本体にはアルミの切削ボディを採用した。切削は、1枚のアルミ板から必要な部材を削り出す手法。素材を溶かして金型に流し込む鋳造に比べると高コストだが、完成した部材は剛性が高く、表面も滑らかに仕上がる。「鋳造では気泡が混じったりしてディティールが残念なことになることも多々あります。一枚の無垢板から削り出すことで、“一点の曇りもないパーツ”ができました」(大平氏)
切削パーツが露出している「S100」の上面はヘアライン加工の鈍い輝きを放ち、外周には光沢のあるダイヤカットを施した。またセレクター部の小さなレバーもアルミ製で、よく見るとスピン加工仕上げになっている。一方、ボディー下側は鋳造で作られているが、縁の部分は別途旋盤で処理しているため、接合部も美しい。全体を黒でまとめたデザインは、高級オーディオ機器を想起させる。
背面にもコダワリがあった。デスクと接する部分は全面エラストマー樹脂製のストッパーになっており、デザインを兼ねて滑り止め加工を施した。さらにビス穴もエラストマー樹脂でふさぐなど、細かい部分にも配慮している。
もう1つ、大平氏がこだわったのが生産地だった。カシオの場合、電卓の生産拠点はすべて海外に移転済みだ。しかし今回は国内にこだわり、高級時計の「オシアナス」やプロジェクター機器などを手がけている「山形カシオ」に生産ラインを設けた。「量産ラインの立ち上げ時に私も現地に行ったのですが、担当者に様子を聞くと『ん、大変』と言われてしまいました」と笑う大平氏。それでも時計や万年筆のように「持つ喜び」を感じられる製品になったと自信を見せている。
最後に、製品型番の由来を聞いてみた。「初代電卓が『001』だったので3桁を踏襲したいと思っていました。『S』はスペシャルのS。一番いいもの、という意味です」(大平氏)
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