世界品質を武器に、日本市場のニーズに応える――シャープのスマートフォン夏モデル戦略:AV機器・家電連携にも注力(2/2 ページ)
シャープが2012年夏モデルの商品説明会を開催した。消費電力を抑えつつ大画面化と高解像度化を果たした最新の液晶技術や、グローバル品質の新インタフェース「Feel UX」などを搭載している。
Feel UXの完成度に自信を見せるポール氏は、スマートフォンの成否を左右するのはアプリケーションだと話す。
「デバイスが表示するアプリやコンテンツは、ユーザーの興味やつながり、関係を反映したものに他ならない。同じデバイスでもユーザーごとにユニークなデバイスが生まれる。我々のUIは、アプリケーションへのスムーズなアクセスを提供するものだ。スマートフォンの世界は一見すると標準化が進んでいるが、グローバルのスマートフォン革命は始まったばかりで、Feel UXはこの種類のイノベーションにほかならない。Feel UXには明確な目的があり、これまでになかったある種の人間性をテクノロジーにもたらしている」(ポール氏)
Feel Logicを構成する2つ目のポイントが、匠の技のようなきめ細やかな技術で快適さを提供する“Feel Meister”。具体的には、省電力設定を賢く行う「エコ技」、いきなり予測変換や漢字かな混じり手書き予測変換などの日本語入力にこだわった「文辞技」、そしてタッチ操作の反応性を高めてなめらかなスクロールを可能としたダイレクトトラッキング技術などだ。
そして3つ目が、スマートフォンで新しい体験を簡単に楽しめる“Feel Creation”。例えばSH-09Dには、AQUOSで培った最新の映像調整技術である「SVエンジン3」を搭載。色空間の国際標準規格であるsRGBに準拠したナチュラルカラーモードを備え、ディスプレイの特性による色彩の変化を解消することができたという。ネットショッピングサイトで商品を見たときに、PCとスマートフォンで色味が違っている――ということが少なくなるという。またHDRカメラや0.4秒で起動するON速カメラも、Feel Creationを具現化した機能だ。
さらにAV機器や家電、健康器具との連携機能も強化された。AV機器連携では、従来のスマートファミリンクに加えて、より手軽にテレビとSNSに触れられる「おしえてリモコン」を提供。家電連携ではLED照明の操作をスマホでできるだけでなく、シャープのお掃除ロボット「COCOROBO」を操作するアプリもリリースした。健康関連では、健康・医療機器のICT規格であるコンテニュア規格に対応したスマホ専用ミドルウェアを開発。コンテニュア規格に対応した体組成計とクラウド型の健康管理サービス「goo からだログ」と組み合わせることで、スマホを使った健康管理が手軽に行えるようになった。そして、環境問題に対応するため、PANTONE 5に放射線測定機能を搭載している。これも、Feel Creationによる新体験の提供という考えに基づくものといえる。
MM総研が5月に発表した2011年度の国内携帯電話出荷台数では、2005年からシェア1位にあったシャープが3位に後退。7年ぶりに首位の座から陥落した。河内氏はシェア後退について、「フィーチャーフォンからスマートフォンへの乗り換えで、いろいろな変化があった。我々としてはあらゆる手を打ってきたつもりだが、少し不足していたのかもしれない」と振り返った。
国内シェアの挽回をAQUOS PHONEのラインアップ増強で挽回したいシャープ。河内氏は今後の差別化ポイントについて、「細かいニーズにきちっと応える。ローカルフィット、ジャパニーズフィットをしっかりやっていきたい」と意気込みを見せた。また、グローバルメーカーとの競争になればグローバル水準の品質も重要になると述べ、「Feel UXなど日本では生まれない取り組みなどでカバーし、早期にシェアの挽回を図りたい。AV機器との連携も、グローバル勢と戦えるフィールドだと考えている」(河内氏)と補足する。
シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)精密工業と資本関係を結び、スマートフォンの共同開発も明らかにしている。これについて河内氏は「ホンハイグループとの協力関係は積極的に進めていくが、まだ協議中の段階」と、詳しいコメントは避けた。また、現在は主に中国を相手にしている海外展開については「中国についてもホンハイとの協業を協議中だ。またヨーロッパや米国での商談も進めている。発表できるタイミングが来れば、お伝えしたい」と説明した。
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