京セラが米国で好調の理由/3万円未満のタブレットで攻めるNEC:石野純也のMobile Eye(11月11日〜11月22日)その2(1/2 ページ)
今回の「Mobile Eye」2本目では、北米市場でシェアを伸ばしている京セラの戦略と、250グラムの軽量7インチタブレット「LaVie Tab S」を発売したNECのタブレット戦略を取り上げる。
米国でシェアを伸ばす京セラ、人気の秘密は差別化と価格にあり
国内メーカーの多くが海外進出に苦戦を強いられている中、北米市場で着実にシェアを伸ばしているメーカーがある。それが京セラだ。同社は「北米市場の上半期累計シェアは6%で4位」(京セラ 通信機器関連事業本部 マーケティング部長 能原隆氏)と、Samsung、Apple、LGに次ぐ4位につけている。国内市場でも同様の4位で、シェアは10.3%。まだ3位に水は空けられている状態だが、シェアも順位も日本に近くなりつつある。今期は「1200万台の端末出荷を計画している」(同)という。
確かに、北米のキャリアショップや家電量販店をのぞくと、京セラの端末が比較的いい場所に置かれていることが多い。このような実績を出せたのは、ユーザー層を見極め、そこに最適な差別化をしっかりした端末を提供できたからだ。能原氏は北米市場を次のように分析する。
「北米は、収入によるライフスタイルがある程度確立している。(毎月の料金を抑えられる)プリペイドにはインセンティブがつかず、中国メーカーがフィーチャーフォンで伸びていた。その中で、プリペイドでもスマートフォンを使いたいというニーズが高まった。そこで、彼らと同じ土俵で戦うのではなく、差別化に注力した」
北米では、「ポストペイドのフラッグシップと、プリペイドの二極化がさらに進んだ」(能原氏)というように、安価な端末へのニーズが根強いというわけだ。そこに向けて京セラが投入した端末の1つが、防水を備えた「Hydro」シリーズ。日本ではおなじみの防水スマートフォンだが、海外市場ではまだ珍しい機能の1つで反響を呼んだ。能原氏も「日常生活のシーンで水にぬれても安心ということで、好評を博した」と語る。
また、北米は日本市場同様、キャリアの販路が強いマーケットだ。京セラは、ここでも着実に取引先を増やしている。もともとはソフトバンク傘下になったSprintやMVNOに多数の端末を納入していたが、8月には米国1位のVerizonから「Hydro ELITE」が発売。さらに、4位のT-Mobileも初めて京セラ製の端末を法人向けに扱うことになった。
マーケティング活動も積極化し、冒険家のベア・グリルスをアンバサダーに起用。「サバイバル活動を行う同氏のイメージと合致した」ためで、頑丈で水にぬれても壊れない京セラ端末を訴求していく。
こうした“ニッチ”を攻める戦略は、国内でも共通している。実際、京セラはPHS端末のシェアが75%と高く、シェアは1位だ。冬モデルとして、「だれとでも定額パス」に対応した「WX12K」や、ストレートモデルの「LIBERIO 2 WX11K」もラインアップした。また、依然として根強い需要のあるフィーチャーフォンも、KDDIの「GRATINA」が好調。冬モデルとして、多機能なモデルの「MARVERA」も発売する。
一方で、国内で展開するDIGNOシリーズは、「後発なので、これから認知を上げていきたい」(能原氏)状況となっている。冬モデルの「DIGNO M KYL22」はスペックも高く、背面にキーを搭載するなど利便性は高いが、DIGNOシリーズに共通した“これ”という特徴を打ち出せていない印象も受ける。能原氏は「トレンドを追求しながら、スマートソニックレシーバーのような(独自技術で差別化をする)アプローチは変わっていない。これまではCPUのコア数などが商戦期ごとに上がっていたが、5インチ、クアッドコアが一般的になり、お客様の選択の基準も変化するかもしれない」と話すが、ユーザーの隠れたニーズをくみ取って成長してきた会社だけに、フラッグシップの展開をどうしていくのかは課題といえそうだ。
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