お持ちのノートPCは、背面にポートがあるでしょうか。もしもある場合はヒンジがキーボード部の上側に取り付けられていると思います。製品によって異なりますが、ちょうど平型ヒンジのように、ヒンジを180度開くと一枚の板のようになります。
このような機構の場合、背面にポートが配置できますが、製品の薄型化では不利になります。逆に薄型化を目指す場合は「ドロップヒンジ」を採用します。この場合は、180度開かず、後ろ側にポートが配置できませんが、製品の薄型化を図るには重要です。この場合、後ろのスペースはバッテリーを搭載したり、CPUファンの排気口を目立たなく配置したりするといった工夫をすることもあります。
ヒンジの機構によって、ある程度製品のパッケージが決まってしまいます。一見地味なパーツですが、これがノートPCの要(かなめ)であると言えます。
製品を開発する側としても、ノートPCで重要なヒンジ部分に工夫を凝らして、何とかよりよい設計ができないかと考えます。思考を重ねた結果、リング状のヒンジが本体内部に潜り込むような駆動部を採用した製品があります。このヒンジによって背面への排気口の設置とポート配置を両立しながら、シャーシ側面の大幅な薄型化に成功しました。
さらに、リングの裏側に本体とディスプレイを接続するケーブルを這わせてカバーで隠すことで、まるでディスプレイが浮いているかのような佇まいも実現しています。
別の事例では、平型タイプのヒンジを使いながらも背面にポートを配置しないことで薄型化を実現した製品もあります。薄型化に有利なドロップヒンジの「180度まで開かない」という問題点を解決することに成功しています。
メーカーに携わる私自身、市場に「素晴らしい」こだわりを持った製品が既に存在していなければ、追従目標とすることもできませんでした。最初に取り組んだエンジニアは、恐らく非常に過酷な試行錯誤の上に実現されたのだと思います。そう考えますと、感謝と尊敬の念がやみません。弊社としても継続的に努力し、指一本でスムーズにディスプレイが開くという製品体験を全てのPCで実現していきたいと考えています
いかがでしたでしょうか。この記事をご覧になった方がノートPCをご購入されるときに“パカパカ開け閉めする”シーンが目に浮かびます。すてきな製品との出会いができますことを心よりお祈りしています。
著者:白木智幸(しろき・ともゆき)
日本HPPC&タブレットエバンジェリスト。パーソナルシステムズ事業本部に所属し、法人向けタブレット製品のプロダクトマネージャ(製品企画)とビジネスプラン(販売計画)を担当。PCやタブレットの楽しさや素晴らしさを広くお伝えすることを通じ、グローバル化の進む現代でよりよい働き方を実現するためのエッセンスを提供することがテーマ。
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