分かりにくいけれど面白いモノたち

風速15mでも裏返らない晴雨兼用傘、アンベル「タフネス アンチフリップ」開発者に聞く「全天候での安心感」を支える技術(5/5 ページ)

 約350gという現代の折り畳み傘としてはやや重めの数値も、剛性を確保するための意図された重さだと、辻野さんは言う。「フレームが軽すぎると風で過度にしなり、裏返りの原因になります。強風を受け止めても手元がブレない安定感を生むため、あえて約350gという『計算された重さ』を採用しています」(辻野さん)。

グリップも大きく安定して持てる。また開閉ボタンも押しやすく、シャフトを押し込む際に途中で手を放しても、そこでロックされる安心機構搭載

 もちろん、自動開閉などを省けば、もっと軽くすることはできただろうと思う。辻野さんの「本製品では『圧倒的な耐風性と全天候での安心感』を最優先としています」という言葉もあるけれど、それでも使い勝手の良さに対しても妥協しなかったことが素晴らしいと思うのだ。

 特に、自動開閉は重さを引き替えにしても私にとっては重要。片手でさっとさせるのは雨傘にも日傘にも必須の機能だと思っている。特に、日傘の場合、さっとさしたり、さっと畳んだりできないと、使うこと自体が面倒になったりするから。

 最後に、秒速プリーツにも触れておきたい。実は、春の「ギフトショー」で見て以来、この機構には興味があったので、この夏、さっそく入手して使っていたのだけど、これまた使い始めると手放せない機能なのだ。技術自体はシンプルで、特殊な熱処理によって折り畳み傘を畳んだ時の折り目を記憶させるというもの。畳むと、布地がさっと元の折り目通りになるので、あとはベルトをくるっと巻いてやればキレイに巻き取れてケースにスムーズに入れられる。

秒速プリーツ搭載の傘は内側から見ると、このように折り目の型が付いているのが分かる。写真は「HEATBLOCK VERYKAL 秒速プリーツ」

 同じようなことを、折り目に別パーツを貼り付けて実現している傘もあるが、秒速プリーツは、プリーツを記憶させることで、パーツを増やすことなく、さっと収納できる機能を実現しているわけだ。もちろん、完全に新品の状態のような折りに戻るわけではないから、多少は手で整えてやる必要はある。それでも、大体キレイになっているのを整えるだけなので、手間は圧倒的に少ない。

 しかし、この機能の耐久性はどれくらいなのか、また、手で整える作業は行った方がいいのか、不要なのかが気になったので、アンチフリップの取材のついでに聞いてみた。

 「秒速プリーツを長持ちさせるには、基本通り『元の折り目に沿って畳む』ことが大切です。折り目と異なる位置で雑に畳む癖がつくと、徐々に記憶されたプリーツ加工が弱まってしまいます。また特殊な熱処理によって折り目を記憶させているので、アイロン掛けや熱湯、高温環境にさらす行為は厳禁です。記憶された折り目が消失し、復元できなくなりますのでご注意ください」(辻野さん)ということだった。

 日傘としての使用との関係は気になるところだが、数カ月使っている感じでは、そう簡単には折り目が消失することはなさそうではある。

 アンベルの公式サイトの「タフネス アンチフリップ」のページには「悪天候のたび、『心の余裕』を乱されていませんか?」と書かれてる。そして「都市の過酷な天候に振り回されず、移動のストレスから解放される全天候フルスペック・ギアへ」と続く。つまり、もはや傘は単なる雨具ではなく、天候から身を守る日用品になったのだ。

 急な雨に対する備えなら、軽さや小ささは重要。しかし、移動のための日用品なら、携帯性はもちろんだが、それに加えて、性能と使い勝手と壊れにくさが重要になる。傘の役割が代わりつつある“今”の最先端は、こういう製品なのではないかと思うのだ。

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ITから文房具まで幅広く活躍するベテランライター、納富廉邦さんが言語化しづらいけど面白いガジェットやサービスを分かりやすく解説します。

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