ヘッドハンティングにおける、ターゲットを特定する2つのパターンヘッドハンターが明かす転職事情ウソ・ホント!?(2/2 ページ)

» 2014年04月03日 08時00分 公開
[楠田正司(プロフェッショナルバンク),Business Media 誠]
誠ブログ
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企業ロイヤリティは低いが、メンバーロイヤリティは高い日本人

 そこで、われわれヘッドハンターが代理人としてスカウト活動を行うことになる。依頼主がピックアップしたターゲットと接触し、「まずは情報交換を」という話から、本当にその人がターゲットの人材か、転籍の可能性の有無などを確認していく。当然、転職希望者ではないので、最初から可能性が高い人はほぼいない。

 そんな状況でも、転職という大きな決断をする人がいるのはなぜか?

 その理由はズバリ、現在の会社員には企業ロイヤリティ(会社への忠誠心)が低い人が少なくないということにある。ただし、日本の会社員はメンバーロイヤリティー(一緒に働いている人に対する忠誠心)はとても高い。昨今の会社員の企業ロイヤリティが低い理由は、国際競争や事業環境の変化が激しく、例えば大手メーカーでさえ業績不振になればリストラを行う時代に、現職の会社が家族を含めた自身のことを生涯守ってくれるとは思ってはいないと言い替えられる。つまり、「将来の自分や家族を守るのは会社ではなく自分自身のキャリアである」ことを理解している人は、積極的にわれわれの話に聞く耳を持ってくれる。

 われわれが声をかける対象は30代後半から40代がほとんどであり、昨今の日本の年金政策の行方を考えると、70歳近くまで働き続けなければ自分や家族を守れないという使命感、あるいは悲壮感を持っている世代だ。

国によって違う現役引退の適齢意識

 現に労働政策研究・研修機構の『データブック国際労働比較2013』によると、世界における日本人の現役引退の適齢意識は高く、60歳以下で引退しようなどという人は8%にも満たない。「これからの日本、職業人生は長い」と思う人が圧倒的に多いのではないだろうか。

長期的なビジョンでキャリアと収入を考える

 ヘッドハンティングされて移籍する人材は、そういう意味でも長期的な自分のキャリアプランを熟考して決断を下す人が多い。ここで言うキャリアとは、生涯年収や裁量権、経営に携われる機会などである。

 「今の会社で一生働き続けたら生涯年収はいくらなのか?」
 「企業年金制度や退職金は?」
 「将来、経営に携われる可能性がどのくらいあるのか?」

 などを“現職に留まること”VS“ヘッドハンティング元の企業へ転職すること”を真剣に比較検討して結論を出し、それが現職であればそれはそれで良いことで、他社であればそれも良いことだと捉えているように思える。

 われわれヘッドハンターは、とある企業からあなたと話をしたいという使命を預かり、ある日突然、人生のもう1つの選択肢を運んでくる。最初は明かせない情報も多いため懐疑的な心境になるのは察するに十分だが、最終的に判断するのはターゲット自身なので、もしそういう機会があるなら話を聞く分には損はないだろう。いや、自身の未来や守るべき家族への責任として、現職キャリア以外の選択肢を検討することは絶対に必要ではないだろうか? 今は、現職でひたすら頑張れば会社が家族も含めて守ってくれる時代ではない。自身や大切な家族を守るのは、自身のキャリアだと思う。(プロフェッショナルバンク 楠田正司)

※この記事は、誠ブログヘッドハンティングする時の情報源は何?より転載、編集しています。

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