語学は不要? 海外求人の最前線:ヘッドハンターが明かす転職事情ウソ・ホント!?(2/2 ページ)
「英語はできます。でも海外生活の経験はありません」という人材を、海外赴任の要員として中途採用する日系企業が増えている。それどころか、外資系企業では海外経験も語学力も問わないというところもある。海外求人の現場で何が起こっているのだろうか?
“理想の人材”は海外赴任経験者
これらの求人企業、いずれも採用したい“理想の人材”は海外赴任経験者である。赴任国がタイであれば、「タイでの赴任経験者がベストであり、マレーシアやシンガポールなどの近隣国であればベター」というのが企業の要望になる。現地人の商習慣や志向を把握できているかどうかは、実は海外拠点運営の成功を左右する最大の要素であり、赴任国や隣国での在住経験は武器となる。この条件を怠って管理者を派遣すると「工場でストライキが起きて生産ラインが止まった」とか、「日本から来た営業マネージャーの指示に誰も従わない」などという事態になって、慌てて“現地に明るい人材”を探すハメになる。そういう意味では、海外赴任の経験があればあるほど、売り手市場になれる状態なのである。ただし、これはあくまで“理想の人材”という話。
では現実は? というと、冒頭のような「英語はできます。でも海外生活の経験ありません」という人材でもOKという企業が出てくることになる。その理由は、求人の総数に対して海外経験者の数が追い付いていないという現状があるからだ。先ほどと同じく、外務省の統計では、2013年の民間企業で働く海外赴任者数は26万3人と、2012年比8%増、2011年比12%増と、増えてはいるものの求人数の伸び率には到底追いつかない水準となっている。結果、海外赴任経験者の獲得競争が激しくなり、海外未経験でもポテンシャルで採用しようという企業が出てくるわけだ。
そういう会社が海外未経験者を採用した場合、まず日本本社の経営企画室や海外事業部に配属させる。この場合の必須条件は英語力だが、実務を通して現地とのやり取りに携わり、頻繁に出張で日本と現地を往復しているうちに“現地化”していくことを狙っている。30歳前後まででやる気のある人材に対しては、このような求人が意外に多い。ちなみに、ここで言う英語力はTOEICに換算すると最低でも800点はないと難しいレベルだ。
海外経験も語学力も問わない職種も
一方「海外経験どころか語学力もありません」という求人も、リーマンショック後は増加した。これは、外資系企業がエンジニアや研究者などの技術職を求める場合である。この場合、高度なコミュニケーションスキルよりも専門職へのスキルを問われることが多いので、気の利いた会社では、生活に不自由がないように専属の通訳担当者をつけてくれたりする。特に経済成長が著しいアジアの新興国では、日本から優秀な技術者を雇い入れて、商品開発力の底上げをしたいという会社が多いため、専門性の高いスキルや経験を持っていれば、ときには50〜60代でもOKという企業もあり、まさに腕一本で世界を渡り歩けるという状態である。
いかがだろうか? このような背景で昨今は、海外赴任経験や語学力がない場合でもグローバルに活躍できるチャンスが転がっている時代なのである。もちろん前述したように、求人企業の“理想の人材”は海外赴任経験者である。そのことを考えても、未経験から海外へ行ける機会を掴み、海外赴任を1度経験することで将来の転職市場価値を高められる機会は貴重だと言える。
ただ、転職先が日系企業か外資系企業かの違いは非常に重要なので、転職の際には気を付けてもらいたい。なぜなら、日系企業の場合は、海外赴任が終わればまた日本拠点で働くことができる可能性が高いのに対し、外資系企業での海外赴任は片道切符の場合が多い。その分、日系企業に勤めるより年俸はずば抜けて高かったりするので、将来のキャリアプランやリスクなども勘案して転職に挑んだほうがいいと思う。(プロフェッショナルバンク、福良英基)
※この記事は、誠ブログの語学は不要? 海外求人の最前線より転載、編集しています。
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