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» 2010年08月20日 07時00分 公開

「迷っている暇はない」 スク・エニ飛び出し世界を目指す、たった1人のゲーム会社(2/2 ページ)

[岡田有花,ITmedia]
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 ユーザーができるのは、装備やスキルの設定や、行き先を決める「行動指示」だけ。指示して数時間待てば、キャラクターが勝手に動き、戦闘し、アイテムを手に入れてストーリーが進んでいく。待っている間に起きたことは、「旅の記録」欄からチェックでき、戦闘シーンやイベントの動画もここで見られる。


画像画像画像 地図もいかにもRPG風だ。待っている間に起きたことは「旅の記録」から見られる。道具も「薬草」などRPGでおなじみのラインアップ

 「オンラインRPGの重要な要素のみを抜き出した作り」――レベル上げや移動といった、RPGで最も面倒な“作業”は待っている間に終わり、イベントなど重要な部分のみを「旅の記録」から体験できる仕組み。忙しい人でも1日5分程度で進められ、数日間プレイし忘れていても勝手にゲームが進んでいる。

 「MMORPGや人気のソーシャルゲームは、学生など時間のある人が強くなってしまうし、短期間で飽きられる傾向もある。勝手にクエストは、1度プレイするだけでは面白くないが、毎日繰り返すとじわじわと面白くなってくる、ゆるく、長く、繰り返すゲーム。忙しい社会人でも仕事の合間にプレイできる」

 目指すのは、「サザエさん」や、「ジャンプ放送局」(「週刊少年ジャンプ」で連載されていた読者投稿コーナー)のようなゲーム。いつも見ていて、気になってしまう。そんなゲームにしたいという。

「焼き畑」ではなく長期戦を

 収益はデジタルアイテムからの課金収入を見込み、ミラクルポジティブとリンドブルムで分け合う。アイテムは数十円〜数百円程度。武器や防具のほか、連れて歩ける「ペット」や、目的地までの移動時間を短縮できるアイテムなどがある。

 ソーシャルゲームには、期間限定イベントやアイテムなどを次々に投入して短期的なARPU(利用者1人当たりの売上高)を高め、巨額の収益を得ているものもあるが、そういったやり方は「焼き畑のように見える」し、飽きられやすい傾向もある。

 勝手にクエストは「1〜2年は売り上げが上がらなくてもいい」と長期戦の構えだ。「半年ぐらいは無料で楽しんでもらい、気に入ってくれたらお金を払ってもらえれば」

 現在は1日2000人ぐらいのペースで新規入会者がおり、課金ユーザーのARPUは400〜500円程度という。ユーザー数や課金率は非公開。課金率目標はデイリーアクティブユーザーの10%、課金ユーザーの月額ARPU目標は1000〜2000円。ユーザー数も売り上げも「まだまだ」だが、じっくり腰をすえて運営していく考えだ。

ソーシャルゲームは「飲食店経営のよう」

 まずは、オープン化したばかりのGREE向けに投入した。すでに数百のゲームが乱立しているmixiやモバゲーと違い、「絞り込んだ初期投入タイトルの中に入れてもらえれば目立てる」と考えたためだ。

 RPGファンの間で、口コミで広げていきたいと考えている。「GREEやモバゲー、mixi、Twitterなど、ネット上には人と人とのさまざまなつながりがある」――多様なソーシャルグラフでうわさが広まり、ユーザーが増えていくことを期待している。

 良い評判も悪評も一瞬で広がるソーシャルメディア時代、ベンチャーの腰の軽さは強みになるという。大手メーカーの場合、コストのかかる機能改善は役員の稟議・決済を待たねばならないなど動きが遅れがちだが、決裁権者が現場にいる小規模なチームなら、ユーザーの要望にすぐに対応できる。

 実際、勝手にクエストでは、GREEの掲示板やTwitter、2ちゃんねるなどをチェックしながら、土日や深夜も地道に改善を続けている。ユーザーの反応を見ながら改善していく作り方は、「100%完成させてから出す」ゲーム機向けゲームとはまったく違い、「飲食店経営に近い」と加藤さんは話す。

 ベンチャーキャピタル(VC)からの出資を受けていないのも、腰の軽さを大切にしたいから。「VCを入れて決済をあおがなくてはならない人が増えれば、大手メーカーで作っているのと同じになってしまう。どこかで資金が必要になればVCを入れることはあるかもしれないが、今は小規模でも全速力で走りたい」

そして世界へ

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 世界進出も準備している。各国語に対応したiPhone版やAndroid版、PC版を開発を検討中。「ソーシャルゲームの世界展開で成功した日本企業はまだない」が、最初の成功例になりたいと意気込む。

 世界中で人気のドイツ製MMOブラウザゲーム「Travian」のようなゲームが目標。「短期的にユーザー数を集められるゲームではないし、無理矢理集めても意味がない。世界中、いろんな国のコアなゲーム好きを集められたら面白い」

 大手メーカーからベンチャーに。そして世界へ。ゲーム開発の“転換点”を自ら体現しようと、加藤さんは奮闘している。

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