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5社の作品を対象に「シネマ信託」・個人から投資募る

» 2006年03月30日 17時22分 公開
[ITmedia]

 ジャパン・デジタル・コンテンツ信託(JDC信託)は3月30日、映画製作会社5社の複数の劇場用映画を運用対象とした「シネマ信託〜製作者ファンド第1号〜」を組成すると発表した。個人投資家から調達した総額30億〜50億円を活用して映画を製作し、収益を投資家に還元する。複数の作品を運用対象にすることで、映画につきものの“当たりはずれ”リスクを低減できるという。

 運用対象は葵プロモーション、ウィルコ、小椋事務所、オフィス・シロウズ、セディックインターナショナルの5社が製作する劇場用作品。

 5社は製作する映画の著作権をJDC信託に信託し、投資家から集めた資金によるファンドに対し信託受益権を売却することで製作資金を調達する。劇場公開やDVD販売などの収益から、ファンドが受け取った分を投資家に分配する仕組みだ。運用終了後、著作権は製作者に返還する。

 6月から証券会社を通じて募集を始める予定で、詳細は今後公表する。運用期間は4年間程度とし、投資家には年2回の分配を予定している。

 コンテンツ産業への関心が高まる中、個人投資家から資金を募り、映画などのコンテンツを運用対象とするファンドの組成が相次いでいる。ただ、特定の1作品を対象とするケースが多く、作品の出来や興行成績の当たりはずれによるリスクが高くなり、投資家が手を出しにくい面もあった。

 新ファンドは「NANA」「あずみ」を手掛けたセディックインターナショナルや「下妻物語」の小椋事務所など、実績の豊富な5社が今後1〜2年の間に製作する10〜15作品を運用の対象としており、リスクを分散可能な「ポートフォリオ運用型」だとしている。新ファンドに先駆け、シネカノンが製作・買い付ける約20作品を対象にしたファンドの募集も始めている。

 投資信託法に基づく投信商品ではないが、「実態はコンテンツ運用型投信の先駆け」(JDC信託)。不動産投資信託(REIT)などと同様、「富裕層向けオルタナティブ投資の主力になりうる金融商品」(同)として期待している。

photo ファンドに参加する製作会社の代表とJDC信託の土井社長(右端)

 「映画などの製作資金規模は国内は2〜3兆円。毎年2%成長だが、世界は6〜8%、中国と韓国は8%。もっと資金投下が必要だ」──JDC信託の土井宏文社長はこう指摘する。政府がコンテンツ立国を掲げる一方で、製作者側の資金調達手法の多様化は進んでおらず、資金規模が伸び悩む一因となっている(関連記事参照)

 土井社長は「コンテンツ振興の議論は『通信と放送の融合』や著作権法改正など、若干小手先の方に流れている。どうやっていい作品を作って届けていくか、ということを国民は望んでいるのでは」と話し、製作者が資金の工面に苦労している現状を改善すべきだと指摘。著作権信託方式による新ファンドのようなスキームを普及させ、3〜5年以内にも受益権市場だけで2〜3兆円市場に育てたいと意気込んでいる。

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