本連載は、山本純子著、書籍『入門クラウドファンディング』(日本実業出版社刊)から一部抜粋、編集しています。
本書は国内外の諸事情に通じた気鋭のコンサルタントによるわが国初となる「クラウドファンディング」の本格的な入門書です。
不特定多数の人たちをフォロワーに変え、資金を提供してもらいプロジェクトを実現する仕組み――それがクラウドファンディング。クラウドファンディングが大きな注目を集める“本当の理由”とは? 単なる資金調達の手段を超えてプロジェクトの進め方を大きく変える、新しい“おカネの集め方”です。
キックスターターといった世界最大のプラットフォーム、莫大な資金調達をクリアしたプロジェクト、世界的映画監督が仕掛けたプロジェクトに対するさまざまな議論の応酬など、興味深いエピソードも満載。起業家(予備軍)やベンチャー経営者のみならず、一般企業の経営者必読の1冊です!
「クラウドファンディング」という言葉が指す範囲、定義とは何でしょうか。実は、クラウドファンディングの定義は、他のインターネット関連用語同様、まだ確定したものはなく、論者によってさまざまです(※1)。
いくつかの論文から定義を引用してみると、
クラウドファンディングとは、特定の目的への独創性を支援するため、寄付もしくは将来できる製品や何らかの特典との交換という形で経済的なリソースを提供する一般公募を意味する。ほとんどがインターネットを通じて行なわれる(※2)
制度的な財源から資金調達するのではなく、支援コミュニティに対しアイデアやプロジェクトにお金を出してくれるようお願いすること(※3)
ある集団が、何らかの価値と引き換えに多くの人々に小さな貢献を求め、それらを受け取ることによるプロジェクト資金調達のプロセス(※4)
などいろいろな定義がありますが、すべてに共通している重要な要素は前回も書いた通り、
銀行、投資家など金融の専門家ではない「クラウド(Crowd=人々、大衆)」から「ファンディング(Funding=資金調達)」する
ということです。資金を調達する人と提供する人の間に、多くはクラウドファンディングを実施する場をウェブ上に提供する形で仲介が入る場合もありますが、それは必須ではなく、基本的には両者に直接の関係が結ばれます。
また、クラウドファンディングを説明する際に「少額寄付」「オンライン寄付」という言葉が使われることもありますが、特に「少額」である必要もなく、またインターネットを利用して集めることも、クラウドファンディングの必要条件ではありません。
しかし、現在ではインターネットを利用することが多いことと、一般の人々から集める場合、どうしても投資家のような大きな金額を支払うことは少ないため、結果として「多くの人から少額を集める」ことが多くなっています。
(つづく)
山本純子(やまもと・じゅんこ)
株式会社アーツ・マーケティング代表。1997年、慶応義塾大学文学部美学美術史学専攻卒業。
大学在学時よりゲーム業界に携わり、主にオンライン・ゲームのマーケティング、調達、事業開発等に従事。
2009年、慶応義塾大学大学院アート・マネジメント分野修士課程に入学。同年末にITの力で芸術を広めるために(株)アーツ・マーケティングを創業。
2011年、修士課程修了後よりクラウドファンディングの研究を始め、慶応義塾大学SFC研究所上席所員(訪問)を経て、現在、企画・コンサルティング・事業開発、および講演・レクチャー等に取り組む。
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