――官僚は、政治主導の改革を受け入れるつもりはあるのでしょうか。
古賀 官僚は基本的に受け入れるインセンティブはないんですね。ですから、それを受け入れるインセンティブの構造に変えなくてはいけません。それが公務員制度改革です。
やらないといけないことはたくさんありますが、その中でも官僚の評価の仕組みが今までしっかりしたものがほとんどなかったのです。目標が与えられて、その目標を達成したかどうかによって評価されるのが普通ですが、私自身も経験していますが、そういう明確な評価が行われているという自覚さえないという状況にあります。それを根本的に変えなくてはいけないと思っています。
それをやるために一番大事なことは、首相がやるべきことをはっきり持っていて、各閣僚ごとに役割分担を決めて、その閣僚が官僚に対して具体的な目標を設定すること、これが非常に大事です。何となくやってくれではなくて、具体的に「いつまでにこういうことをやろう」という目標設定をしっかりした上で、半年〜1年ごとに評価していく。目標を達成できれば昇進するし、ダメだったら昇進できないという仕組みにする必要があります。
民主党が本当に信頼できる有能な官僚を選びたいのであれば、踏み絵になるような政策について目標を与える、例えば「天下りポストをあなたの所管の分野でいつまでに全廃しろ、半減しろ」という目標を与えれば、どのくらいやる気や能力があるか、非常にはっきりと分かると思います。
――日本ではなぜ公務員改革が問題となっているのですか。
古賀 ほかのアジアの国々のことについて私も詳しくは知らないのですが、経済が順調に発展している間は、あまりこの問題は出てこないと思うんですね。日本は今の仕組みで続けていくと、もう成長できないし、成長どころかどんどん下り坂を転がっていく状況になっている。そこから抜け出すためには、今の仕組みを大きく変えなくてはいけない時にきています。
そして、全体の経済のパイがほとんど大きくならない状況の中で仕組みを変えるということは、多くの場合、いろんなプレイヤーの取り分が減るということが実際に起きるということです。特に官僚というのは今のシステムに依存して自分の利益を守っているので、そのシステムを変えることに非常に強い抵抗を示します。
これがもし非常に順調に成長している時期であれば、システムを変えてもパイが広がるので、自分の取り分の増え方はほかの人より少ないかもしれないですが、依然として増える、あるいは最低限維持できるので、変革できるということがあります。しかし、今の日本は官僚の利益を維持しながらより良いシステムに変えることが不可能になっていると思うんですね。従って、それを知っている官僚はどうしても改革に抵抗することになるんだと思います。
――官僚と政治家の関係についてどのように考えていますか。また、同僚との関係はいかがですか。
古賀 官僚がある政府の政策を批判することは、普通はあってはいけないことかなと思います。ただ、そういう意味では私はいつでも官僚を辞める心の準備ができています。それは人事当局にもはっきり伝えてあります。私はだいぶ前になりますが、人事当局から「ちょっと待っておいてくれ。ポストを探すから」と言われました。実は私は1回辞めると言っていて、2010年10月で辞めることになっていました。
しかし、あの仙谷由人さんの恫喝と言われている発言があった時、大畠章宏経産大臣(当時)が私のことを辞めさせないという趣旨のことをおっしゃってしまったので、やめられなくなったというか、経済産業省もそこで辞めてもらっちゃ困るということでいったんそれがキャンセルされて、そのまま今日に至っています。
私自身の希望はもちろん「引き続き官僚として仕事がしたい」というのが一番です。ただ、仕事がずっと与えられない、要するに「あなたのポストはありませんよ」と言われるのであれば、これはもう辞めるしかないと思っています。「もしかすると、もうすぐそう言われるかもしれない」とは思っています。
同僚との関係という意味では、もちろん私が批判すると一番影響を受けるのは幹部なので、幹部クラスは恐らく私に対してあまりいい気持ちを持っていないだろうと思いますが、あまり直接言ってきません。「言うと危ない」と思っていますから(笑)。しかし、若手ではかなり私をサポートしている人は多くて、実は昨日の夜も随分遅くまで霞が関の改革を進めたいという若手が集まって、一緒に話をしました。そういう志のある若い官僚もたくさんいるということはお伝えしておきたいと思います。
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