岡田: 最後に、本インタビュー企画の趣旨でもある「アクションリーダー」としての働き方について教えてください。常に心がけていることは何でしょうか?
清川: 社長という立場ですが、現場のすみずみまで見ていたいとは思っています。口を出すだけの上司にはなりたくないのです。だから、現場スタッフが分からないのであれば自分がハンズオンでやってみせますし、逆に現場スタッフができることは自分も同じようにできるようになりたいと思っています。組織運営面で社長がやるべき仕事ではないと分かっていても、自分ができない仕事は作りたくないですね。
岡田: 何だかとてもいい上司じゃないですか? 何か具体的な出来事がありましたか?
清川: そうですね、例えば「コールドコール(展示会などで集めた名刺などの顧客情報から、先方のニーズを把握することなく営業を行うこと)」という営業方法があります。これを自分がやったこともないくせに、部下にだけやらせるのはおかしいと思いますね。
岡田: ほかに心掛けていることは?
清川: ベンチャーという限られたリソースで、しかも不確実なものの上にある業態である以上、ビジネスプランはトップダウンで作らなければ目標は達成できません。同じ「100」を作るにしても、ボトムアップでは全社員が全力を出しているようでも「100」に至る前に発散していることが多いのです。だからまず、会社の1年目、2年目、3年目の結果はこうだと決める。結果を前提にします。
例えば「100億円の売り上げを達成するには、10億円のコストがかかります」となったとします。ベンチャーにとってそれは制約条件になることが多い。だからこそトップダウンで「その必要な10億円、本当に集められないのか」とあきらめずに考え続けます。ボトムアップですと誰かが「無理だ」と思った瞬間に、それは達成できない「無理なこと」になります。
やってみて結果的に「無理だった」となることと、やらずに「無理だ」と思うことには大きなかい離があります。トップダウンでやるということは「これは無理だった」という失敗への評価をしたうえで、「別の新しい方法を考えろ」と素早く切り替えられることだと思っています。
岡田: 確かに、ボトムアップですと成果が目標に達していなくても、自分が努力した分のコストを惜しんで、いつまでも切り替えられないことがあり得ますよね。トップが責任をもってくれると、切り替えも早くなりそうです。
岡田: 最後に、これから起業したいと思っている人に向けてメッセージを。
清川: 自分のところにも「起業したいんだけど」と相談に来る人はいます。でも「お金がない」「家族がいる」と。答えは1つですよ、「やればいいじゃん」。かつて堀江さんも言っていましたが、お金がなければ「借りればいいじゃん」です。
何より、起業は「やってみないと分からないもの」。アクションは起こさなければ意味がないのにびびってしまう。「失敗したら失敗したでいいじゃない」というマインドが日本人には薄いのでしょうね。起業という不確実性が高いことをやろうとしているのに、考えていたって分かるはずがありません。答えがないものに対して仮に100時間考えても、答えが出るわけないんですよ。だからこそ、答えが出るようにアクションを起こす必要があるのです。
それから「何から始めたらいいのか分からない」という人もいます。それこそ、週末起業でもかまわないので、会社を作ってみてください。すると、自然に次にしなければならないことが見えてきます。定款には何をやる会社なのか書かなきゃいけませんし、お金を何で稼ぐのか決めなきゃいけませんからね。
やってみたら「あれ、フルタイムで起業しなくても、やりたいことはできちゃった」となるかもしれません。あるいは「あ、これ以上のことをやるとしたら会社を辞めるべきだな」と判断できるようになるかもしれません。
必要に迫られたら、それをやればいいだけのことです。起業については、事前に完ぺきなプランなんて立てられないのですから。事前に何でも準備しようと思うのではなく、苦しみに応じてやるべきことを増やしてみてください。そのほうが確実にリターンを得られると思いますよ。
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