「昨年9月発売のiPod新製品は失敗だったのかもしれない」──市場調査会社のBCNがまとめた携帯音楽プレーヤーの国内販売動向によると、昨年12月はソニーの「ウォークマン」がアップルの「iPod」を上回ってシェアトップになった。iPodは年間ではシェアトップを維持しているものの、ウォークマンが肉薄。iPodは昨年9月の新製品発売以降、販売が前年割れしているのが影響しているという。
12月の台数シェアは、ウォークマンが前月から6.6ポイントアップして52.1%になり、前月から3.9ポイント下げたiPodの42.9%を上回った。ウォークマンがiPodを上回ったのは昨年8月以来。販売金額シェアではiPodが52.6%でウォークマンを上回ったものの、ウォークマンは前月から5.4ポイントアップして45.7%にまで接近した。
2010年通年の台数シェアは、iPodが48.2%だったのに対しウォークマンは44.4%。09年(iPod 51.5%、ウォークマン 35.4%)からウォークマンがさらに差を縮めた。
10年の年間販売動向を月次で見ると、ウォークマンは販売台数・金額とも前年同月比でプラスを維持。台数では10月には43.1%増、12月には42.7%増と大幅に増加している。
一方、iPodは9月以降、台数・金額とも大幅な前年割れが続いており、商戦期の12月に台数で15.3%減という異例の事態になっている。iPod販売は9月の新製品投入で回復するのが例年の動きだったが、昨年はむしろ落ち込む結果に。BCNの道越一郎アナリストは「10年の新製品は失敗だったのかもしれない」とみる。
変化は売れ筋機種の交代に現れた。販売台数のうち30%台後半を占めるトップ機種だったiPod nanoだったが、8月までに漸減し、さらに9月に26.4%だったのが10月には20.8%に急落。11月は17.2%、12月には17.5%と、年初から20ポイント近く落として20%を割った。
nanoに代わってトップ機種になったのはウォークマンのSシリーズだ。nanoに肉薄する形でシェアを追っていたが、8月に初めてnanoを逆転。ウォークマン初のシェア逆転の要因になった。翌月はnanoに僅差でかわされたものの、新型を発売した10月以降はnanoに差を付けてトップになり、12月は33.0%を占める人気機種になった。
iPod nanoが失速した一方で、人気が高まったのがiPod touchだ。iPhone 4と同等の新型が発表された9月以降に構成比が急増し、10〜11月には20%超となりnanoを上回っている。iPodの平均販売単価は年初から上昇傾向にあり、iPodの平均販売単価の上昇につながっている。
道越アナリストは「iPod nanoは新製品発売からガクンと落ちている。今回のシェア逆転劇の一番大きな原因」と指摘。タッチディスプレイを採用して大幅にデザインやユーザーインタフェースを変更した新型nanoが、ユーザーにはいまひとつ受けなかったのではないかとみている。
「iPodの機能はiPhoneに含まれており、市場シェアの分析はiPhoneも加味すべきだ」──という批判がある。これに対して道越アナリストは「iPodは携帯音楽プレーヤー、iPhoneはスマートフォンだとアップル自身が明確に区別している。製品ジャンルが解け合っている状況があり、一概には言えないが、中心的な機能によって分けて考えるべきだろうということで、それぞれ別にカウントしている」と説明する。
こうした機器を合計してカウントする試みも社内では実施しているというが、量販店ルートと携帯キャリアショップルートの集計方法の違いなどの問題があり、外部には公表していないという。
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