「転職は当たり前の時代」は本当か――転職についてシリアスに考えてみるサカタカツミ「就活・転職のフシギ発見!」(3/3 ページ)

» 2013年01月28日 08時00分 公開
[サカタカツミ,Business Media 誠]
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大切なのは「日常の仕事をきちんとする」ということ

 日常生活の中で転職を意識しなくても良い、という話をすると「いざ転職しなければならない、という時点であわてて準備しても、転職できない。日々、いつかは転職するかもしれないと考えて、キャリア形成することは重要」という反論をされるケースが多くあります。しかし、これもマユツバ物です。いつかは転職するという前提で何をすべきなのでしようか。多くの場合が「職務経歴書を整理しておく」とか「スキルを可視化しておく」とか「自分の市場価値がどのくらいなのか、相場観を持っておく」という話につきてしまいます。が、こんなのは「いざ転職」となってからでも遅くはない(手間はかかりますが)。

 さらに、日常の職務に勤しんでいない人は、転職を意識してやっておくべきことが何もできないというジレンマに陥ります。そう、大切なのは転職を意識することではなくて、日常の仕事をきちんとするということなのです。

 長々と分かりきったことを書いてきましたが、この当たり前のことが誤解されてしまうのには、いくつかの原因があります。その最たるものは「企業と働く人との関係」です。転職を視野に入れて生活をしろという人の決め台詞は「40年後も今の会社がある、と考えている人はいないよ」というもの。そう考えると転職は当然だし、それを考えないのは間が抜けている、というよくできたストーリなのですが、優先順位が逆です。まず、日常の仕事がちゃんとできていて、その延長線上に結果として転職に対する「備えができている」というのが理想なのです。

 間違った順位を付けてしまった結果、転職市場での価値がないのに転職を試みて失敗してしまったり、日常の仕事をおろそかにして、資格取得に血眼になったり、勉強会や人材交流会などのネットワーキングに精を出したりして、今の居場所にすらいられなくなってしまうというケースは枚挙にいとまがありません。

 転職を支援するサービスをプロデュースする立場の人間として、自戒の念を込めて書きますが、転職「だけ」を意識して行動している人の市場価値はそれほど高くないのです。結果として「今の居場所が自分にふさわしくない」と感じていると「そんなことだったらうちに来ませんか?」と誘われるくらいに、今の場所で頑張って働いている人こそが、企業が求める人物なのです。まあ、そういう人は、今いる企業も全力で引き止めるでしょうし、結果として転職しない人が多い……ということになるのですが、それはまた、別の話ということで。

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