く、1時間ほどナラシ運転しているうちに徐々に本調子に。高級機ではよくあることで、電源投入後すぐに評価を下すのは控えた方がよいと改めて実感した。


 本調子となった本機の音は、ほんとうにすばらしかった。音質調整はRCAアンバランス出力のほうが進んでいるとのことだったが、自室のシステム(スピーカーがJBL K2S9900 、アンプがオクターブJUBILEE PreとMRE220の組合せ)に組み込んで聴くかぎり、XLRバランス出力の腰の座った力感あふれるサウンドのほうが好印象だった。

 低音の安定した響きとピアニシモの澄明な表現に、筐体の徹底した制振対策が効いていると実感。物量を投入できない廉価モデルでは、DACチップの分解能は同じでも、こんな安定感のある低音や澄明な余韻の美しさなどはなかなか表現できないのだ。いいスピーカーで聴けば、誰でも分かる。

 ネットワークオーディオ再生でも試作機ならではのエクスキューズがあり、すべてのPCM音源が44.1kHzまたは48kHzにダウンサンプリングされてしまう状態だったのだが、それでもその音は、本機によるネットワークオーディオ再生の可能性の豊かさを確信させる見事なものだった。どこかの帯域が詰まったりだぶついたりするところのない、たいへん伸びやかなサウンドなのである。

パーツメーカーと共同開発したオリジナルコンデンサーの数々

 レッド・ツェッペリンのファースト・アルバムに収録されていた「グッド・タイムズ、バッド・タイムズ」のハイレゾファイル(96kHz/24ビット、FLAC)を聴いたが、冒頭のギターリフの切れ味のよさに唖然。ジョン・ボーナムの奇妙なバスドラ3連の破壊力にも瞠目した。そのスケールの大きな再現力にこれがダウンサンプリングした音か? とにわかに信じられない思いを抱いたのだった。

映画BDの立体的な映像表現に期待

「LIFE!/ライフ2枚組ブルーレイ&DVD」(20世紀フォックス ホーム エンターテイメント ジャパン)。価格は3990円

 画質もひじょうに優秀だ(プロジェクターはソニーVPL-VW500ES)。映画BD「LIFE! ライフ」を1080/24p出力で観たが、ノイズ極小のきわめてクリアーな画調。色ギレもたいへんよく、細部まで色がよく乗っている。主人公のウォルター(ベン・スティラー)がヒマラヤ山中で写真家のショーン(ショーン・ペン)と出会うシーンの立体的な映像表現に本機の実力の高さが見事に表現されていた。

 本機で4Kアップコンバートした画質は、「VPL-VW500ES」で4Kアップコンした画質よりも穏やかでノーブルな印象。じっくり見ていくと、雪焼けしたショーンの顔の深く刻まれたしわの表現など、細かなテクスチャー、ディティールがよく再現されていることが分かる。

 ちなみに本機にはいくつかの映像モードが用意されており、プロジェクターで高画質映画コンテンツを観る場合を想定したという「PJ Digital Cinema」モードで「LIFE! ライフ」をはじめ幾つかの映画ブルーレイを観たが、このモードでほとんど問題なく映画ソフトが楽しめる印象だった。

 また、音楽ライブ作品用にチューニングしたという「PJ Live 」モードがある。これは「PJ Digital Cinema」に比べると、黒をぐっと締め、色合いの豊かさを強調するメリハリ調で、そのカリッと明快な画調は音楽ライブ作品によくマッチしている。この映像モードで最近観て大きな感銘を受けた音楽BD「ブルース・スプリングスティーン・トリビュート」がたいへんすばらしかった。

 これは2013年に「ミュージックケア・パーソン・オブ・ジ・イヤー」を受賞したスプリングスティーンを讃えるコンサートを記録したもので、パティ・スミスやジャクソン・ブラウン、ジョン・レジェンド、マムフォード&サンズなど多くの優れたアーチストが彼の名曲のカバーを披露していくのだが、BDP-LX88の「PJ Live 」モードで観ると、スポットライトが当たったシンガーたちの表情がことのほか克明に描き出され、気持ちのこもったその演奏のすばらしさにどんどん引き込まれていくのだった。

 パイオニアが放つ6年ぶりの高級ユニバーサルBDプレイヤー「BDP-LX88」は期待に違わぬ実力の持ち主であることが確信できたファースト・ミーティング。製品の仕上がりを待って、OPPOの「BDP-105DJP」とガチンコ比較をしてみたいと思う。

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