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三菱「REAL」の障害で気になったこと

» 2015年03月31日 12時56分 公開
[芹澤隆徳ITmedia]

 3月29日の午前0時すぎ、SNSや掲示板サイトに三菱“REAL”(リアル)ユーザーの悲鳴にも似たトラブル報告が相次いで投稿された。視聴中のテレビが、あるいは録画予約中だったテレビが何も操作していないのに電源のオン/オフを繰り返したという(→関連記事)。深夜だけに、怖い思いをした人も多かったようだ。

三菱電機の説明とお詫び

 29日の午後には三菱電機サイトに障害に関する説明とお詫びが掲載された。これによると、トラブルは特定の放送データを受信した際に発生したもので、「(29日の)正午頃から原因となっていた特定放送データの配信を変更しており、それ以降は障害が発生しなくなることを確認している」。

 ここでいう放送データとは、デジタル放送の“エンジニアリングストリーム”で届いたデータのこと。デジタルチューナー搭載のテレビはPCと同様、ソフトウェアのアップデートにより機能追加や不具合の修正が行えるが、テレビの場合はインターネットにつながっているとは限らないため、地上波やBSといった放送波にのせて更新データを届ける仕組みを持っている。ユーザーはとくに意識する必要がなく、いわば“縁の下の力持ち”的な技術だが、今回はそれがトラブルの引き金になった。

 通常のソフトウェアアップデートは、メーカーが自社の受信機をアップデートするとき、デジタル放送推進協会(Dpa)を介してスケジュールや放送波(地上波、BS)が決められる。するとテレビ局に設置されているSDTT(告知情報)装置から普通のテレビ放送に含めた形で全てのデジタル受信機に通知を行い、アップデートの対象になった機種は受信スタンバイ状態に。その時間になると自動的に一部の電源が入り、ソフトウェアを受信する仕組みだ。ただ、今回の場合は三菱電機側がリアルをアップデートしようとしたわけではなかった。

 三菱電機では、障害の原因となった更新データについて、「他社が作成したもので、内容について当社からは申し上げられない」(同社広報)としている。また同時に、「更新データはデジタルチューナー機器全般を対象としたもので、他社製品でトラブルは生じていない。このため、弊社製品側に原因があった可能性が高い」とも話していた。つまりデジタル放送受信機すべてを対象とした“全受信機共通データ”などであった可能性がある。

三菱リアルの製品情報ページ

 全受信機共通データは、EPGなどに表示されるチャンネルロゴやジャンルコード表などを更新するためのもので、月2回の頻度で更新され、24時間20分周期で送られてくる。特定機種向けのソフトウェアアップデートに比べて遥かに幅広い端末が対象になるため、トラブルが発生したときの影響は大きい。また三菱側は、「弊社製品側に原因があった可能性が高い」としているが、万が一更新データ側の不備であった場合、ほかのメーカー製品でも同様のトラブルが起きかねない。つまり三菱電機だけの問題ではなくなるだろう。

 今回の障害では、2010年以降に製造された三菱電機製のデジタルチューナー搭載テレビ118機種が該当し、影響を受けたテレビは最大で約162万台。現在はすべて通常の動作に戻っているとはいえ、早期の原因究明と対策、そして説明が求められるだろう。誰だって、夜中にテレビが勝手に点いたり、消えたりしたら、気味が悪いのだから。

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