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AMDがSpiderで訴えたいこととは――存在感増すGPUを大幅強化(3/3 ページ)

» 2008年01月25日 11時00分 公開
[笠原一輝,ITmedia]
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消費電力が大きく下がったRadeon HD 3800シリーズ

 AMDはSpiderプラットフォームの一部として、Radeon HD 3800シリーズをリリースした。Radeon HD 3870、Radeon HD 3850という2つラインアップを持つRadeon HD 3800シリーズは、マイクロソフトが2008年の第1四半期にリリース予定のWindows Vista ServicePack1でサポートするDirect3D 10.1に対応するなどの新機能を備えている。なお、Radeon HD 3800シリーズの詳細やその性能などに関しては別記事(これはバランスのいい“ハイエンド”GPU──「Radeon HD 3870」ゲームベンチレビュー)を参照していただきたい。

 Radeon HD 3800シリーズの特徴として、森本氏は「前世代に比べて圧倒的消費電力が少なくなっています。Radeon HD 2900シリーズが290Wだったのに対して、Radeon HD 3800シリーズは140Wになっています」と消費電力が圧倒的に少なくなっていることをあげる。Radeon HD 3800シリーズの低消費電力性能は、ボード上に装着されている追加の電源コネクタの数からも分かる。通常PCの拡張カードは、拡張スロット側から電源を供給するが、ハイエンドのGPUの場合、マザーボード側から供給する電力だけ(おおむね75W程度)では足りないので電源供給ユニットから直接供給できる6ピン(75W程度)と8ピン(150W)の追加電源コネクタが用意されている。200Wを超えるような消費電力の大きなGPUの場合、これが両方つくことになるのだが、Radeon HD 2900シリーズはまさにこれに該当する。しかし、Radeon HD 3800シリーズはマザーボードからの75Wと追加の75Wだけですんでいる。

 実際3Dアプリケーション(スクウェア・エニックス「Final Fantasy XI Official Benchmark 3 Version 1.0」)を実行し、その時のPC全体の消費電力を電力計を利用して計測してみると、次のようになった。

電力計測時テスト環境

CPU:Phenom 9900 エンジニアリングサンプル(2.6GHz)

マザーボード:ASUSTeK M3A32-MVP

メモリ:3GB

HDD:HGST HDT725050VLA


 比較対象として用意したRadeon HD 2900 XTの307Wに比べて、Radeon HD 3870は半分まではいかないものの177Wと57%でしかなく、実に43%もの電力削減を実現していることが確認できた。

森本竜英氏 日本AMD マーケティング本部 PCプラットフォーム・プロダクトマーケティング シニアスペシャリスト GPU/チップセット担当 森本竜英氏

 AMDではRadeon HD 3800シリーズがRadeon HD 2900シリーズに匹敵するような性能を発揮しながら消費電力がこれだけ下がっている理由として、半導体を製造する時に利用する製造技術の進歩を上げる。「Radeon HD 2900シリーズは85nmプロセスルールという製造技術を利用して製造していましたが、Radeon HD 3800シリーズでは55nmプロセスルールという最新の製造技術を利用していて、これが高性能かつ低消費電力を実現できた理由です」(森本氏)55nmプロセスルールはGPUに利用される製造プロセスルールとしては最先端のものだ。

 なお、Spiderプラットフォームを構成する3つのコンポーネントのうちの1つであるチップセットのAMD790FXに関しても、チップセットとしては最先端の製造プロセスルールである65nmプロセスルールを利用して製造している。このため、「チップセット自体の消費電力は10W以下」(森本氏)となっており、競合他社のハイエンド製品向けのチップセットが20W台後半となっているのに比べると、低消費電力と言えるだろう。こうした点も、Spiderプラットフォーム全体での低消費電力に貢献しているのだ。

Fusionが実現する未来に新しい提案をしていくAMD

 これまで、AMDのSpiderプラットフォームが語られる時、どうしてもマイクロプロセッサであるPhenomプロセッサにスポットライトが当たり、GPUやチップセットに関しては陰に隠れがちだったが、実のところGPUやチップセットにもさまざまな新しい技術を採用しており、エンドユーザーに対して新しい価値をもたらしている。

 今後もAMDはプラットフォーム戦略を加速していく予定で、続々と新しいGPUやチップセットなどをリリースしていく。例えば、2008年の第1四半期中にはRS780と呼ぶGPU統合型チップセットをリリースする。このRS780にはRadeon HDシリーズの特徴を受け継いだDirectX10世代のGPUを内蔵しており、おそらく統合型チップセットとしては初めてMPEG-4 AVC/VC-1のハードウェアデコードを実現するUVDを内蔵することになる。「AMDとしては今後もアクセラレーションコンピューティングとして、新しい形のPCの使い方を提案していきたいと考えています。Spiderプラットフォームはその第1歩です」(土居氏)との通り、AMDのすべてが融合(Fusion)する時代への取り組みはいままさに始まったところだ。

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