新料金プランで「攻めるドコモ」、その現状と今後は?――NTTドコモ 吉澤副社長に聞く(2/2 ページ)
ドコモは6月に携帯電話では初となる完全音声定額サービス「カケホーダイ&パケあえる」を導入し、9月には800万契約を突破した。端末とLTEエリアに続く第3の軸として、料金で新たな競争の口火を切ったドコモ。同社の戦略を吉澤和弘副社長に聞いた。
タブレットの料金プランは「見直しを検討」
―― ITmediaの読者の中には、スマートフォンやケータイとタブレット端末を組み合わせて使う人たちも多くいます。ドコモの新料金プランを見ますと、家族間でのパケットシェアの仕組みはとても合理的でお得感が高いのですが、一方で、ひとりのユーザーがスマートフォンとタブレットを併用するような場合、タブレット側の基本料やパケットシェアへの参加料が高すぎて、せっかくのシェアの仕組みが生かし切れていないと感じます。
吉澤氏 少々厳しいご意見ですね(苦笑)。確かに現状ですと、タブレットはデータプラン使用料にspモード使用料を合わせて月額2000円かかります。
―― さらにパケットシェアの参加費が月額500円ですから、実際には月額2500円ですよね? カケホーダイが付いてくるスマートフォン向けの基本プランが旧プランより値上がりするのは合理性があるのですが、“カケホーダイが付かない”タブレット向けのデータプランが旧プランより基本料が値上がりしてしまっているのは納得感がありません。ドコモがマルチデバイスを推進するのであれば、デバイスプラスくらいの基本料までタブレット向けの料金を下げるべきではありませんか。
吉澤氏 おっしゃりたいことはよく分かります。アメリカだと、(類似した)タブレット向けの基本料が約10ドルといったところですよね。
―― ええ、月額10ドルがひとつのボーダーラインではないかと考えています。日本円で月額1000円で基本料とspモード使用料、パケットシェア参加費が収まって、それでパケットシェアが利用できるというならば、日本でもLTE付きタブレットの新市場が作れるのではないかと思います。しかし現状の月額2500円がミニマムでかかって、それでようやくパケットシェアに参加というのでは、タブレットを軸にした新市場を作りにくい。
吉澤氏 ご指摘いただいたことは我々も認識しています。現時点では、まずは新料金プランをスタートさせなければなりませんでした。しかし今後、マルチデバイスの中でタブレット利用を推進し、その上でdマーケットのコンテンツARPU拡大なども考えると、そのベースとなるタブレット向け基本料金見直しは視野に入れていかなければならない。我々もそう考えて、検討を進めています。
グループ会社の統廃合で営業力を強化
―― 新料金プランでの攻勢に比べるとあまり表に出ませんが、ドコモでは2014年7月から大きく組織体制を変えました。私が知るかぎり、過去を振り返ってもかなり大きな規模での組織改編です。
吉澤氏 過去の大きな組織改編といいますと、2006年に行ったドコモの1社化(地域会社9社の統合)があります。あれはかなり大きく組織体制を見直すものだったのですが、それでも当時積み残した課題がありました。
―― と、言いますと?
吉澤氏 まず機能分担したグループ会社の機能整理です。2006年時点では、ドコモのグループ会社の機能最適化に手が付いていませんでした。そこで今回はグループ会社の体制にも手を入れて、最適化を行った。
―― 特に注力したポイントは何ですか。
吉澤氏 営業力の強化です。営業力とはお客様と接する最前線ですから、ここをもっと強化していかなければならない。そこでこれまでバラバラだったグループ会社を整理統合してまとめあげ、(業務運営の)スペシャリスト集団となる体制を作ることが最大の狙いです。その中核になるのが、ドコモCSという新会社です。
―― グループ会社の整理統合というと「コスト削減」というイメージが強いですが、必ずしもそうではない、と。
吉澤氏 はい、単純なコスト削減ではありません。グループ会社を再編し、フットワークよく、より効率的に業務遂行をする体制作りが目的です。いわば、「攻め」のための組織改編ですね。営業力を強化し、今後さらに攻めの姿勢を取るためのグループ会社再編です。
―― 一方で、ドコモ本社の社内人事もずいぶんと変わりました。各部門の人員配置もかなりドラスティックな変更があったと聞き及んでいます。
吉澤氏 社内につきましては、新領域の事業を中心に人員強化を行いました。ここ最近のdマーケットの広がりなどを見ていただくと分かりますが、今後のドコモは(従来の携帯電話事業の枠組みだけでなく)新領域の事業開拓が重要な取り組みになります。ここに積極的に、かつ手厚く人を配置しました。新事業領域については引き続き注力していきますので、それに即した人員配置としました。
あと営業部門ということでは法人営業ですね。質の面では、これまでもドコモが得意としてきた大企業向け法人ソリューションを強化します。ここはIoTだとかM2Mの新しい流れも出てきていますので、そういったものにも取り組みながら積極的にやっていく。ここは本社の大企業向けアカウントマネージャーの強化を行っています。
その一方で、法人市場では中小企業向けの量の対応も重要になる。ドコモが持つ法人契約数では中小企業の比率が高いですし、そこのARPUも高いわけですね。ここはまだ開拓できる余地が多いと考えていますので、中小企業向け営業部隊の人員も増加して攻勢をかけていきます。
料金、サービス、エリアで、さらに「攻めるドコモ」に
―― 2014年度前半はドコモにとって大きな転機となったわけですが、2014年度後半に向けてのヴィジョンをお聞かせください。
吉澤氏 まずは新料金の訴求をしっかりやっていく。新料金への移行・普及は重要な経営目標でして、詳しい数字は申し上げられませんが、当然ながら1000万契約以上の大台を狙っています。
この新料金プランの上で、パケット料金のARPU拡大に努めていく。音声側は今回定額になり、パケット料金が従量制になったわけですが、今後は「パケット通信をいかに使っていただくか」に取り組み、少しでも高いシェアパックを買っていただくための工夫をしなければなりません。ここではマルチデバイスの普及促進もひとつの鍵になりますので、タブレット端末が導入しやすい料金の仕組みなども考えていきます。
―― タブレットに関しては、コンテンツのARPU底上げにも寄与しますから、今後かなり重要ですね。
吉澤氏 ええ、(総合ARPU拡大において)コンテンツはとても重要です。サービス分野は今後さらに注力していきます。2014年はdブックやdマガジンなどが好調ですし、dデリバリーなど新しい取り組みも始めました。2014年後半に向けてはさらに新しいサービスも投入する計画です。
あと、サービスエリアへの投資も重要です。2014年度はLTEの基地局をさらに4万局ほど増設します。キャリアアグリケーションで225Mbps対応も行います。様々な角度で、LTEエリアの充実に取り組んでいきます。
―― 総務省が示した新たなサービスエリア測定基準で、KDDIがLTEのエリアの広さナンバー1という宣言をしましたが、それに対抗しなくていいのですか。
吉澤氏 いま新基準で正確な測定を行っていますが、もちろん(KDDIを)追い抜かなければなりません。まだ「いつ」とは申し上げられませんが、新基準でのエリアカバー率の数字も出していきたい。いずれにせよ、2014年度末にはFOMA(3G)のエリアとXi(LTE)のエリアカバー率が同一になります。ここがひとつのターニングポイントになるでしょう。
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