まずは気軽にハイレゾ再生を楽しみたい方には、ざっくりと「5万円以内」で購入できるポータブルオーディオプレイヤーのエントリーモデルがおすすめだ。スマートフォンはもはや日常生活に欠かせないアイテムだ。このほかにもアウトドアで音楽を聴くためにプレイヤーをもう1台持ち歩くことになるわけだから、本体は軽量くてコンパクトな方がいいに決まってる。でも音や機能性は妥協したくない。そんな期待にぴったりと寄り添う、手頃なプレイヤーが今年から特に充実してきた。
ソニーがこの秋に発売したウォークマン「NW-A20シリーズ」は、同時期に発売されたヘッドフォン“h.ear on”「MDR-100A」、イヤフォン“h.ear in”「MDR-EX750AP」とのカラーコラボ展開にも注目したい。オーディオ製品群のハイレゾ展開を積極的に推し進めるソニーの中でも、取り分けエントリークラスに位置づけられる注力製品。本体質量が約66グラムと、女性も片手持ちで操作できるほどコンパクトなボディーに、ソニーストアでの販売価格は2万2880円(税別)からと価格も手頃だ。本体内蔵メモリーのほか、microSDカードが使えるので、他のハイレゾ対応プレイヤーを買い足してもカードを差し替えながら好きな音楽ファイルを共有できる。
また、型番の末尾に「HN」が付くモデルは、デジタルノイズキャンセル機能が利用できるハイレゾ対応のイヤフォンが付属してくるため、電車の中、街の雑踏の中でもさらに集中しながら音楽が聴ける。ソニーのハイレゾ対応ポータブルヘッドフォンアンプ「PHA-1A」は、ウォークマンAシリーズと一緒に使うのに最適なサイズ、接続性を実現。組み合わせればよりハイパワーでメリハリのあるサウンドを楽しめる。
オヤイデが展開するFiiOブランドからも、3万円台で購入できる良質なハイレゾ対応ポータブルオーディオプレイヤー「FiiO X3 2nd generation」が発売されている。本体にはシーラスロジック製のDAC「CS4398」を採用。リニアPCM系は最大192kHz/24bit、96kHz/32bit、DSDも5.6MHzまでのネイティブ再生に対応する。
ハイレゾの音源ファイルには大きく分けて2つの記録方式があり、その一つはサンプリング周波数と量子化ビット数を基準に、音楽信号を一定時間ごとに数値化して記録するリニアPCM方式で、代表的なファイル形式にはWAVやFLAC/AIFF/ALACなどがある。もう1つはアナログ音声信号をデジタルデータに変換する際に、デルタシグマ変調と呼ばれる原理で変換を行う際、データの粗密の違いを1bitの量子化ビットで記録していくDSD方式だ。DSDの場合はサンプリング周波数の高さによって2.8MHzと5.6MHzで記録されたデータ形式のファイルが現在の主流になっている。最近はこのDSDで配信されるハイレゾ音源も多く、リニアPCM系のファイルと音の違いを聴き比べるのもハイレゾを聴く醍醐味(だいごみ)の1つ。このFiiO X3 2ndはDSDファイルを元の音質のまま「ネイティブ再生」できるプレイヤーだが、リニアPCMに変換して取りあえず手元のDSDファイルが楽しめるようになっていたり、ソニーのウォークマンA20シリーズのようにDSDファイルが再生できないプレイヤーもある。DSDの音源はリニアPCM系の音源に比べてまだ作品数が少なめで、一件のファイルサイズが大きめ。今後DSDとどう付き合っていきたいか、用途を考えながら選択したい。
話を「FiiO X3 2nd generation」に戻そう。本体の中心にX字型に配置した物理ボタン、視認性の高いGUIによるシンプルな操作が好評を博している本機。今は生産を終了してしまったアップルの「iPod classic」に近いインターフェースのフィーリングだ。本体メモリーはmicroSDカードを使用。PCにつなげばUSB-DACとしても使えるので、PCによるハイレゾ再生にも活躍してくれるのがうれしい。
iBasso Audioからは今年末から来年初頭に国内発売を予定している新製品「DX80」も、先に開催されたヘッドフォン祭でお目見えした。同社からは先行して「DX90j」という5万円台のハイレゾ対応ポータブルオーディオプレイヤーが発売されているが、新しい「DX80」も海外での販売価格が359ドル前後になるようだ。つまり、日本での発売時には5万円前後になると予想できる。本機もDACにシーラスロジック製の「CS4398」を採用、5.6MHzまでのDSDネイティブ再生や192kHz/24bitまでのリニアPCM再生が可能だ。microSDカードスロットはデュアルで装備。USB-DACとしても使えるほか、同軸/光デジタル出力端子を搭載するなど外部機器との接続性・拡張性が高い。
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