パチンコ屋でも聞こえる通話、セキュリティの機能強化は「趣味です」――富士通ケータイの作り方Symbian Summit Tokyo 2007

» 2007年11月08日 11時41分 公開
[後藤祥子,ITmedia]
Photo 富士通の携帯開発陣を率いるモバイルフォン事業本部長の佐相秀幸氏

 「『富士通のケータイ、どうしちゃったの? 雑誌に載ってたじゃない』という話を聞くようになった」――。富士通の端末開発を率いるモバイルフォン事業本部長の佐相秀幸氏は、Symbian Summit Tokyo 2007の公演中、こんなエピソードで生まれ変わった富士通ケータイをアピールした。

 少し前までの富士通携帯について佐相氏は「下回りの技術をきちっとして、そのまわりにプラスチックをつけよう――というスタンスがあったことは否めない」と振り返る。しかし、デザイナーズケータイ「F702iD」の開発を契機に、“お客さんが求めるものは何だろう”と考えるようになったという。「あたりまえだと思うかもしれないが、富士通はそういうことに弱い体質だった。ここで“そうじゃない”とマインドを“デザインありき”に切り替えた」(佐相氏)

 これに伴い、開発体制も刷新し、「“まず、技術ありき”の事業部門の企画と、“紙の上の話ばかりで地に足がついていない”営業部門のマーケティングを統合し、“ものづくり”ができる体制を整えた」と佐相氏。これが功を奏し、「骨太な端末を作れるようになった」と胸を張る。「ヨコモーションや防水、指紋認証、セキュリティ、ユニバーサルデザインなど、富士通がこだわって作ってきたところに結果がついてきた」

Photo 開発体制を刷新したことで、セグメントを明確化した“ユーザーありき”の端末開発が可能になったという

 勢いづく富士通がドコモの冬モデルとして開発したのが「F905i」「F705i」。「フラッグシップ端末ということで、“歯を食いしばりながら”先進機能やサービスを搭載していく」と意気込む90xiシリーズの最新モデルF905iは、前モデルのF904iよりディスプレイが大きくなり、解像度もフルワイドVGAに向上。「(仕事を超えて)趣味になっている。さらにさらに深掘りしていく」(佐相氏)というセキュリティ機能の強化も、プライバシー機能の追加という形で実現している。

 また、通話時相手の声を強調して聞き取りやすくする「スーパーはっきりボイス」と「はっきりマイク」を90xi系端末に始めて搭載するなど、らくらくホンの技術を始めて他のシリーズに展開した。「携帯電話の原点に立ち返って、“聞く、話す”をしっかりやった。開発スタッフがパチンコ屋で実験したところ、よく聞こえたと言っていた」(佐相氏)

 F705iは、防水機能を搭載した前モデル「F704i」をさらにスリムにした端末で、佐相氏は「パッキンの分が上と下にそれぞれ1ミリ強あって、パッキンを抜けば10ミリくらいになる」といいわけしつつ、防水でありながら他社と遜色ない薄さが自慢だとアピール。70xiシリーズでは、“あれもこれも”追うのではなく、セグメントや機能をはっきりさせた端末を開発する方針で、「万人受けはしないが、とがった機能が欲しいというニーズに答える商品開発を進める」とした。「防水は全ての人が必要とする機能ではないが、欲しい人に向けてはっきりセグメントしたモデル」

 同社はまた、看板モデル「らくらくホン」シリーズで知られるユニバーサルケータイを、幅広い世代向けに展開することも検討しているという。「年配の人だけがユニバーサルケータイの使いやすさを求めているとは限らない。“ゆりかごから墓場まで”という言葉があるが、小さい子供からシニア層まで、世の中の役に立つような携帯を開発していきたい」(佐相氏)

Photo ハイエンドモデルの「F905i」

Photo ミッドレンジモデルの「F705i」とユニバーサルケータイ「らくらくホンIV」

端末開発は、「土台と協業の観点からうまく協調することが重要」

 ユーザーに受け入れられる端末作りが可能になったのは、「土台と協業の観点から協調してきっちりやれたことが大きい」と佐相氏。ドコモのSymbian端末の開発では、チップはSH-Mobile Gシリーズ、OSはSymbian、ミドルウェアはMOAPが用意され、端末メーカーは「アプリケーションやミドルウェアのエンジン、キーコンポーネントをサクサク創れる」(佐相氏)環境であることがその理由だ。

 SH-Mobile Gシリーズは、コスト削減を目的に開発されたチップセットで、「無線処理からマルチメディア処理、OSミドルドライバまで一気通貫のプラットフォーム」としてスタート。これが「人に言えないくらい開発コストがかかり、1社ではどうにもならない」(佐相氏)という苦境から端末メーカーを救ったという。ドコモ、ルネサス、三菱電機、富士通の4社でスタートした協業にシャープとソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが参加し、今では6社で開発を推進。“端末メーカー4社でうまくいくのか”という話もあるが、「プラットフォームや基板技術など、各メーカーの独自機能に直接影響しないところにフォーカスしているので、けんかしながら仲良くやっている。うまくいっている協業ケース」だとした。

Photo Symbian端末の開発構成。OS、ミドルウェア、チップセットが共通化されており、端末の差別化ポイントは外部デバイスやアプリケーション、デザインとなる

コンバージェンスが進む日本市場、「携帯の将来は明るい」

 FOMA開発をスタートしてから7年の富士通は、2001年にSymbian OSの採用を決めたという。理由は「土台がしっかりしていることと、カスタマイズ性に優れること、ISV(独立系のソフトウェアメーカー)やIHV(独立系ハードウェアベンダー)がついてきてくれるだろうと予想したこと」の3つだ。

 今後のSymbianに期待することとして佐相氏は(1)日本市場のニーズに対応する機能の拡張とサポート(2)グローバル展開のサポート(3)開発者育成プログラムの拡充 を挙げ、「コスト減にも協力をお願いしたい」と付け加えた。

 また、ISVやIHVには、「まだPCのような水平分業は道半ばであるものの、可能性がたくさんある。アプリや周辺デバイス、既存のレガシーデバイスなどは端末の差別化ポイントとして重要で、ここが携帯の発展の鍵になり、エンドユーザーに使ってもらえる鍵になる。うちだけに限らず、Symbian陣営に提案することで横展開の可能性が広がる」と、協業を呼びかけた。

 今後の携帯電話市場については「予測がつかない大きな成長を遂げるのは確実」と佐相氏。スーパー3Gの下り最大100Mbpsの高速通信がモバイルに必要なのかという議論もあるが、佐相氏は「PCを思い出してほしい」という。「富士通でサーバやPCを担当していたときに、“何でこんなにメモリやOSの機能、ハードディスクの容量が必要なのか”と思ったこともある。ところがオープンな世界で、とてつもないキラーアプリケーションが出てきたのはみなさんが経験したとおり」

 佐相氏はモバイルの将来は“とにかく、とてつもない”とし、こんな言葉で講演を締めくくった。「携帯の将来は明るい。端末メーカー、ソフトメーカー、ハードメーカー、パートナーの端末メーカー、ドコモ、Symbianとで手に手をとって、WIN-WIN-WIN-WIN-WIN-WINの関係になっていきたい。えーっと今、何回、WINって言いましたっけ(笑)」

Photo Symbianへの要望とISVやIHVへの期待

Photo これまでの富士通FOMAの歩みと今後のケータイのトレンド

  • ↓「防水性がウソだと思われたくない」と講演会場に水槽を持ち込み、自らF704iの防水性能を披露する佐相氏

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