“強いLTE”実現に向けた取り組みとは――ドコモに聞く、Xiのロードマップ:接続率は「公表しない」(2/2 ページ)
37.5Mbps→75Mbps→100Mbpsと順調に高速化を図っているドコモのXi。契約数も6月末に1400万を数え、3Gからの移行も進んでいる。国内LTEの先駆者ともいえるドコモは、現在どのようなビジョンを持っているのか。基地局、速度、エリア化、次世代通信から、何かと話題の“接続率”までを聞いた。
7月11日からは富士山をLTEエリア化
7月11日から8月下旬までは、富士山山頂と各登山口の登山道や山小屋にて、Xiサービスを提供している。6月に世界遺産に登録されたことで、にわかに注目を集めている富士山だが、LTEエリア化はその前から進められていた。「たくさんのお客様がスマートフォンを使っているところは、しっかりとLTEエリア化していく取り組みの中で、クローズアップして対策を取りました。(エリア化にかかった)期間は半年ほどでしょうか」と平本氏は経緯を話す。富士山のLTE化は、ふもとの基地局から富士山に向かって電波を送信し、山頂や登山道付近の山小屋に設置した機器で受信。その電波を増幅させることで通信が可能になる。
富士山のXiエリアで使用する周波数は、2GHz帯と800MHz帯。山頂が800MHz帯、吉田口の登山口・登山道と山小屋が2GHz帯であり、須走口、御殿場入口、富士宮口はいずれも登山口・登山道が800MHz/2GHz帯、山小屋が800MHz帯となる。通信速度は下り最大75Mbpsと37.5Mbpsのエリアが混在する。
富士山のLTEエリア化の詳細は、以下の動画も参照いただきたい。
目に見えない、快適に通信するための工夫とは
目に見えやすい高速化のほかにも、快適に通信してもらうための工夫にも余念がない。その1つが、6月から運用しているLTE対応の小型基地局装置だ。屋外設置にも対応した小型筐体を取り入れたことで、山間部などにも設置しやすい。「山間部のLTE化は、現状の(基地局)ラインアップでFOMAと同等まで向上できます。山間部は1セクター、都市部は6セクターが多いですが、ビル陰は1セクターで補ったり、都心部でもいろいろな使い分けをして品質を高めています」(平本氏)
6セクターの基地局では、60度ずつ6方向にセルを区切って6局分の電波を発射しており、セクター間の電波干渉が増えやすくなるが、「狭いエリアで干渉を抑えるよう、基地局をチューニングしている」(平本氏)という。
LTEから3G、または3GからLTEに素早く切り替わる「高速ハンドオーバー」は、「初期のLTE端末から導入している」(柳生氏)とのことで、端末側が通信をしていないときに、無駄にLTE電波を探しにいかないよう、ネットワークの制御も行っている。
Xiは800MHz、1.5GHz、2GHz帯といったさまざまな周波数帯で提供されているが、例えば都内で800MHzと2GHz帯が混在する場所では、どのような基準で優先して帯域を選んでいるのだろうか。平本氏は「各周波数の混み具合を見ながら、より高速になる帯域を選んでいます」と話す。
「帯域を探す頻度はネットワーク側で指示できます。端末側が常時電波を探しているわけではありません」(柳生氏)
「今通信している場所の品質が悪くなったときのみ、電波を探しに行きます。端末が測定する回数を減らして、バッテリーが持つような工夫をネットワーク側で行っています。パラメーターの組み合わせは標準の仕様で決まっているので、事業者の工夫によるところはあります。弊社は独自で制御しています」(高橋氏)
とはいえ、ユーザーが能動的に通信しているとき以外でも、実際はSNSやメーラーなどのアプリケーションが高頻度で通信しているので、「そういう動作も踏まえ、それでもバッテリー消費しないよう制御する工夫はしています」(高橋氏)とのこと。
接続率はドコモも算出しているが、公表は「考えていない」
Xiの人口カバー率は2013年3月で77%だが、人口カバー率の算出方法は、ドコモとKDDI・ソフトバンクモバイルで異なる。Xiの人口カバー率は市町村の役場・支所・出張所が所在する地点で通信できるかどうかをもとに算出している。一方、KDDIとソフトバンクモバイルの「4G LTE」では、500メートル四方単位に区分けしたメッシュのうち、サービスエリアに該当するメッシュに含まれる人口を総人口で割った“実人口カバー率”を用いている。
ドコモも実人口カバー率を用いた方が、従来の人口カバー率よりも数字は上がるが、「弊社が提示しているカバー率は、総務省からLTEの開設計画で提示があったものを使っています。勝手な定義で人口カバー率を出しても、お客様を混乱させるだけなので、出していません」と平本氏は説明する。総務省を中心に人口カバー率を統一する動きも出ており、「(カバー率の)定義が決まれば、各社として出していくことになる」と平本氏はみる。
また、快適に通信できることを示す指標として、ソフトバンクモバイルがパケット通信の「接続率」(詳細はソフトバンクのWebサイトを参照)が1位であることを、CMやWebサイトでアピールしている。平本氏は「比較でどうこうは別として、接続率を上げていくことは、移動通信事業者の使命だと思っています」と話し、その重要性を認識している。実際、ドコモもFOMAを開始してから接続率向上の取り組みは継続して行っている。「FOMAも最近までずっとチューニングしていましたし、LTEもさらに品質を上げていきます」(同氏)
ドコモも自社で調べた数字を公表してソフトバンクに対抗すべきでは、とも思うが、数字の公表は「今のところは考えていません」と平本氏。「(接続率は)定義があいまいなので、各社バラバラの基準で都合のいい数字を出してもあまり意味がありません。他社比較ではなく、常に自身の中で上げられるよう継続的に取り組んでいます。(接続率向上への取り組みは)終わりのないものだと思います」
1400万回線を持っていることがドコモの強み
現在、日本ではドコモ、KDDI、ソフトバンクモバイル、イー・アクセスの4社がLTEサービスを提供しているが、ドコモのLTE(Xi)にはどんな優位性があるのだろうか。平本氏は次のように話す。
「弊社は2010年にXiを開始して、現在は1400万契約を持っています。これら1400万回線からトラフィックデータを取れていることは強みではないかと思います。具体的には、端末と基地局はつながって当たり前ですが、周波数効率の良さを出すことは、あまり簡単ではありません。基地局側のパラメーターを変えてチューニングして、割り当てられた帯域を最大限使えるようにしています」
ドコモはXiで「Strong.」というメッセージを打ち出しており、「エリアや品質を、しっかりとお客様に認知していきたい」(平本氏)という想いを込めている。ドコモのLTEはどこまで“強く”なっていくのか。今後の動向も注視していきたい。
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