小寺信良のIT大作戦
カメラのないAIグラス、「RayNeo iO」はどこまでやれるのか 盗撮疑惑とは無縁になるが機能面は?(5/5 ページ)
「どれも同じ」ではないAIグラスの世界
AIグラスは、我々が普段利用しているAIをウェアラブルにするという目的を持って作られているが、メガネ化するということは、日常的に使用することが前提となる。
これはスマートスピーカーが通ってきた道でもあるわけだが、人間が日常生活内でAIに聞かなければ分からない事柄というのは、それほど多くない。それよりも役に立つのは、「何かあったとき」である。そこにキラーソリューションが生まれるわけだが、多くのAIグラスメーカーは、それがなんなのか、それぞれに答えを探している。
RayNeo iOが注力するのは、長時間録音によるライフログ生成だ。音声はもちろん、スマートフォンのGPSデータも取得して移動も検知しながら、その日の記録をまとめるという機能は、データが多く溜まった時にまた別の価値を生む可能性がある。その一方で、いくら音声だけとはいえ行動履歴はプライバシー情報でもあるので、第三者利用には慎重さが求められる。
RayNeo iOはスピーカーを搭載しないので、人間の音声コマンドに対する返答は、ディスプレイの文字として返ってくる。一般にAIは音声コマンドには音声で、テキストコマンドにはテキストで返してくるので、音声の問いかけに文章で返してくるというのはこれまであまりないやり方だ。
文字の表示は5行ぐらいではあるが、長文が流れてくると読むのが間に合わない場合もある。だがグラスのリューズを回せば前にスクロールできるので、読み切れなかった文章は戻って読み直すことができる。
これは流れ去ってしまう音声応答よりも、内容を把握しやすい。また音声応答では途中から聞き直すことが難しく、どうしても再コマンドで最初から聞く羽目になるが、テキストならそのまま途中から読み返すことができるため、手間も少ない。このあたりがRayNeo iOのメリットといえそうだ。
今回RayNeo iOを使ってみて感じたのは、AIグラスはスマートフォンやスマートウォッチのように、「できることはどれもだいたい同じ」の世界にはならないのではないかということである。AIグラスの用途として、本当に背後に汎用LLMを動かし続けなければならないのか、それよりも特定の事業や業務に最適化した自社製AIに接続した、業務専用端末としてのあり方がいいのではないかといったことも、今後の検討課題になってくると思われる。
RayNeo iOでは、無料で使えるLLMとして、RayNeo V1とGemini 3.1 Flash Liteを用意しているが、それ以上のAIを使おうとすると月額1500円のサブスク料金が必要となる。既にPC向けに何かのAIをサブスク契約している人も多いと思うが、さらに追加でAIグラスの分の料金を払ってでも、日常的にメガネ上で汎用AIを動かす必要があるほど便利なのか。
それを「必要だ」と思わせてくれる日常的ソリューションが早く発見されることを望みたい。そうしないと、盗撮に便利という程度のユーザーが大量発生しかねず、テクノロジーの未来を壊しかねない。
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小寺信良のIT大作戦
ベテランのテクノロジーライターである小寺信良さんがIT分野全般にわたって考察する。
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