MVNOを含めた戦いはドコモの独り勝ち――3キャリアの決算を読み解く:石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)
大手3キャリアの第3四半期決算は、増収増益と好調だ。一方で格安スマホへの流出は続いており、解約率の低下が大きなテーマとなっている。今回の決算はから読み取れることは?
SoftBankで守り、Y!mobileで攻めるソフトバンク
ソフトバンクグループの決算には、米キャリアのSprintやYahoo!JAPANも含まれるが、国内通信事業だけを抜き出してみても、増収増益を達成している。孫正義社長も「国内通信は順調」と胸を張る。孫氏は「回線数も伸びている」と話し、通信モジュールなどの回線を含まない主要回線の契約者数は、3223万に達したことを明かした。ただし、第3四半期単体で見ると、ソフトバンクの主要回線数は、7万の純減を記録しており、ARPUも徐々に低下している。増収増益の内訳を見ても、モバイルの減少を「SoftBank光」などの固定が補っていることが分かる。
同社は、ソフトバンクとY!mobileの内訳を公表していないが、両ブランドの勢いを見る限り、ソフトバンクはマイナスなのに対し、Y!mobileが他社からユーザーを獲得する武器になっていることがうかがえる。ソフトバンクと比べ、Y!mobileは料金も安いため、これによってARPUを押し下げる効果も出てくる。Y!mobileは、いわゆる格安スマホで4割のシェアを取っているようだが、ソフトバンク全体として見ると、素直に喜べないのが実情だろう。
SoftBank光などの導入によって解約率も徐々に低下してはいるが、全体で1.25%、携帯電話に絞っても0.89%と、ドコモやKDDIに比べても高い水準にある。端末の販売台数は微減。新規契約分がガイドラインの影響で135万6000台から107万2000台へと落ち込んだ分を、機種変更でカバーできなかった。こうした数値からは、Y!mobileが好調な半面、稼ぎ頭であるソフトバンクブランドにとどまるユーザーの率が他社より低く、MVNOなどへの流出が起こっているという見方ができる。
ARPUの低下に対し、孫氏は「各社が競争をすれば料金も下がる。ARPUについては、常にマイナスになるプレッシャーがあり、同じサービス、同じ内容であれば安くする力が、競争によって働く。それは当然のこと」と語っている。これに対して、ソフトバンクが取る戦略は、「メニューの多様化」と「通信容量自体の拡大」にあるという。
前者は、サービスの拡大を意味しており、先に挙げたSoftBank光だけでなく、最近ではYahoo!JAPANとの関係を強化し、Tポイントを増やすキャンペーンを実施した。結果として、「まだ始まったばかりだが、速報レベルだと非常にいい結果が出始めている」(孫氏)という。後者の通信容量の拡大は、単価の下落を量でカバーするという戦略で、「動画などを含め、使いたい人に量を提供する。単価は安くなるが、量を提供するメニューを用意するという努力をし続けなければならない」(同氏)。
一方で、MVNOとY!mobileの競争は激化しており、今後は日本通信もソフトバンクのMVNOに参入する。同社の狙いは、ソフトバンクの過去のiPhoneを使うユーザーだ。ここに対抗するためには、Y!mobileのさらなる強化も必要になってくるだろう。ただ、見方を変えると、Y!mobileの比率が高まるのは、ソフトバンクそのものが値下げしていることとイコールでもある。自らの収益を削って戦わなければならないのが、ソフトバンクの弱みといえるかもしれない。MVNOまで含めたトータルでの戦いでは、ドコモ独り勝ちの図式も見えてきた。
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