自動車業界はアニメを作るべき誠 Weekly Access Top10(2009年5月9日〜5月15日)

» 2009年05月18日 12時00分 公開
[堀内彰宏,Business Media 誠]

 先週最も読まれた記事は「公称38万部だが実売は15万部……漫画業界が荒れている理由」。2位は「あなたもお金が借りられなくなる? 法律が招いた“優しいヤミ金”」、3位は「米国で白熱する、プレミアムコーヒー戦争とスタバいじめ」だった。

 筆者が注目した記事は郷好文さんの「『バーベキューがうまいのは自由になれるからさ』――南の国の“バービー”ナイト」。物語仕立てでバーベキューの魅力を伝えようという試みだ。

 ある物語の中で商品やサービスが取り上げられたことをきっかけに、売り上げが急増するという話は多い。直近では高校の軽音楽部を舞台にしたアニメ『けいおん!』のヒットで、Amazonに“異変”が起きているという話がある(実際に楽器を購入した人は少ないようだが)。また、今夏劇場アニメ化されるライトノベル『文学少女』シリーズを読んで、作品内で取り上げられた太宰治さんの『人間失格』やアンドレ・ジッドさんの『狭き門』を読んだというコメントもミクシィコミュニティにある。

『けいおん!』公式Webサイト(左)、『文学少女と死にたがりの道化』(右)

 これらはもともと広告を意図して作られた物語ではないが、ドラマのタイアップのように広告を意図したアニメを作っても面白いのではないだろうか。若者層が視聴者となるアニメで広告するのが適切な商品の1つとして、若者離れが叫ばれている自動車が挙げられる。

 従来、自動車をテーマにした物語は『頭文字D』など走り屋が主役のものが人気を集めていたが、恐らくそれはすべての視聴者にとって共通の魅力となっているものをテーマとはしていない。多くの人にとっての自動車の魅力は、ドライビングテクニックを競えることよりも、2人きりでデートができたり、少人数で遠方に旅行できたりというところにあるだろう。

 そこで、地方大学に入学したばかりの女の子が旅行サークルに入って、先輩の自動車でさまざまな場所を観光したり、教習所で免許を取ったりするというゆるめの物語をアニメにしてはどうだろうか。北海道の一直線に伸びる道路を快走したり、サークルメンバーの実家を回ったり、お遍路さんに行ったり、白川郷などの世界遺産をめぐったりと、自動車を使うとより楽しめるような旅行を1話ごとに“プレゼン”するのだ。

 目的は若者に自動車に興味を持ってもらうことなので、高級車はなるべく出さない方向で。どんな自動車があるかというよりは、自動車があるとこんなに楽しいことができるんだよという体験を前面に打ち出せば面白いのではないだろうか。

 『現代視覚文化研究vol.2』によると、あるテレビアニメの制作費は1話(30分)当たり約1000万円。1クール13話だと、1億3000万円ほどで作れることになる(ネット上に流出した資料がもとなので信憑性に疑問符は付く上、安すぎるという話もある)。

 日経広告研究所によると、2007年の自動車業界の広告費は、トヨタ自動車が1083億円、本田技研工業が913億円、日産自動車が396億円。作画には相当気を遣う必要があるだろうが、制作費が1億3000万円の10倍かかったとしても、全体の広告予算からするとそれほどの割合にはならない。また、自社サイトで無料で本編を流したり、著作権の縛りを緩くしたりすると、視聴者がパロディを作って宣伝してくれる可能性もある。また、タレントと違ってアニメキャラクターは酒に酔って公園で服を脱いだりしないので、スキャンダルもない。

 そういえば今年3月、トヨタ自動車本社内にスタジオジブリが新スタジオを開設するというニュースがあった。スタジオジブリのリリースには「目的は新人育成」と書いてあるのだが、もしかすると案外本気で広告用のアニメを制作することも考えているのかもしれない。

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