次世代インフラへの移行を見据え、通信事業者のトップが新入社員を激励
新年度が始まり、通信事業者各社も新入社員を迎えた。震災の被害からの復旧を経て、復興へと向かう中、各社とも次世代インフラへの投資を加速する2012年度。各社のトップは何を思い、新入社員に何を期待しているのか。
2011年度は、震災と津波の被害からの復旧、スマートフォンの爆発的な広がり、そして通信網の事故の多発などを通して、ケータイ・スマートフォンの重要性と社会に与える影響の大きさが改めて認識された1年だった。
そんな中、2012年度はNTTドコモグループが440人、KDDIは240人、ソフトバンクの通信3社(ソフトバンクモバイル、ソフトバンクテレコム、ソフトバンクBB)には398人(5月にはさらに108人入社予定)、イー・アクセスには41人の新入社員が入社した。各社で開催された入社式では、それぞれの企業のトップが、通信事業者としての使命や社員への期待などを語った。
総合サービス企業へ向けた取り組みを加速――NTTドコモ山田氏
NTTドコモ代表取締役社長の山田隆持氏は、まず東日本大震災で4900局の基地局が被災し、サービスを中断せざるを得なかったことで大変な不便をかけたことを説明。山田氏は「携帯電話が使えないということは被災地のお客様にとって大きな問題となります」と振り返り、ドコモが提供しているのは移動通信サービスだが、それと同時に「安心」や「安全」も提供しており、その確保こそが重要であって、最大の責務であると強調した。そのため震災後すぐに最高レベルの非常体制を取り、4月末までにサービスエリアの復旧を実現したほか、大ゾーン基地局の設置、基地局の無停電化、バッテリーの24時間化、「災害用音声お届けサービス」の導入などを2012年2月末までに実行してきたことを紹介し、ドコモの社会的使命を説いた。今後も社内公募で集まったメンバーで発足した「東北復興新生支援室」を通して被災地域の復興に取り組む。一方でspモードやパケット交換機の障害など、利用者の信頼を損なう事態も起きたことから、信頼回復に向け足下をしっかり固めていく。
またスマートフォンが急速に普及し、データトラフィックが増大する中でも「変わらないものがある」と山田氏。それは「お客様にご満足いただけるサービスを提供することが最も重要」だということだ。「ONE docomo」をスローガンに取り組んできた活動を今後も継続し、一定の評価を得た後も、お客様満足度のさらなる向上に取り組んでいくという考えを示した。今後は多様化するお客様のニーズに対して、より多くのお客様に満足いただくために、端末ラインアップの充実やサービスの提供にも取り組む。スマートフォンの年間累計販売数は、当初目標の850万台を超え、2011年の252万台から3倍以上に膨らんだ。3月11日には契約数が6000万を突破。ドコモはこれまで「モバイルの可能性」を追求してきたが、今後は「ドコモのクラウド」により、モバイルを核とする「総合サービス企業」への進化も目指すとした。
こうしたことを踏まえ、新入社員には「一人ひとりが、会社の夢、 自分の夢に向かってチャレンジしてほしいと思っています。みなさんの熱いハートが、会社を変えるだけではなく、世の中を変えていく原動力になります。一緒にドコモの将来を作り上げて行きましょう」とエールを送った。
途切れない通信と成長が使命――KDDI田中氏
KDDIの田中孝司代表取締役社長も、東日本大震災からの復旧活動に触れ、「災害時に通信が途絶することがどういうことかを改めて実感しました」と振り返った。KDDIの使命は、「通信事業者として24時間365日ネットワークを維持し、お客さまに常に途切れずコミュニケーションという価値を提供すること」だと田中氏。またそれを通して社会の期待に応えるのがKDDIの存在価値だという。普段の仕事の中でも、何のために自分は働いているのかを思い起こし、お客様に途切れない通信を提要することを覚えておいてほしいと話した。
またKDDIの使命として、社会的使命として通信を提供することに加え、それを継続するための「成長」も必要だと説いた。「現状に満足した瞬間、企業の成長は止まると思います」と田中氏は話し、明日のKDDIの成長を支える人間になるよう努力してほしいと期待を表明した。判断に迷ったときは、行動規範である「KDDIフィロソフィー」に照らして正しい道を判断してほしいと田中氏。
「迷ったときはKDDIの存在価値と、その一員としての自分の存在価値は何なのか、我々は何を目指さなければいけないのか、その前提となる自分自身の心構えとしてどうあるべきか、ということを是非とも思い出してほしい」(田中氏)と新入社員への期待を話した。
なんとしても電波対策をやりきる――ソフトバンク孫氏
ソフトバンクグループ代表の孫正義氏も、東日本大震災の経験は、耐えきれないくらいのつらさ、苦しさがあったと話す。「我々が提供する携帯電話サービスで、もう少し電波が届いていれば、一人でも犠牲者が少なくてすんだのではないかと、自分への不甲斐なさと申し訳ないという気持ちでいっぱいになった」(孫氏)
その後一日も早いサービス復旧とつながりやすさの実現のため、基地局の数を18万局にまで増強。さらにプラチナバンドと呼ばれる900MHz帯の周波数の割り当てを受けたことから、「なんとしても電波対策をやりきりたい」と強く宣言した。
孫氏自身は、20代前半には「お金も経験も人脈も、もちろん取引先もお客さまも何もない」状態だったが、「大きな志、誰にも負けない情熱」があり、大病や会社の大赤字などさまざまな困難に何度もぶつかりながらも乗り越えることができたのは、「なんとしても情報革命をやる、そして少しでも世界中の人々に幸せになってほしい、そのためにソフトバンクを創業したという思いがあったから」だと説明。しっかりと情熱を持って、熱い気持ちで挑戦し、皆と一緒に力を合わせてやるんだという思いがあれば、物事を成し遂げることができると力説した。
新入社員には「皆さんが今から10年後、20年後、30年後のソフトバンクグループを引っ張る息吹となれるように、ぜひ自分を鍛えて、自分自身がそして仲間とソフトバンクグループを引っ張っていく、背負っていく立場になるのだという意気込みで頑張ってほしい」と激励した。
LTEで日本のモバイルブロードバンドを変革——イー・アクセス千本会長
イー・アクセスの代表取締役会長、千本倖生氏は、「EMOBILE LTE」が第二の創業と位置付け、2012年度は次世代通信規格LTEで日本のモバイルブロードバンドを変革していくチャレンジの年だと話した。
また東日本大震災への直接的な言及こそなかったものの、モバイルブロードバンドは人々の生活を変える力を持つインフラであると同時に、重要な社会インフラだと説明。「お客さま、ひいては社会の安心と安全のため、いかなる時も高品質のサービスを継続する強固なインフラを維持しなければいけない」と、通信事業者としての使命を改めて掲げた。
「イー・アクセスは、創業当時から、リスクを取って革新的なことを行い成長するベンチャー精神を社風として大切にしている。これまでもみなさんの先輩社員が社風を担い、 ブロートバンド革命を推進してきた。今後は、皆さんが中心となって、第二の創業に向け全力で取り組んでほしい」と期待を表明した。
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