長尾:「マイブーム」というのは、マンガ家のみうらじゅんという人が発明したらしいですよ。
話を元に戻しましょう。次は「全然OKです」のほうですが、本来「全然」は否定的な表現を強調する言葉として広く使われてきました。「全然ダメだ」「全然分からない」といった使い方です。
だから「全然いい」とか「全然OK」は間違いだという意見の人が多いのですが、明治時代の夏目漱石の作品や戦前のマンガには「全然+肯定表現」という使い方が当たり前のように見られます。つまり、「全然OK」は先祖返り的な使い方と言えます。「まだまだ違和感を持つ人は多いが、間違いとはいえない」といったところでしょう。
長尾:それと同様に、「よく食べません」という表現を使う日本語学習者がいますが、「よく」はプラスの頻度をあらわす言葉ですから、後ろに否定的な語がつくのは間違いです。「あまり食べません」「よく食べます」が正しい使い方です。
そういう言い方をしてしまうのは「お米をよく食べますか?」のような質問に対して、否定的な答えを返すときが多いようです。
「よく食べますか?」→「よく食べます」
「よく食べますか?」→「あまり食べません」
という関係をきちんと理解して使えるようになるのは、かなり日本語に慣れた人でしょう。
セイン:そういった用法と関係があるかどうかよくわかりませんが、この前「普通においしい」と言っている若者を見かけました。これ、日本語として「普通の」表現ですか?
長尾:「普通の」とくれば、その後に「本」とか「クルマ」とか何か名詞がきて「特別でない何か」を示す言葉になります。「普通に」は、最近よく見られるようになった若者言葉で「普通においしい」「普通に雨が降っている」といった、副詞的な使い方をします。
「普通においしい」の反対の表現は、「特別においしい」でしょう。「クセがあるけどおいしい」「慣れるとおいしい」といったものに対して、「素直に、飾り気なくおいしい」という意味が「普通においしい」だと思います。
また、同じ頃から流行し始めた表現に「なにげに」というものがあります。これは「なにげなく」「なにげなしに」から派生したもので、「とくに意図せずに」「さりげなく」という意味です。
セイン:「普通においしい」や、「なにげにおいしい」という表現は、現代の世の中に合った表現のような気がします。時代に合わせて言葉も変化してくるところが、「なにげにおもしろい」ですね。
(つづく)
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