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温かく優しい物語のある部屋 井田千秋さん教えて! 絵師さん

» 2015年08月03日 11時00分 公開
[山崎春奈ITmedia]
photo 私のお城(クリックでpixivへ)

クリエイター:井田千秋

Webサイト:tot lot

pixiv:Chiakiida/Twitter:@dacchi_tt

 幼いころから絵を描くのが好きで、チラシの裏や大学ノートに少女漫画のまねをして描いていました。HPに絵を載せるようになったのは高校生くらいだと思います。

 絵を描くのが好きだったわりに、美大進学や専門的な勉強をするという選択肢はなぜかありませんでした。憧れはものすごくあったんですが、美大などに行くのはごく一部の特別な人だけだと思ってましたし、自分がそちら側の人だとも思えませんでした。当時はそういった努力をする情熱も足りなかったです。ただ趣味で落書きを描いては、誰かに見てもらって満足するという感じでした。1枚の絵をちゃんと描くようになったのは大学生になってからです。当時は水彩絵の具で描いてました。

 働き始めてからは会社と家の往復だけで疲れてしまい、気付けばまったく描かない生活に……。唯一の趣味だった絵をやめたことで無趣味となり、やりたいことを仕事にしていたわけでもなかったので、20代後半になると、今後の人生で何をしたいのか考えるようになりました。やりたいことは明確で、やはり絵が1番に挙がってくるんです。趣味で描く以上に、プロとして描き手になりたいという気持ちを少なからずずっと持っていたのに、何かと理由をつけて行動してこなかったことを後悔しました。やりたいことは明確なのだから、これ以上後悔しないように行動に移そうと思い、それから少しずつ再開して今に至ります。

 現在は主に展示で作品を発表しており、2月に初個展を行いました。最近になって少しずつ、お仕事でお声掛け頂くようになってきました。まだ発表できるようなことはないのですが、将来的には絵で生計を立てられるようになるのが目標です。

 作画はアナログで、水彩用紙にミリペン、シャープペンシル、鉛筆で描きます。ミリペンはサクラクレパスから出ている「PIGMA」の0.05ミリを愛用しています。水彩紙は細目が好きで、ヴィフアールかラングトンをよく使います。カラー作品を描くときは「Photoshop」「CLIP STUDIO PAINT」で着色します。

photo 手前の青いペンが「PIGMA」、白いペンは0.03ミリとさらに細い「NEOPICO」。奥の3本は使い古した物で、木目や塗りつぶしなどかすれた表現をしたい時に適しています。新品と区別するため、目印としてマスキングテープを巻いています。
photo 下絵と原画をトレース台の上に

 こだわりは、線を丁寧に引くこと。たくさん描きこんでもうるさくならないようにすること。線が雑になってきたら休憩します。

 お部屋の絵を描く時は生活感を出すことを意識しています。おしゃれなインテリアが置いてあったり、普通じゃありえない間取りだったとしても、人が暮らしている匂いのようなものがどこかに感じられるといいなと思いながら描いてます。あと、女の子の足をちょっと太めに描きます。肉付きのいい脚が好きです。

 幼少期に読んだ「赤毛のアンの手作り絵本」の挿絵画家、松浦英亜樹さんに大きな影響を受けました。実家で母が所有していた本なのですが、夢のようにすてきな挿絵で一目ぼれしました。今も私の宝物です。カントリーテイストの小物を描きがちなのは多分松浦さんの影響です。私の中で神様のような存在ですね。

 杉浦さやかさんのイラストエッセイはテーマが豊富なので、描くネタに詰まるとしょっちゅう見返してヒントをいただいてきました。お2人の作品や著書に出てくる生活雑貨、温かい暮らしの様子、かわいらしい子どもたちの描写などに影響を受けています。

 海外の作家では、ノーマン・ロックウェル、トーベ・ヤンソン、ディック・ブルーナ、エドマンド・デュラック。線とシルエットの美しい絵が好きです。ペン画にひかれたのはトーベ・ヤンソンさんの存在が大きいかもしれません。

 作品に反応をもらえた時はいつでもうれしいです。特に印象的だったのは、個展に来てくれた受験を控えた高校生から「将来の夢をかなえたら一緒にお仕事をしたい」というお手紙をもらったことです。恐縮しましたが、こんなにうれしいことがあるのか……とジーンとしました。とても光栄なことだと思いますし、実現できるように私も描き続けなくては! という目標が増えました。

 絵を通じて知り合う人が増えたのもうれしいです。会社と家を往復しているだけでは絶対知り合えなかった人ばかりなので、すてきな人と出会うたびに描いててよかったなあと思います。

教えて! 自慢の1枚

私のお城

 お部屋の絵を継続して描くきっかけとなった作品です。

 誰にも邪魔されないその人だけの空間。好きな物に囲まれたその人のためのお城、というコンセプトで描きました。これだけは一生手放さないと決めています。

お城 書斎

photo

 木目がきれいで、実際に自分が住むならここがいいなあと思ってます。ここを作業場にしたいです。読書家ではないのですが、壁一面の本棚って妙にワクワクするので時々描いてしまいます。

書店 ねおき

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 企画展「約300人のブックカバー展」に参加した時の作品です。この作品をきっかけに出会った方も多いので大事な1枚になりました。企画展ではクラフト紙に白と黒の2色刷りをしていただきました。

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