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「密室で辞任を迫ったわけではない」――元社長辞任問題で富士通が反論

» 2010年04月14日 20時30分 公開
[岡田有花,ITmedia]
画像 会見する間塚氏

 富士通は4月14日、元社長の野副州旦(のぞえ・くにあき)氏の辞任をめぐる一連の騒動について会見を開いて説明した。「野副氏はリスク感覚が欠如し、社長としての適格性を欠いていたため辞任を要請した」とし、「密室で辞任を迫ったわけではない」と釈明している。

 同社は昨年9月25日、病気療養を理由に野副氏の社長辞任を発表していたが、今年3月6日、辞任の理由を「取引などの関係を持つことはふさわしくない企業と関係を続けたため」と訂正。野副氏を相談役から解任した。

 野副氏は今年2月、辞任取り消しを求める内容証明郵便を富士通に送っていたほか、3月30日、子会社ニフティの再編に関して約50億円の損害を会社に与えたとして、間塚道義社長と秋草直之相談役を相手取り、株主代表訴訟を前提とした提訴請求を同社監査役に送っている。

 4月7日、野副氏は会見を開いて経緯を説明し、「ねつ造された虚構を理由に密室で解任された」などと主張した。「富士通は外部調査委員会を設け、経緯を検証すべき」とも主張している。

焦点はニフティ再編に絡む「怪しげな」ファンドの扱い

 富士通の説明によると、野副氏は昨年2月、子会社ニフティの再編に、反社会的勢力の関係が疑われるファンドを関与させることを考えていたという。富士通が同ファンドと関係を持つのは適切でないと考えた秋草氏が、野副氏に注意。野副氏も「あのファンドは怪しげなので外す」と話していたという。

 ニフティの再編話はその後一時立ち消えたが、昨年7月、野副氏が再開をニフティに通知。富士通が同ファンドについて複数の調査機関に依頼して調査したところ、反社会的勢力とのつながりが疑われた上、野副氏が同ファンドの代表者と引き続き連絡を取り、ニフティ売却にも関わらせるつもりだったことが判明したという。

 調査結果を受け、9月に間塚氏と秋草氏、大浦溥常務で相談。「同ファンド代表者との関係を続けているなら、リスク感覚が欠如しており、社長としての適格性を欠く」と判断。同ファンドとの関係を本人に確認した上で、認めた場合は辞任を要請することに決めたという。

 9月25日の取締役会開催前。間塚氏や秋草氏などが同席する場で野副氏にただしたところ、同ファンド代表者との付き合いを認めたため辞任を要請。野副氏はその場で辞任届に署名したという。辞任の理由を「病気」と開示することについても、同意していたという。

 辞任は、あらかじめ社外取締役、社外監査役全員の合意を得た上で要請。「取締役会を無視して密室で辞任を迫ったということは一切ない。野副氏は問題を十分理解して辞任したものと思っていた」と間塚氏は強調する。

 辞任の理由を病気と開示したのは、「風評被害を与えないことや、野副氏の名誉、富士通の風評も考慮した」(間塚氏)ため。取締役会での解職ではなく辞任という形をとることで、「穏便に済ませたかった」と藤田正美副社長は説明する。

 野副氏は今年3月15日、取締役としての地位保全の仮処分を横浜地裁に申し立て、4月6日に取り下げている。間塚氏は、「裁判所は究極の外部調査委員会。野副氏の言うように外部調査委員会が必要なら、お互いの言い分や証拠を出し合った裁判所の判断を得るべきだろう。取り下げは非常に疑問」と話す。今回の問題に関する外部調査委員会の設置は考えていないという。

 野副氏が求めている、ニフティ再編に関わる株主代表訴訟を前提とした提訴請求は「監査役会で対応している」という。「野副氏が不当に辞任させられたため、すでに実現が確実だったニフティの売却により得られた利益が失われたという内容だが、昨年9月25日の時点で野副氏自ら、ニフティを特定の企業に売却すると決めたわけではないと話しており、社内でもニフティの売却が決定間近との認識はまったくなかった」と間塚氏は説明している。

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