日本市場へ攻め入る海外メーカーたち――そのとき、国産ケータイは:ITmediaスタッフが選ぶ、2009年の“注目ケータイ&トピック”(編集部田中編)(2/2 ページ)
2009年は、個人的にはiPhoneデビューしたことが大きなトピックだった。携帯市場に目を向けると、海外メーカーが日本で勢力を拡大する転機を迎えたと感じている。一方、国産ケータイは大きな話題は乏しかったものの、着実に進化、そして深化を果たした。
国産ケータイならではの使いやすいタッチパネル――「933SH」「940SH」「941SH」
海外でもフルタッチケータイが増えているように、日本でも2009年はタッチパネルを搭載したケータイが多く登場した。その中でも筆者が特に使いやすいと感じたのが、ソフトバンクモバイルのシャープ製端末「AQUOS SHOT 933SH」「AQUOS SHOT 940SH」「AQUOSケータイ FULLTOUCH 941SH」だ。
これら3機種が使いやすかったのは、まずタッチパネルの感度がよいこと。項目をタップするとすぐに反応し、画面をなぞるとスムーズにスクロールする。このレスポンスのよさは国産ケータイの中では最もiPhoneに近いと感じた。そしてもう1つが、タッチパネル用にUI(ユーザーインタフェース)を改良したことだ。待受画面や各種操作画面にタッチ専用アイコンを用意、待受画面にショートカットアイコンやウィジェットを設置、項目をタッチで選びやすいよう大きな文字を採用するなど、日本のケータイならではのきめ細やかな工夫が光った。
とはいえ、タッチパネルの仕様自体は2008年に発売された「AQUOSケータイ FULLTOUCH 931SH」から大きく変わっていない。タッチ操作による文字入力にフリック操作を採用したり、ピンチイン・アウトで縮小と拡大できる機能を増やすなど、もう少し大きな進化も見たい。また、941SHは現行のタッチパネルケータイでは特に高いスペックを持つが、931SHがベースになっていることもあり、1年前に931SHを初めて見たときほどのワクワク感は得られなかった。
例えば、「インターネットマシン 922SH」が正統進化したタッチパネル対応機が登場したらどうだろう。シャープがドコモ向けに「SH-04A」と「SH-03B」、ウィルコム向けに「WILLCOM 03」を供給したのは、タッチパネル+QWERTYキーのニーズは確実にあると各キャリアが判断したからだろう。より万人に向けたモデルが求められるドコモが発売したのだから、ソフトバンクも……と期待してしまう。同社のソフトバンク向けタッチパネル端末は今後も「AQUOSケータイ FULLTOUCH」を継承するのか、それとも全く新しい形を採用するのか。922SHや931SHのように「おお!」と思わせるモデルの登場に期待したい。
“デザインのau”が復活しつつあるau端末
KDDIの小野寺社長が「auらしさが失われていた」と話したように、ここ数年のau端末は、どこか無骨なデザインの機種が多かったように思える。しかし2009年は、かつてのauらしさが息を吹き返し、洗練されたデザインのモデルが増えたと感じた。特に筆者の琴線に触れたのが「Cyber-shotケータイ S001」「PLY」「BRAVIA Phone U1」「SA001」だ。
S001は、ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズが海外で発売した「Idou」を彷彿とさせるエキゾチックなデザインや、高級感あふれる本体色「オリーブ&ゴールド」に引かれた。10月には新色も登場し、息の長いモデルとなっている。auの新ブランド「iida」に属するPLYは、着色の異なる5層を積み重ねたデザインや、アドレス帳のインデックスを連想させる「タブキー」が斬新だった。BRAVIA Phone U1は一見するとオーソドックスな折りたたみ端末だが、奥行き感のあるレッドの背面パネルが美しく、印象に残っている。久々に登場したSAブランドのSA001は、厚さ約11.9ミリという薄型ボディに技術の粋を感じた。
デザインの満足度は高かったau端末だが、キーレスポンスはまだKCP端末に及ばず、失われた機能やKCP端末からキャッチアップできていない機能もある。2010年はソフト面の進化にも期待したい。ともあれ、2009年のau端末はドコモとソフトバンクモバイルよりも数は少ないものの、端末ごとのコンセプトが明確だったと感じた。「どこかで見たことのある機種」を乱発するよりも、数を絞り、各ユーザー層に合った製品を確実に投入する方が健全ではないだろうか。
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