TOEIC受験の第一人者に聞く――社会人にとってのTOEICの意義とは?:ヒロ前田氏に聞くTOEIC対策(4/4 ページ)
グローバル対応の名のもと、英語力を測る上でのTOEICの在り方があらためて問われている。長年TOEIC受験対策を手掛けてきたヒロ前田氏に、詳しく話を聞いた。
ヒロ前田氏とTOEIC
まつもと なるほどよく分かりました。TOEICについて単なるテストという見方からかなり視野が広がったと思います。先生はなぜTOEICとこのように向き合うようになったのでしょうか?
前田 私はもともとはアルク(語学教育の出版社)の社員で、TOEIC対策講座などイベントのプロデュースを行う立場でした。でも、私の師匠であるロバート・ヒルキ氏はじめ、さまざまな方々を招いて講座を運営する間に、自分でも教えたくなってきてしまったんです(笑)。
そして、2006年に、TOEICの形式そのものの大転換が起こったんです。写真描写問題――写真を見て、正しい文を答える問題――が大幅に減り、誤文訂正問題が無くなり穴埋め問題に、長文問題に、送受信したメール文面のように2つの文章を見ながら答えるものが加わった。なによりも大きかったのは、グローバル化の波を受けて、リスニング問題の発音が米国のものだけではなくなった点ですね。
これは関係者にとっては明治維新並のインパクトで、既存の教材が全て過去のものになってしまうというものだったんですね。ヒルキ氏と一緒にその記者発表の現場に幸運にも居合わせて、「よしすぐ対策本を作ろう」ということになり、初の共著書を出したんです。その結果、TOEICについてはあいつに聞け、ということに社内外でなってきた。
ちょうどそのころ――2006年ごろですが、ブログがブームとなり個人が手軽にメディアを持ち情報発信ができるようになりました。もともと起業志向があり、Web全般についての猛勉強をそこから始めました。昼はTOEIC、夜はWeb、という具合でしたね(笑)。そうやって、自分のブログやメルマガでイベント集客も始めたんです。最初のころは数人しか集まらなかったですが、徐々に増えていきました。そして2007年の春に「時は来た!」と考え、独立しました。現在は、こちらの問題集の執筆や個人向けの講座・合宿の他、企業に出向いてTOEIC対策の講習を年10回ほど行う、ということもやっています。
まつもと TOEICの変化とネットの進化の両方の波をつかんだ、という感じですね。最後に、Business Media 誠の読者へのメッセージをお願いします。
前田 TOEICのようなテストなども活用しながら、英語の運用力を高める、ということは相手との対話力を高めることでもあります。特に英語の場合は、お互いがノンネイティブで下手な英語を使いながら、お互いが言いたいことや伝えたいことをやりとりすることになります。それって突き詰めれば言語力ではなく、対話力なんです。
日本人同士の「推して知るべし」という方法論は、世界では通用しません。僕自身、大学時代ディベート部で鍛えられたのですが、相手に理解されるために自分のスタンスを明確にする、大事な事からはっきりと伝えるといった術をぜひ身に付けてください。僕自身もTOEIC対策を入り口にしながらも、グローバル化に必須なスキルとして対話力を伝えていきたいと思っています。
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