これまでとは違う“ノンPC”の世界を作る――UQが見据えるWiMAXの未来(1/2 ページ)
まもなく商用サービス開始から1周年を迎えるUQコミュニケーションズが、2010年度の事業プランを説明。WiMAX対応ルータを追加してWiMAX製品を拡充するとともに、2010年度までに基地局を8000局増設する。
7月1日でUQ WiMAXの商用サービス開始1周年を迎えるUQコミュニケーションズ。同社は6月7日に開催した記者発表会で、2010年度の事業プランと今後の戦略を説明した。
ストレスのない高速通信がUQの生命線
6月14日に同社顧問から代表取締役社長に就任予定の野坂章雄氏は「UQの価値を世間に伝え、少し停滞感のある日本の市場になんとか風穴を空けたい」と意気込みを話した。同氏が「UQの生命線だ」と強調するのが「ストレスのない高速通信」。「PCを起動したらすぐにつながる快適さは、体感しないと分からない。日経BPの顧客満足度調査では、速度と料金でUQが1位という結果も出ている」と同氏は胸を張る。サービスを認知してもらうためには売り場の環境も重要になるため、「家電量販店の売り場も拡大し、UQの価値を伝えて売り込んでいく」(野坂氏)。
UQ WiMAXの加入数は、2010年5月現在で19万2600だが、2010年度末には80万に増やすことを目指す。そのカギを握るのが「エリア」で、「顧客満足度調査で唯一悪かったのがエリアなので、最大の課題として取り組んでいる」と野坂氏も意気込む。UQは2009年度までに7013局の基地局を開設したが、2010年度には8000局を増やし、計1万5000局とする見通しだ。特に首都圏の通勤路線のエリアを重点的に整備する。
WiMAXの実効速度改善にも積極的に取り組んでおり、現在の下り最大20Mbpsから、2010年8月には30Mbps、12月には40Mbpsへと高速化する計画だ。「LTEの通信速度は下り最大37.5Mbpsなので、UQがシステム最速となる」と野坂氏も胸を張る。さらに、2012年の商用化を予定しているWiMAXの次世代規格「IEEE802.16m」では、下り最大330Mbps、上り最大112Mbpsの速度を実現する見通しだ。
WiMAX対応ルータ「WiMAX Speed Wi-Fi」を拡充する
WiMAXを利用できる製品には、データ通信端末やWiMAX内蔵PC、無線LAN(Wi-Fi)機能を内蔵しているWiMAX対応ルータが含まれる。WiMAXルータがUQ製品に占める割合は現在10%ほどだが、UQは新ブランド「WiMAX Speed Wi-Fi」を立ち上げるとともに新製品も追加し、ラインアップを拡充する。今回はモバイルタイプでは、シンセイコーポレーション製の「URoad-7000」とソフトアンドハード製の「Egg iWWR-1000J」、据え置きタイプではNECアクセステクニカ製の「AtermWM3400RN」とアイ・オー・データ機器製の「WMX-GW02A-BK」を新たに発売する。
URoad-7000のボディサイズは約104(幅)×14.8(高さ)×62(厚さ)ミリ、重さは約117グラム。バッテリー使用時間は約3.5時間、同時接続台数は最大5台。ボディカラーは3色を用意。発売は6月の予定。
Egg iWWR-1000Jのボディサイズは約110(幅)×28.3(高さ)×61.8(厚さ)ミリ、重さは約130グラム。バッテリー使用時間は約5時間、同時接続台数は最大7台。ボディカラーは5色を用意。7月9日に全国のヤマダ電機主要店舗などで発売する予定。価格は1万9800円。
AtermWM3400RNのボディサイズは約67(幅)×94(高さ)×35(厚さ)ミリ、重さは約140グラム。同時接続台数は最大10台。発売は7月下旬の予定。
イー・モバイルの「Pocket WiFi」をはじめ、他キャリアもモバイルルータを発売しているが、野坂氏は「WiMAXの通信速度は最大40Mbps。3G回線を使う他社のルータは下り最大7.2Mbpsなので圧倒的に違う。我々はスピードをウリにしていきたい」とWiMAXの優位性を強調した。
NECアクセステクニカ 代表取締役執行役員社長の中村隆介氏は、同社の新製品AtermWM3400RNについて、「ボタンを押すだけで簡単に無線設定ができ、自動更新にも対応するなど、簡単機能を充実させた」とアピール。UQではWiMAX機器追加オプションとして、2台目以降のWiMAX対応機器は月額200円で利用できることにも触れ、「回線工事をせずに簡単にブロードバンド環境を構築できるのも魅力だ」と利便性の高さを強調した。
デジカメやゲーム機にもWiMAXを搭載したい
野坂氏は、UQが目指す今後の成長戦略に「携帯電話モデルとの差別化」「オープンモデルの加速」「グローバル展開」を挙げた。
「固定サービス並みの高速通信を持ち出せるようにしたのがWiMAX。ケータイとは違い、もともと音声サービスを提供していなかったことを生かして差別化したい」と説明。また、現在UQ WiMAXを利用できるデバイスはPCが多くを占めているが、今後はデジタルカメラや携帯ゲーム機など、PC以外のデバイスにもWiMAXモジュールを搭載していく構えだ。「音声サービスも、アプリケーションの1つとして展開することを考えていきたい」(野坂氏)
同社代表取締役社長から6月14日に取締役会長に就任予定の田中孝司氏は、「WiMAXはネットワークの遅れが少ないことが3Gケータイとの大きな違い。WiMAXでSkypeをすれば(3G回線よりも)映像の乱れが少ないといった特長が、新たなアプリケーションを生むきっかけになる。これまでとは違ったノンPCの時代が作れる」と期待を込めた。
海外展開についても、国際ローミングなどを積極的に進めていく考え。米国のClearwire Communications(35都市)やロシアのYota(6都市)をはじめ、WiMAXは世界148カ国でサービスを展開されている。今後は韓国や台湾など、アジアでもサービスが始まることを受け、ローミングエリアを拡大していく。
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