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「焦っていた」 任天堂を辞め、フィギュア写真投稿サイト「fg」を始めた理由(2/2 ページ)

» 2009年07月02日 13時47分 公開
[宮本真希,ITmedia]
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仏像に能面、爪楊枝サイズの初音ミク

画像 ガンプラの数々

 昨年5月に、友人でセガのスポーツゲームの開発に関わっていた松岡貴之さんを誘って起業。数カ月後には、任天堂のゲームプログラマーだった亀田純也さんもメンバーに加わった。

 ゲーム制作のノウハウを生かしてネットサービスを作れば、面白いものが作れそうだと漠然と考えていた。ゲームの受託開発で稼ぎながら、自社サービスの企画を練り始めた。だがアイデアは、どうしてもネットサービスではなく、オンラインゲームに近いものになってしまう。

 「これじゃ任天堂といたときと変わらないじゃないか。ゲームから離れてみようと思って起業したのに、潔くないな」――岡本さんは煮詰まっていた。

 そんなときふと、フィギュアの原型師をしている友人を思い出し、フィギュア版pixivのようなサービスが頭に浮かんだ。「フィギュア写真を投稿するサイトはほかに聞いたことがないぞ」。受託開発の仕事が一段落し、手が空いている1カ月半の間に開発してみることにした。

 そうして昨年10月にオープンしたのが「fg」だ。フィギュアだけでなく、鉄道模型やぬいぐるみなど、立体物の写真であれば何でも投稿できる。ユーザーは自作・改造した作品の写真を投稿する「モデラー会員」と、そうでない「一般会員」に分かれており、一般会員は市販のフィギュアを撮影して投稿してもOKだ。完成品だけでなく、制作途中の作品を公開しているユーザーも多い。


画像 「古いタイプのフィギュア」
画像 雪像もある

 「機動戦士ガンダム」のプラモデルを組んだものや、「ねんどろいど」「武装神姫」などのフィギュアの写真が多く投稿されているが、中には「古いタイプのフィギュア」と称して仏像の写真を投稿するユーザーも。さっぽろ雪まつりの雪像や、小学生が夏休みの工作で作ったという亀の置物の写真もある。

画像 鎧を鋳造した作品

 手の込んだ作品も多い。「武装神姫用金属鎧」は、ユーザーが金属素材を鋳造して自作したよろいを、市販のフィギュアに着せて改造した作品。岡本さん自身はフィギュアに詳しくなかったため、「どういう執念があったらこんなすごいものが作れるんだ」と熱意に驚いたという。

 手作りの能面や、爪楊枝を削って作った高さ2ミリの初音ミク人の顔をリアルに再現した像など、“職人技”のような作品も。「“匠”って感じですよね。器用な人は多いんだなぁ」と、岡本さんは感心しきりだ。

 フィギュアやプラモデルそのものだけでなく、写真の撮り方にこだわった作品も目立つ。例えば、写真スタジオにあるようなスクリーンの前で撮影した本格的な写真もあれば、桜や夜景、青空などをバックにポーズを決めたフィギュアの写真など、シチュエーションを重視するユーザーもいる。


画像 能面
画像 高さ2ミリの初音ミク。1円玉と比べてみると小ささがよく分かる
画像 リアルなおばちゃんの像

 fgは、作品に対する熱意やこだわりをアピールできるよう工夫されている。例えば、投稿者が自分の写真の上に吹き出しでコメントを付けられる機能。作品のポイントなどをほかのユーザーにアピールできる。写真は1作品につき10枚まで投稿でき、さまざまな角度やポーズで作品を紹介することが可能だ。

 作品はタグで分類され、タグごとに掲示板が設置されている。ユーザーは、好きな作品について語り合ったり、情報交換して楽しめる。

 ほかのユーザーの作品を5段階で評価したり、コメントやタグを付ける機能もある。制作途中の作品に対してアドバイスを送るといったやりとりも行われているという。手の込んだ作品を完成させるには時間と労力がかかるが、制作途中にコメントをもらえれば、モチベーションを維持できそうだ。

 fgに投稿された作品の中には、権利者に無断で2次創作されたフィギュアの写真もある。権利者から要望があれば削除など対応する方針だが、これまでに権利者から問題を指摘されたことはないという。

予想外の会員増ペース

画像 岡本さん

 今年2月には3DのCG作品を投稿できる「cg」を開設した。会員数は、fgが約1万8000、cgが約4000だ。「1年くらいかけて2万会員程度になればいいと思っていた」ため、予想外の増加ペースに驚いている。

 今後、fgとcgに掲載する広告料で収益を得る計画。ユーザーが作品を販売する仕組みも用意したいと考えている。だが「fgとcgだけで食えるようになるとは思っていない」。ゲームの受託開発で稼ぎつつ、ネットサービスを開発していく予定だ。今年6月には、聖地巡礼”の思い出を共有するSNS「まいすぽ!」を開設した。「ネット企業として後発なので、新しいことや変なことをいっぱいやっていきたい」と意気込んでいる。

 「ネットとゲームは混ざっていくと思う。混ざっていくからこそ、両方をやる。時代に合わせたエンターテインメントを作っていきたい」

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