携帯業界「冬の時代」で勝者になるには――通信事業者5社の年頭所感
通信事業者のトップが2010年の年頭所感を表明。ドコモは「変革」と「チャレンジ」の実行、KDDIは“多様性”への対応、ソフトバンクは次期「デジタル情報革命」への取り組み、イー・モバイルはイー・アクセスとの経営統合推進、UQコミュニケーションズは「UQ WiMAX」のさらなる飛躍を掲げた。
NTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、イー・モバイル、UQコミュニケーションズの5社が、2010年の年頭所感を発表した。
2009年11月には携帯電話の累計契約数が1億1000万を突破したが、端末の出荷台数は減少傾向が続いた。一方、「iPhone 3GS」をはじめとするスマートフォンが注目を集め、イー・モバイルやUQコミュニケーションズなどのデータ端末も躍進した。さらに厳しい戦いが予想される2010年を迎え、各社のトップはどのような抱負を表明したのか。
「変革」と「チャレンジ」を実行フェーズに移行する――NTTドコモ
NTTドコモは、2008年10月に中期ビジョン「新たな成長を目指したドコモの変革とチャレンジ」を発表。同社 代表取締役社長の山田隆持氏は、2009年は同ビジョンに基づいて「変革」の取り組みを継続するとともに、「チャレンジ」を実行するための準備期間だったと振り返った。
「変革」の取り組みとして、同社はエリアとネットワーク品質の向上や、アフターサービスの充実、「パケ・ホーダイ ダブル」下限額の引き下げなどを実施。こうした取り組みが功を奏し、山田氏は「解約率が0.5%を下回る低い水準を維持できた。純増数も改善傾向にあり、顧客満足度の向上に手応えを感じている」と述べた。
「チャレンジ」の取り組みは、「BeeTV」など動画コンテンツを充実させたほか、iコンシェルとGPSを連動させた「オートGPS」機能や、自宅にFOMAエリアを構築できる「マイエリア」を導入。日本国内初のAndroid端末「HT-03A」を発売し、スマートフォンの拡充も図った。また2009年3月にインドのTTSL社に出資後、同年6月に「タタ・ドコモ」のブランド名でGSMサービスを開始するなど、海外展開も強化した。
山田氏は2010年を、中期ビジョンで掲げた「2010年度でのお客様満足度第1位」と「2012年度における営業利益9000億円以上」を目指し、「実行フェーズ」へ移行する1年だとした。「変革」の取り組みには「エリア・ネットワーク品質の向上、アフターサービスの拡充、充実した端末ラインアップとサービス・コンテンツの提供」、「チャレンジ」の取り組みには「動画サービスの発展、パーソナル化の推進、ソーシャルサポートサービスの展開、融合サービスの推進、端末の更なる進化、グローバル展開」を掲げた。
端末については「引き続きスマートフォンのラインアップを拡充し、海外事業者が提供するソフト販売ストアと連携した、日本人にとって使いやすいスマートフォン向けの総合マーケットを構築する」と宣言。同社は2010年12月にLTEを導入予定で、高速・大容量・低遅延の特徴を生かしたサービスを提供する。山田氏は「LTEでは“高速通信とFOMAエリアの広さ”を1台の端末で利用できる」と述べ、ドコモならではのメリットを強調した。LTEの対応端末は「2010年12月からデータカード型、2011年にはハンドセット型を提供できるよう準備を進めている」とした。
周囲の変化をキャッチして“多様性”に対応する――KDDI
KDDI 代表取締役社長兼会長の小野寺正氏は、2010年以降は「さらなる多様性の時代」を迎えるとの見解を示した。KDDIはその中で「従来の通信料収入をベースとしたモデルに加え、KDDI本体で展開しているコンテンツ・メディア事業や、国内外のグループ会社が展開している、通信トラフィックに依存しないビジネスモデルの開発に力を入れる」とした。
また小野寺氏は、こうした変化の激しい多様性の時代に立ち向かうにあたり、「問題解決の糸口は、常に外部と接している営業やCS(カスタマー・サポート)の最前線にある」と指摘。「代理店やメーカーなど、周りの変化をキャッチして生かすことが、多様性の時代を迎える第一歩」とした。
「デジタル情報革命」の次期ビジョンを考えたい――ソフトバンク
ソフトバンクグループ 代表取締役社長の孫正義氏は、「iPhoneに代表される高機能スマートフォンが急激に普及し、さまざまなアプリケーションやサービスが開発され、私たちの生活がより便利で楽しいものになった」と2009年を評価。2010年については「ソフトバンクの知恵と知識を結集し、さらにこの流れを加速させ、今まで想像もできなかった、新しいライフスタイル、ワークスタイルを提供していきたい」と意気込みを述べた。
孫氏は2010年にソフトバンクが創業30年を迎えることにも触れ、「この30年間、『デジタル情報革命』というビジョンの実現に向けて取り組んできた。その節目となる今年、次の30年のビジョンを社員とともに考えたい」と述べた。
40Mbpsを超える伝送技術を商用化する――イー・モバイル
イー・モバイルは、2009年春に全国人口カバー率90%を達成。契約者数は2008年に引き続き順調に推移し、11月には累計契約数200万を突破するなど、好調を維持している。同年7月には下り最大21Mbpsの携帯向け高速通信サービスを国内で初めて導入。11月には幅広い場所で無線LAN環境を構築できる「Pocket WiFi」を発売し、新しい市場の開拓に成功した。
イー・モバイル 代表取締役会長兼CEOの千本倖生氏は、「2010年は、イー・アクセスの堅固な財務基盤と、成長著しいイー・モバイルの活力を重ね合わせ、グループ全体の成長戦略を一元的に推進するため、両社の経営統合を進める」と表明。イー・モバイルについては「事業拡大に伴い、単月黒字を達成する見通しであるほか、40Mbpsを超える伝送技術を商用化する予定」とした。
先行する事業者の背中が見えてきた――UQコミュニケーションズ
UQコミュニケーションズは2009年7月に有料サービス「UQ WiMAX」を開始した。基地局整備も2009年末に4752局に達し、社内事業計画の2009年度末計画数6000を超え、7000に達する見込み。現在は全国47都道府県340市町村でWiMAXサービスを利用できる。同年12月には月額380〜4980円の2段階制料金プラン「UQ Step」を発表。インフラとサービスの両面からモバイルWiMAXサービスを軌道に乗せた。
UQコミュニケーションズ 代表取締役社長の田中孝司氏は、「2010年は、これらの成果を武器にUQの飛躍を目指す。先行する事業者の背中も見えてきた。いつでもどこでもインターネット、真のモバイルブロードバンド時代を築いていきたい」と意気込みを述べた。
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