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日経を丸ごと読める「Web刊」、単体月額4000円で 「良質な情報はタダではない」

» 2010年02月24日 18時02分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 Web刊有料会員向けトップページ。本紙と同じ「日本経済新聞」の題字は、日経がWebに本腰であることを示している

 日本経済新聞社は2月24日、無料・有料コンテンツを組み合わせた本格的なネット新聞「日本経済新聞 電子版」(愛称:Web刊)を3月23日に創刊すると発表した。1日から購読申込みを受け付ける。

 「NIKKEI NET」をリニューアルする形で、一部の記事を無料で提供。有料会員になると、日経本紙に掲載される全記事を丸ごと読める。携帯電話からのアクセスや、設定したキーワードに関するニュースの自動ピックアップ、記事クリッピングなども有料会員向け機能として提供する。

 料金は、本紙(全日版3568円、朝・夕刊セット4383円)を購読していればプラス月額1000円、Web版だけなら月額4000円。

 喜多恒雄社長は「紙の新聞の部数に影響を与えないことを前提にした価格設定」と説明している。

「無料非会員」「無料会員」「有料」の3段階

画像 会員属性別の機能。Web刊PRサイトより

 Web刊は、(1)非会員も無料で利用できる部分、(2)無料の会員登録をすれば利用できる部分、(3)有料登録者のみ利用できる部分――で構成する3階建てのサービスだ。

 サイトでは、日経本紙の記事すべてと、Web刊独自記事、日経BPなどグループ各社による専門記事や動画ニュース、英Financial Timesの翻訳記事などを随時更新。非会員は、一部記事を無料で閲覧できるほか、有料会員向け記事の見出しやリード部分を読める。メールアドレスや氏名などを登録して無料会員になれば、有料会員限定記事も月20本まで読める。


画像 各記事が紙の新聞のどこに載っているか確認できる機能も
画像 新聞のレイアウトそのままに読むこともできる
画像 パーソナライズ機能を備えた「My日経」

画像 携帯電話用サイト(有料会員限定)

 有料会員は全記事を閲覧できる。朝夕刊に載った記事は通常のWeb記事同様、横書きで読めるほか、各記事が本紙のどこに載っているか確認できる機能や、新聞のレイアウトそのままに読める機能などを提供する。

 有料会員限定のパーソナライズサービス「My日経」も用意した。読んだ記事の履歴からおすすめ記事を表示したり、記事をクリッピングしたり、登録キーワードに関連する記事を自動収集するといった機能が使える。携帯電話向けサイトも、有料会員限定で提供する。

 過去記事の検索機能も。無料会員なら過去6カ月分の記事検索と見出し表示が可能。有料会員なら過去5年分の記事を検索でき、月25本まで本文も表示できる。

 専用iPhoneアプリなどは用意せず、スマートフォンで使いたい場合は当面はWebブラウザから閲覧してほしいとしているが、「オープン」を基本理念にしており、対応プラットフォームの拡充も進める。ユーザーニーズに応じて機能を追加していく方針。要望があれば、課金や購読の仕組みをほかの新聞社にも提供したいという。

新聞不況に一石を 「良質なコンテンツはタダではない」

 新聞の発行部数が減り続け、2009年はネット広告が新聞広告を抜くなど、紙の新聞をめぐる状況は急速に悪化している。一方、新聞各社が提供している無料のWeb版は収益面で紙の新聞に遠く及ばず、業界に危機感が募っている。

 「良質なコンテンツはタダではない。本当に価値がある情報や機能には、それにふさわしい対価をいただきたい」――有料のWeb版を提供することで、「ネットの記事はタダ」という常識を覆し、新聞不況を脱する一石にしたい考えだ。

画像 喜多社長

 「ネットに無料の情報があふれる中、情報が本物か、発信源はどこか、誰か事実を確認したのか、確かなものが分かりにくくなっている面もある。紙の新聞で培ってきた正しい報道や価値のある言論、ジャーナリズムを、PCや携帯電話などデジタル機器に親しんだ人にも提供するのが使命」(喜多社長)

 本紙とセットなら格安という価格設定の背景には、最大の収益源である本紙の読者をWeb版に流出させたくないという意図がある。「朝は朝刊、通勤時は携帯、会社ではPCで――といった形で、紙とあわせて購読してもらうことで、良さが一段と分かってもらえ、共存関係を作れると確信している。紙は最も重要な柱だが、それに続く柱に育てたい」

 NIKKEI NETは本紙記事の一部配信にとどまっていたが、有料Web版は本紙記事を全部読める上、本紙にない情報も得られる。本紙を購読するメリットが薄まり、紙離れが進む恐れもあるが、「紙は持ち運びが便利で一覧性がある」といった点でWebにはないメリットがあり、共存できるとみている。

 短期的な収益は追わず、じっくり育てていきたい考え。まずは無料会員50〜100万人、有料会員30万人(日経発行部数の1割)を目指す。「成功するまで5年、10年かかるかもしれないが、今スタートさせないと10年後の成功はないことは確かだ」

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