分かりにくいけれど面白いモノたち
偶然に身を委ねる意思決定ツール「タマタマゴ」は“令和のアナログコンピュータ”なのかもしれない(3/5 ページ)
ジョルディ・ロペス・アギロさんといえば、アッシュコンセプトのブランド「+d(プラスディー)」で、多くの製品をデザインされている方で、例えば、回すとビックリマークが浮かび上がるコマ「Spin(スピン)」(1100円)や、流星をクレーターでキャッチするというコンセプトで、けん玉をリデザインした「Meteor(メテオ)」(6050円)など、数多くの、ちょっと不思議な感触の製品を発表している方。その彼が持ち込んだ、不思議なツールともオブジェともつかない、卵っぽいものに対して、砂口さんは、アッシュコンセプトの「不思議なものってなぜ不思議なんだろう」というものを製品化しているブランド「ハテナラボ」での製品化を提案した。しかも、その時点から、既に「タマゴ」という呼称で企画が始まったという。
では、このアナログコンピュータ的なふるまいは、どういう仕組みで実現しているものなのか。何度試してみても、内部で何か機械的な動きをしている様子は感じられないし、ボールを入れたら、すぐに下から出てくるし、なのに、3分の1の確率になっているという、その仕組みは、ただ使ってみるだけでは、私には全く分からなかったのだ。
「ジョルディさんは、同じシステムを使った色んな形を作っていたんですけど、その中で3分の1がいいんじゃないか。イエス・ノーだとつまらないけど、イエス・ノー・多分、の3つなら面白いということになりました。仕組み自体は、実はかなりシンプルなものなんです」と言って、砂口さんが見せてくださったのは、医療器具などを作るのにも使われているという高精度の3Dプリンターで作られた物体だった。
それは、下に行くに従って細くなっている螺旋状の管の最下部が3つに分かれている形状の手のひらにのるくらいのもの。つまり、この螺旋状の管を、ボールが滑り落ちていって、3つの出口のどれかから出るということなのだろう。
「管をこんな風に螺旋(らせん)状にして、その螺旋でボールをスピードアップさせてから一点に収束させれば、3つの出口から均等な割合で出てくるんじゃないかというのを、ジョルディさんが3Dプリンターでいくつも試作して、スペインから送ってもらったり、データをもらって、こっちで出力したりしながら、少しずつ作っていきました。卵形にした時に、卵に見える程度のサイズの中に収まるようにするのが大変でした。その制約の中で、スパイラルの角度や、螺旋の数、ボールには何を使うかなどを、さまざまに検証して、どうにか辿り着いたのが、この最終形態です」と砂口さんは、その、ちょっと生き物の内臓にも似た物体について話してくれた。写真は流石にNGではあったけれど、最初のイメージ図は公開を許して頂いたので、この図から想像してみてほしい。
しかも、3分の1の確率になっているかどうかの検証も、砂口さんとジョルディさんが、せっせとボールを何百個と入れて行ったという。理論的にそうなる仕組みだったとしても、実際に作ると誤差も生まれるし、ボールのふるまいは必ずしも計算通りにいくわけではない。
そうなると、検証は実際にやってみるしかないのだ。だから、当然だが、このTamatamagoは、あくまでも約3分の1の確率で、ボールが出てくるという書き方になる。でも、それで十分ではないかという気はする。サイコロの目をコントロールしたり、ルーレットで目指す穴に落とすなんて技術は、大昔から伝わっているわけで、ならば、このTamatamagoは、そういう人為的なコントロールが出来ない分、意思決定ツールとしては優秀だと思うのだ。
ボールを何にするかも大きな課題だった。素材は何にするか、重量はどのくらいがいいのかなどを考えて、一時はマグネット球を使うというアイデアもあったそうだ。
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分かりにくいけれど面白いモノたち
ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。
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