なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか:公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」(前編)(2/2 ページ)
「アベノミクス効果で景気が上向き」という報道がある一方、景気が良くなったという実感はほとんどありません。先日発売された『なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか』の著者代表で弁護士の倉重公太朗氏に、直接話を伺ってきました。
雇用流動化は「解雇自由化」ではない
眞山:うーん。ということは、解雇しづらいという状況に対して懸念を抱いているわけですよね? 確かに、本書では大きなテーマとして雇用流動化を提唱しています。雇用流動化というキーワードに対して、多くの方はアレルギー反応を示しているような気がしますが、倉重さんたちはあえて雇用流動化を推進すべきと訴えているのは、なぜでしょうか?
倉重:何より問題なのは、雇用流動化を「解雇自由化」という文脈で用いられることです。メディアを見ていると特にそういう表現が多い気がしますが、正直、それは正しくないのです。もちろん、解雇の要件を緩和することも内容には含まれていますが、それ自体を目的としたわけではないのです。
解雇の要件緩和は、いわば“出口”の開放です。雇用流動化は同時に“入口”、つまり採用の間口を広げていくことも含めた考え方だということを理解するべきだと思います。
眞山:確かに、定年年齢の引き上げなど、労働を提供できる期間は少しずつ長期化していますが、一方で企業の寿命は少しずつ短命化しています。そういう意味では、「入口」の拡大を含めた雇用流動化というのは、必要な考え方なのかもしれませんね。ちなみに、高度経済成長期に整備されたこれらの法体系が、社会がこれほど変わったのにもかかわらず改められない、これはいったいなぜだと思いますか?
倉重:高度経済成長期は、当然日本の経済は強かったわけですが、今でも日本経済は相対的には強さを維持しています。言ってみれば、過去の遺産を食いつぶすことでやっていけている時期ではないかと思います。しかし、それがずっと続くわけではないのです。
今は、整理解雇も企業がだいぶ追い込まれたタイミングにならないとできない。会社を立ち直らせたり、新しい成長戦略を描いて成長産業に人を流入させるためには、本来はそれでは遅いのかもしれません。今後、人員整理に関して遅きに失したがために倒産するという事例が加速度的に増えてしまうのではないか、人材が滞留し成長産業に人が集まらず、国際的な競争力が失われてしまうのではないかという懸念をしています。
だからこそ、早めに労働力の移動を可能にする雇用流動化が大事ではないか、と思うのです。
後編では、新しい労働法の姿として、倉重氏らが提唱している7つの処方箋について、詳しく伺います。(眞山徳人)
※この記事は、誠ブログの公認会計士まーやんの「ロジカるつぼ」:【著者に訊く】「なぜ景気が回復しても給料は上がらないのか」倉重公太朗氏インタビュー 1/2より転載、編集しています。
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