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ミームとしての
モバイル
コンピューティング

 [第10回]

今年のモバイル機器には“Flash”が搭載される?

「Flash Player」をあらゆるモバイル機器に組み込むというのはどうか? 実現すればリッチでファイルサイズの少ないコンテンツがモバイルで再生できるだけでなく,搭載されたスクリプト機能を使ってさまざまな処理を実行することだって可能になる。

【国内記事】 2001年6月14日更新

帯域を使わないリッチなコンテンツ

 ソニー・コンピュータ・エンタテインメント(SCE)とMacromediaは5月23日,家庭用ゲーム機「プレイステーション2」に「Flash Player」を搭載することで合意した。

 FlashのコンテンツはIllustratorなどで生成できるフォーマットに近い,ベジェ曲線で描かれている。アニメーションなどを作成してもファイルサイズが少なくて済むことから,モバイル機器に適している。

 マクロメディアは,FlashプラットフォームをPCだけでなく,テレビ,PDAなどの機器にも展開していく考えだ。モバイル機器への搭載は,高速なCPUを搭載したPDAを中心に進んでいる。既にコンパックの「iPAQ Pocket PC」などにはバンドルされている。

 Macromediaは,Flash Playerを全世界のWebブラウザユーザーの96%が使用していると発表している。

Flashムービーだけを制作するプロダクションもある

 しかし,“Flashコンテンツ”というとURLを叩いた際に強制的に再生される,イメージビデオ風ムービーの悪い印象が強いかもしれない。また筆者は,どう操作したらいいのか分からない独創的なインタフェースに頭を悩ませることも多い。

 表現の幅が広いFlashは,デザイナーたちの理想的なツールであり,こぞってFlashコンテンツを制作しその腕を競っているわけだが,残念なことに良質な作品の数はまだまだ少ないのが現状なのだ。

 米国ではFlashでムービーを制作するプロダクションが存在する。その中でも筆者が気に入っているのが「Honkworm.com」の「Fish Bar」だ。

 これは魚を主人公にした短編アニメで,アナログモデムでも音声はとぎれることなく,またアニメもスムーズに再生できる。決してリッチではないのだが,非常に面白い。帯域が狭くても楽しめるコンテンツは作れることを証明している。

 また,ストリーミング配信の米Atom FilmsとMacromediaの100%子会社であるShockwaveは提携し「Atom Shockwave」(日本法人はアトムショックウェーブ)を設立。MacromediaのFlashなどのコンテンツプラットフォーム技術を使って制作された作品を専門に配信している。既に,映画監督のティム・バートンの作品など強力なコンテンツがラインナップされ,今後が期待されている。

フロントエンドソリューションとしてのFlashの可能性は?

 Flashは単なるアニメーションプレーヤーとしてだけではなく,スクリプト機能を使ってあらゆる処理を実行できる。コンテンツを表示するためのユーザーインタフェースを作ることも可能だ。簡単なOSのような仕組みを作ることもできる。

 Javaでも同様のことが可能だが,Javaの開発には時間が掛かる。Flashのスクリプトには機能制限が多くあるが,同じ機能を開発するなら,Javaとは比較にならないほど短期間に実現できる。

 日本人向けの投資情報を配信する米Step.com Communicationsは,コンテンツ全てをFlashおよびOlacleのOracle9iで開発。Flashとデータベースの連動にMacromediaのFlash Generatorを使用している。

 このサイトでは,ニュースと会社情報,そしてチャートなど様々な機能が有機的に連動している。コンテンツは細かい単位に分断され配信される。ページ全体をダウンロードするということがないので,インタラクションごとのデータ伝送量が少なくて済む。

 百聞は一見に如かず。一体どういうことか,実際にサイトを見てもらいたい。

Flash再生可能ICチップの登場が期待される

 大多数のモバイル端末,特にブラウザフォンなどに搭載された非力なCPUでFlashコンテンツを再生するのは,正直にいって難しい。しかし同じことがMP3再生,ムービー再生でもいえる。メーカーはリッチなコンテンツを再生するために専用のICチップを搭載することで解決している。

 松下などがFOMA向けに開発したMPEG-4デコードチップもそうだし(2月6日の記事参照),ソニーのPalm OSデバイス「PCG-N700C」でも,ATRACフォーマット対応の再生用チップが内蔵されており,非力なCPUに頼らずリッチな音楽再生を実現している。

 こういった方向は,モバイルの可能性を飛躍的に拡張するものであり,歓迎されるべきだろう。話がそれるが,モバイル向けコンテンツの中長期的展望を予測したいなら“組み込み機器”市場をチェックすればいいともいえる。

 このような流れの中,Flashのモバイル対応は,意外なところから始まるかもしれない。

 TIとRealNetworksは「Open Multimedia Applications Platform」(OMAP)とDSP(Digital Signal Processor)チップに,RealNetworksの「Real Player」を統合する。

 既にRealSystemにはFlashの技術が組み込まれている。このDSP ICチップがモバイル機器に搭載され始めれば,事実上Flashコンテンツが再生できるということになるだろう。

 なお,Real Player対応のDSPを搭載した製品は,2001年中には市場に出回る見込み。今後の動向に期待したい。

[増田(Maskin)真樹,ITmedia]

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