野村證券が9月に実施した調査で、「今後3カ月程度を想定した場合、注目したい魅力的な業種」を個人投資家に聞いたところ、7カ月連続で「素材関連」がトップとなった(9月6日の記事参照)。この調査でIT関連は12セクター中4番目で、前月と比べ2ランク上がった。ロイターの調査でも、投資対象としてIT関連は3番目に位置している(9月10日の記事参照)。だが、IT関連で相場を牽引するような銘柄は少なく、「話題にならないのが問題」とマネックス証券投資情報部の清水洋介氏は指摘する。
ライブドアショック以降、多くのIT関連銘柄は低迷を続けている。だがこうした環境の中でも、例えばモバゲータウンで人気を集めるディー・エヌ・エーは、業績に連動する形で株価を上げてきている(7月30日の記事参照)。株式市場を引っ張っていくようなIT銘柄は少ないが、よく探せば今後の成長性に期待が持てる“お宝銘柄”が埋もれているかもしれない。ここ1年間で新興市場に上場したITベンチャーの中に、成長性や安定性などを備えた銘柄はあるのか。
トレーダーズ・アンド・カンパニーの田中一実アナリストは、IPO(新規公開株)を担当し、ベンチャー企業の動向を分析している。「ITベンチャーで成長性があり、しかも割安」――この3つの条件を満たした銘柄として、田中氏はある2つのIT企業に注目した。
1つめは、ソフトウェアの企画や開発などを手がけるエイチアイ(証券コード:3846)。携帯電話向けの3D描写エンジン「MascotCapsule」が同社の主力商品だ。
MascotCapsuleは、OSとソフトの中間的な役割を担っているミドルウェア。国内外の市場で携帯端末の高性能化が進んでいて、MascotCapsuleを搭載した端末台数が伸びている。MascotCapsuleを搭載した携帯端末は、2006年度第3四半期には累計2億3000万台を突破、2008年3月には3億4000万台を予想している。
田中氏は「高度な3Dを表現できるミドルウェアは、今後ますます需要が高まるのではないか。そうなるとMascotCapsuleを搭載した携帯端末の台数は増えていくだろう」と、同社の成長性を評価する。
同社の製品の出荷台数に応じたライセンス収入(特許料収入)は堅調に推移している。一般的にライセンス収入は利益率が高く、同社の決算は好業績となった。2008年度第1四半期の経常利益は1億9500万円で、前年同期比1030.2%増。また中間期の業績予想を上方修正し、経常利益9500万円の予想に対し、118.6%増の2億900万円とした。
4月12日に上場した同社の株価は76万6000円の高値を付けたものの、その後は低迷が続いている。9月21日の株価は終値で、前日比11.3%増の32万6000円。現状の株価について田中氏は「まだまだ割安で、38〜40万円の株価が妥当」と分析している。
2つめは、顧客情報管理ASPを提供する「パイプドビッツ」(証券コード:3831)だ。同社の「スパイラル・メッセージングプレース」(スパイラル)は、企業の顧客情報を安全にデータベース化し、メール配信やWebアンケートを利用、マーケティングに活用できるシステムだ。
同社の特徴は、顧客の約8割が継続してスパイラルを利用していることだ。「新興市場に上場している企業で、同社のような安定した収入を得ている銘柄は少ない。そこが強み」(同)と指摘する。
2007年2月期の決算では、経常利益が対前年同期比26.5%増の2億800万円、当期純利益は同28.2%増の1億2400万円だった。2月28日時点の顧客数は、対前年度比356件増の899件に拡大した。これまで同社は首都圏と関西で営業を展開してきたが、今後は販売エリアを拡大していく方針だ。
2006年12月21日に上場した同社の上場来高値は136万円で、9月21日の終値は、前日比3.3%増の18万9000円。「上場後は“マネーゲーム”となり割高が続いたが、現在の株価は割安だ。目標株価は30万円」と強気の見方を示した。
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