インターネットが助けに――競輪トッププロから米国の自転車職人へ世界一周サムライバックパッカープロジェクト(3/3 ページ)

» 2011年11月08日 08時00分 公開
[太田英基,世界一周サムライバックパッカープロジェクト]
世界一周サムライバックパッカープロジェクト
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――米国(ヒューストン)で働く、生活する魅力を教えて下さい。

 ヒューストンに限って言えば、オイルビジネスで潤った広大な街に、現在でもたくさんの人々が移り住んできています。人口が増えるということは、ビジネスチャンスも増えるということです。全米の景気は悪いですが、ヒューストンはその中でも不景気の影響を受けていない土地の筆頭です。

 確かに夏は蒸し暑く、観光名所も少ないですが、安定した景気と、変に肩に力を入れることなく、家族を中心とした生活ができるのが魅力です。

 また、米国は製品としていかがなものかと思われる奇想天外なものを作っても、それを認める土壌があります。私は比較的保守的な製品を正確に、美しく仕上げることを目指していますが、「思い込みを捨てて、自由奔放な世界に走ったほうが幸せかなあ」と感じることもあります。

――今後の予定や将来の夢(目標)について教えてください。

 まずはお客さんに満足してもらえる製品を作ること。子どもに手がかからなくなったら、自分の路面店を持ち、「あの頑固ジジイと話すのも面白いな」と言われるような職人になりたいですね。また、日本と米国の間で、特にジュニア選手の自転車競技の交流の手助けがしたいです。

――最後に日本の若者にメッセージをお願いします。

 日本は良い国です。私も大好きです。

 しかし、一度きりの人生です。外に出るのは、面白いです(国内産業の空洞化とか難しいことは言いません)。苦しいこと以上に楽しいことがあります。将来、定年を迎えたら……とか言っていたのでは、まず無理です。手かせ、足かせのない若いうちに行きましょう。 

 知り合いが弁護士になり、少ない自己資金で事務所を開き、10年の歳月を経て、マンションに住んでいます。また、ある知り合いが本業のかたわら、庭に落ちている犬のフン拾いのビジネスを全米にフランチャイズ展開しています。ヒューストンは、アイデアがあれば比較的少ない資金で、大きなビジネスができる可能性の高い街です。

 ビザの問題もあるかと思います。しかし、日本人以外の膨大な数の移民の方々が住んでいるのも事実です。家族との時間を大切にした生活をしたい人はもちろん、ビジネスで活躍したい人にも大きな可能性を持った街だと思います。 

 外に出れば、日本の良いところを再確認できますし、至らないところも見えてきます。青臭く聞こえますが、明るい日本の未来を築くには、外の世界を肌で感じてきた志ある若者が、いつの時代でも必要です。

職人仕事がインターネットで学べる時代

 自転車を使う側から作る側への転向、日本ではない米国での仕事、そんなまったく新しい環境の中でも、笑顔で家族を支えて盛り上げていく案浦さんのパワフルさには驚きました。

 案浦さんが「インターネットのおかげで、従来は最低5年かかると言われていた時間を短縮することができた」と仰っているのは大変興味深かったです。

 特定の師匠からしか教わることができなかった情報や経験も、今ではインターネットの普及で世界中の人と情報や課題を共有し、以前よりも容易に学べるようになってきているのでしょう。こうなると、「ベテラン職人の仕事だから」と半ばあきらめていたような仕事ほど、チャンスが眠っているのかも。これもインターネットがもたらしたイノベーションの1つなのかもしれません。

 しかし、インターネットで得た情報だけでは、誰かが目の前で指導してくれるわけではないので、ヒントを基に手探りで試行錯誤を繰り返したのではないかと思われます。本人の死に物狂いの努力が伴わなければ実らせることは難しいでしょう。

 自転車を使う側のプロフェッショナルであった案浦さんは、これからは自転車の作り手のプロフェッショナルとして、そして日本人として、世界に向けて素晴らしい自転車を作り続けていくことでしょう。元スポーツ選手として体つきはもちろん、ハートも非常にエネルギッシュな案浦さんのこれからに期待大です!

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