ナムコ(当時)が1985年に開発したヒト型ロボット「受付小町」。中村雅哉社長(当時)のむちゃぶりによってわずか4カ月で開発された彼女は、30年以上“ナムコの顔”として受付に立ち続ける。現在は門前仲町にあるバンダイナムコスタジオのオフィスで元気に働いている(関連記事:ナムコ社長「受付はロボットにしろ」 30年前の無茶ぶりを伝説的クリエイター陣が語る)。
多くのナムコ社員に愛されてきた彼女だが、故障によって引退の危機にさらされることになる。そんな小町の復活劇について、時を超えて受付小町に関わってきた5人のキーマンたちに話を聞いた(当時の資料などはバンダイナムコスタジオより提供)。
1981年入社。バンダイナムコスタジオ AM第3開発本部 コンテンツデザイン3部 AM企画7課 エグゼクティブプランナー。
代表作は「ゼビウス」(メカデザイン)、「ガンバレット」(企画)、「プロップサイクル」(企画)など。「ニャームコ」「マッピー」「ピュータン」などロボットの企画デザインも担当する。「キュージくん」の企画・開発担当。
1981年入社。ナムコ企画開発本部 新規事業企画部第3企画チーム。
アトラクション企画開発ディレクターとしてナンジャタウンのアトラクション全般を手がけ、「幸せの青い鳥」「魔法体験!マジカル学園」「ゾンビブレイカー」などを担当する。受付小町の企画・開発担当。
(ここでは2006年にアミューズメント部門および新規事業部門が独立した新生ナムコを指す)
1990年入社。バンダイナムコスタジオ NE戦略本部 NE戦略部 NEプロジェクト推進課 課長兼AC連動制作課 課長。
代表作は「テイルズオブエターニア」(原案、ディレクター)、「テイルズオブレジェンディア」(プロデューサー)、「TEKKEN ARENA」(プロデューサー)など。受付小町のリニューアル担当。
1990年入社。バンダイナムコスタジオ AM第2開発本部 コンテンツ開発3部 AMVA3課 ヘッドアートディレクター。
代表作は「ギノウタイ」「テクノドライブ」(デザイン、アートディレクション)、「ミスタードリラーシリーズ」(デザイン、アートディレクション)、「エースコンバット3」(グラフィックデザイン)、「百獣大戦アニマルカイザーシリーズ」(演出、アートディレクション)など。受付小町のリニューアル・デザイン担当。
1999年入社。バンダイナムコスタジオ ET開発本部 未来開発部 クリエイション課 リードエンジニア。
「屋内砂浜 海の子」「ロストランドアドベンチャー」「ナレルンダー!仮面ライダードライブ」「マキシマムヒート」などでプロジェクター、ドームスクリーン、Kinectセンサー、立体視技術などを活用したゲームの空間設計・技術ディレクションを担当する。受付小町のリニューアル・プロジェクションマッピング担当。
彼女がいかにして復活したのかを紹介する前に、“エレメカのナムコ”(エレメカは「ワニワニパニック」や「コズモギャングズ」などの体感型アミューズメント機器を指す)が進めてきた1980年代のロボット事業について、改めて紹介したい。
情緒をキーワードにしたナムコのロボットはどんな未来を描き、技術者たちは21世紀のテクノロジーに何を思うのか。
80年代と今とでは何が大きく変わったのか。遠山さんは、「技術の進化で精度はすごく上がったけれど、実はあまりやっていることは変わっていないんです」と打ち明けた。
「昔は、未来はこうだったらいいよねっていうのを“なんちゃって”で作ってたんです」と遠山さんは笑う。ここでいうなんちゃってとは、簡単な音声認識と合成技術であたかもロボットと会話している風にしたり、バンドロボットが本当にドラムをたたいている風にしたりすることを指す。
「今は精度が上がって本当に楽器をたたくロボットもいますけど、果たしてそれが本当にエンターテインメントなのか。個人的にはかわいげがないなって思っちゃいますね(笑)」と話す遠山さんは、「精度だけでなく情緒についても考えないと、いつまでたっても人間と対等に話はできない」と続ける。
佐々木さんも「膨大な情報にアクセスできるクラウドと連携するロボットはすごいし、すぐに正解を出してくれるけど、それが本当にやりたかったことなのか? と思うこともあります。粋な曖昧さ、とでもいうべきものが欲しいというか」と、持論を述べた。
80年代、ロボットブームに沸いたナムコでは、「未来」だけでなく「情緒」という言葉もはやっていたのだという。
彼らが考えるこれからの情緒ロボットとは、どのようなものなのか。
佐々木さんは、「ロボットといっても必ずしも体はいらなくて、魂となる部分が時計、テレビ、掃除機などいろいろなものに憑依(ひょうい)するとか、そういう未来がきそうだなとは思いますね。立体映像の妖精みたいな」と語る。
このようなロボット関連の事業について現在進めているものがあるか聞いてみたが、残念ながら詳細は明かされなかった。当時ナムコのエレメカで未来を体験してきた読者たちにとっては、今後どのような未来を描いてくれるのかは気になるところだろう。
昨今のロボットブームの代表格ともいえるPepperについてどう思っているか尋ねたところ、口をそろえて「耐久力と安全性がすごい」という、作り手ならではの意見が出た。
「子供が体を触ったり、握手したりしても壊れないし、危険性もない。あと、OSレベルで障害物を認識して動き方を変えるのもすごいですよね」と、遠山さんは子供向けのエレメカを作り続けてきたナムコならではの視点で語る。
指田さんも「純粋に、悔しいですよね。携帯ショップとかで見かけると、結構未来きてるなって思いますし」と胸中を明かした。
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