ソニーは5月19日、AR(拡張現実)の新技術「SmartAR」を発表した。従来のARには映像内に2次元バーコードなどの「マーカー」を映してAR用CGの表示場所を認識させる必要があったが、新技術では画像内の物体を認識させることでマーカー不要でCGなどを表示できるのが特徴。認識用カメラや対象物が動いている場合でも、物体を高速に認識して追従できるという。今後、実証実験を進め、ゲームやスマートフォンアプリなどへの応用を目指す。
従来から研究してきたという物体認識技術と、「AIBO」「QRIO」などのロボット開発で培った、独自の3D空間認識技術を統合することで実現した。物体を高速に認識・追従してAR情報を表示するだけではなく、「周辺のものや背景なども含めて現実空間を3Dで認識することで、空間全体を大きく利用した大規模なARが可能になった」(ソニーの福地正樹 システム技術研究所知的システム部リサーチャー)という。
物体認識では、物体の一部の特徴とその位置関係を使って物体を認識。計算量の少ない独自アルゴリズムと、確率によるマッチング技術により、照明の変化や、物体の姿勢の変化にも強く、かつ高速な認識が可能という。
さらに、高速追従によりAR情報を画面上に素早く表示。高速なカメラの動きに対しても自然にARを表示できるという「横に振っても前に振っても認識する“高速ぴったりAR”」(福地リサーチャー)が特徴だ。モバイルデバイスでも実用的に動作し、Androidスマートフォン「Xperia arc」によるAR認識の場合、毎秒30フレーム以上で追従できるという。
これに加え、3D空間認識技術で現実空間の3D構造を認識し、AR表示する仮想空間の物体と融合。仮想空間上にある巨大なキャラクターを、カメラを動かすことで全体を見渡したり、仮想物体が現実の空間に存在するかのような動きを演出することもできるという。
3D空間認識は、カメラが移動することによって観察される視差を利用し、空間の形状とカメラの位置・姿勢を推定する技術がベース。これに物体認識技術と組み合わせ、3次元の空間構造を認識し、記憶することができるという。
通常のARでは、マーカーを現実空間に配置し、認識したマーカーに合わせてAR情報を重ね合わせる方式が一般的だが、この場合はマーカーをあらかじめ配置しておく必要などがある。新技術はマーカーレス方式を採用したことで、「一般的なポスターや写真、絵画などを認識させることで、さまざまなアプリケーションに応用できる」(福井リサーチャー)。自由度の高いARを実現する技術として、今後実証実験を進めてエンターテインメント分野などへの応用を目指していく。
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