市販のカメラやスマートフォン内蔵カメラが進化しても、それだけではなかなか撮影できない映像表現がある。
例えば「バレットタイム」。映画『マトリックス』で、弾丸をのけ反って避けるシーンに使われて話題となり、今ではミュージックビデオやテレビCMでも見かけるSFX(特撮)だ。被写体がスローモーションで動く中、高速なカメラワークで映像が周囲をギュンギュン飛び回り、見ている方はまるで加速装置を使ったかのような不思議な感覚になる。
通常バレットタイムの映像は、被写体を多数のカメラで囲んで撮影し、それを編集・合成して作られる。そのため、個人で撮影するのは非常に難しい。
そんなバレットタイムを1台のカメラで、しかも高性能な動画編集マシンいらずで実現できるのが「Insta360 ONE」だ。中国Insta360の製品で、日本では販売代理店のハコスコが2017年8月28日に発売した。価格は4万2999円(税込)。
Insta360 ONEは、iPhoneやiPadと組み合わせて使う4K対応の360度全天球カメラ。Lightning端子で合体して撮影したり、Bluetooth接続でリモート撮影したり、さらにカメラ単体で撮影したりと、シーンに応じて使い分けられる。
対応機種はiPhone 6以降かiPad Air 2以降、対応OSはiOS 9.0以上だ(Android版は開発中)。iPhoneやiPadにLightningで接続すれば、自動的にアプリが起動し、すぐ撮影を開始できる。この手の360度全天球カメラとしては、撮影した映像をiPhoneやiPadに転送する時間が短いこともウリにしている。
肝心のバレットタイムについては、Insta360 ONEを「自撮り棒」や「ひも」に取り付けて、手でグルグルと回転させながらスローモーション撮影することで可能にした。なんともアナログな方法だが、120fpsのスローモーション撮影(アプリのフレーム補間で最大240fpsに変換)を行いつつ、6軸手ブレ補正機能でブレを抑え、自撮り棒やひもをソフトウェア処理で消去できるなど、幾つもの技術で実現している。
これにより、多数のカメラや機材、ドローンによる空撮などを使わず、1台で本格的なバレットタイムの映像を作れるというわけだ(ただし自分でカメラをぶん回すため、手を挙げた格好になる)。製品にはバレットタイム撮影用のひもが1本付属しているので、購入後すぐに試せる。
実はこの撮影方法だが、2016年の段階でiPhone 6にひもを取り付けて、手でグルグル回して撮影しながらスキーを滑り、その映像をスローモーションにすることで、バレットタイムを実現して話題になったスイスのスキーヤー(ニコラス・ヴィオニ氏)によるYouTube投稿動画がある。
Insta360 ONEは、これをより高性能かつ手軽に実現できる手段を用意したと言える(Insta360は、マトリックスの監督であるウォシャウスキー姉妹とヴィオニ氏にインスパイアされたとコメントしている)。
バレットタイム以外にも、Insta360 ONEは360度全天球カメラの特性を生かした高度な撮影・編集機能を備えている。
「FreeCapture」は撮影した360度全天球動画をiOSアプリで再生しながら、任意の視点を選んで通常の1080p動画に変換できる機能だ。被写体を360度動画で撮影しておけば、後から自由にカメラの位置やズームを変えながらフルHDで切り出せるため、複数のカメラで撮影・編集したような動画が作れる。「Smart Track」機能を使えば、選択した被写体が画面中央に来るよう自動追尾し、それを通常の1080p動画に変換することもできる。
基本スペックは以下の通り。各種マニュアル撮影、HDR、タイムラプス、ライブ配信(360度動画の視点を配信者がコントロールできる「アニメーションライブ」対応)、VRモード再生といった機能も持つ。
本体には1/4-20のネジ穴が切られており、三脚、ヘルメット、ドローン、自転車などに取り付けが可能だ。オプションのIP68規格防水ハウジング(2017年9月発売予定)を装着すれば、水深30mでの撮影もこなすなど、幅広いシーンで利用できる。
最後に1つだけ。この記事をご覧になって、手元のiPhoneにひもを付けてぶん回したくなっても、大変キケンなので思いとどまることを強くおすすめする。
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