ポータブルオーディオプレイヤーの中にもAndroid OSをプラットフォームに採用する製品がある。音楽を聴くこと以外にも、映像コンテンツを視聴したり、ゲームやWeb検索などマルチユーティリティに使える、セルラー通信によるデータ通信や通話機能を省いたスマートフォンのような使い勝手だ。もっとも、Web検索などはスマホの方が圧倒的に便利だから、Android搭載プレイヤーの立ち位置としては、純正のプレイヤーアプリ以外にサードパーティーが開発・提供しているプレイヤーアプリと音質や使い勝手を比べて楽しめたり、さらに今年から活発化してきた「AWA」や「LINE MUSIC」「Google Playミュージック」など定額制音楽配信サービスがWi-Fiにつないでダイレクトに聴けるところが特徴になる。Wi-Fiに接続できるAndroid搭載のポータブルオーディオプレイヤーを選べば、ストリーミング再生、あるいは本体に聴きたい楽曲をキャッシュして外出先でも聴き放題のサービスが満喫できる。スマートフォンと比べたら、高音質パーツの選定や筐体設計に腐心した音楽再生専用の実力の違いが実感できるはずだ。
Android搭載のポータブルオーディオプレイヤーといえば、ソニーが2013年に発売した「NW-ZX1」が代表的なモデルの1つだが、同社は今もハイエンドモデルの「NW-ZX2」に4.0型タッチ液晶とAndroid 4.2を搭載して展開している。ソニーストアでの販売価格は11万9880円とやや高価だが、ソニー独自開発のハイレゾ対応フルデジタルアンプ「S-Master HX」を採用、電源部や筐体の高音質化にも贅を尽くすフラグシップだ。
国内の老舗ブランドであるパイオニアとオンキヨーからもAndroid搭載のプレイヤーが発売される。パイオニアにとって初めてのハイレゾ対応ポータブルオーディオプレイヤーでもある「XDP-100R」、オンキヨーの「DP-X1」はともにAndroid 5.1を採用。4.7型のタッチ液晶を採用し、Wi-Fiに接続して音楽配信系のコンテンツが楽しめるほか、e-onkyo musicのハイレゾ音源配信サイトから、音源を購入して本体へダイレクトに落としてPCレスでハイレゾ再生が行える。
価格はオープンだが、パイオニアの製品が5万9800円前後、オンキヨーの製品が6万9800円前後と比較的アプローチしやすい価格帯であり、発売予定時期は11月下旬。エンジンの部分やソフトウェアにより実装されている機能など、両ブランドの開発リソースを融合した部分も多くみられるが、音のキャラクターはけっこう違っていて面白い。一言でいえばパイオニアの方はエネルギッシュで輪郭をシャープに描く切れ味の良さを特徴としている。反対に、オンキヨーは解像感が高く、音の輪郭もよりきめ細かく滑らかに表現できる。使い勝手の面では、パイオニアは本体底部にスピーカーを搭載し、ヘッドフォンをつながなくてもパーティーなどでの音楽再生に使いやすい。オンキヨーのプレイヤーはバランス出力対応のヘッドフォン端子を備えるなど、互いにコンセプトや狙うターゲットの違いが垣間見える。
マルチアプリケーション対応のAndroid搭載プレイヤーに対して、独自の組み込みOSでシンプルな操作性をアピールするプレイヤーもある。新しいモデルで例を挙げるならソニーの「NW-ZX100」だ。本体フロントパネル、側面の物理キー、ならびに3.0型の液晶によるレスポンスのよいシンプルな操作性を実現。内蔵バッテリーのスタミナが強化され、ハイレゾ音源の再生時も前機種にあたるNW-ZX1の約16時間から、新しいNW-ZX100では約45時間に連続再生時間が延びている。これも消費電力の大きいタッチパネル液晶をあえて選択しなかったことによるメリットの1つだ。方や、本機はWi-Fi接続やアプリの追加には対応していないため、本体メモリー、またはSDカードに記録した音楽再生をスタンドアロンで聴く楽しみ方が中心になる。
同様にティアックの「HA-P90SD」もシンプルな操作性を実現した組み込みOS系のプレイヤーだ。本体の天面にはモノカラーの有機ELディスプレイを採用。画面に表示されるアイコンと、天面に配置された円形の十字ボタン、本体側面の「マルチウェイスイッチ」を使って音楽再生再生やメニュー選択などの操作ができる。メニューの階層構成がシンプルで、ボタン操作のレスポンスも俊敏だ。またプレイヤーとしてだけではなく、ハイレゾ対応のポータブルヘッドホンアンプとして、スマホなどをつないで音質をグレードアップできるといういわば“2つの顔”を持つマルチユーティリティ機としても異色の存在だ。
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